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哀しみの聖母
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『王の学徒』はおしなべて特権意識が強く、次の年もその地位を維持することに固執し勉学に勤しむ面白味のない奴ばかりだ。さしてガリ勉するわけでもなく、気に入らない教授には堂々と論戦を吹っ掛けては言い負かし、恨みを買いつつも一目も二目も置かれているジェイムズを、あからさまに敵視する者もいた。構内ということで『館』に対する学校側の目も厳しく、『王の学徒』であることの栄誉に全く関心がないジェイムズにとって、『館』での生活は囚人のように味気ないものだった。
唯一の救いは、隣室の悪友がジェイムズと同じ、ウィズリーの生徒としては規格外の破天荒な思考の持ち主だったことだ。二人して周囲の度肝を抜くような悪戯を仕掛けては日頃の憂さを晴らす。そんなささやかな娯楽すらなかったら、たとえ父侯爵に勘当されてもとっとと自主退学していたことだろう。
『館』での日々を誇りに思うと同時に抑圧を感じていた同寮生にも、ジェイムズ達の娯楽は好評だった。二人の悪戯には罪がなく、意地の悪い上級生や教授の傲慢、伝統をかさにきた虚礼を笑い飛ばす類のものだったため、彼らの活躍を心待ちにする生徒も少なくなかった。自分もその一人だったのだと、卒業の日にこっそり告げて微笑んだのが『哀しみの聖母』、栄光ある『館』の監督生を務めたレジナルド・マーシャルだったのだ。
唯一の救いは、隣室の悪友がジェイムズと同じ、ウィズリーの生徒としては規格外の破天荒な思考の持ち主だったことだ。二人して周囲の度肝を抜くような悪戯を仕掛けては日頃の憂さを晴らす。そんなささやかな娯楽すらなかったら、たとえ父侯爵に勘当されてもとっとと自主退学していたことだろう。
『館』での日々を誇りに思うと同時に抑圧を感じていた同寮生にも、ジェイムズ達の娯楽は好評だった。二人の悪戯には罪がなく、意地の悪い上級生や教授の傲慢、伝統をかさにきた虚礼を笑い飛ばす類のものだったため、彼らの活躍を心待ちにする生徒も少なくなかった。自分もその一人だったのだと、卒業の日にこっそり告げて微笑んだのが『哀しみの聖母』、栄光ある『館』の監督生を務めたレジナルド・マーシャルだったのだ。
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