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ザ・ジャロルズ
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ただし、中には邪な企みを持つ者もいる。
純粋な好意を寄せる者には心温まるレジナルドの微笑みも、邪な欲を持つ者には取り付く島のない鉄壁の冷微笑に映る。その品のある迫力に気圧され、本人には何も言えず、上司であるアンソニーにそれとなく橋渡しを頼む者は、これまでに何人もいた――男ばかりだったが。
レジナルドは何も言わないが、おそらく本人を直接口説いた剛の者もいたことだろう。
(そちらはすべて御婦人方ばかりだといいのだが)
そう思いつつ、レジナルドがフロントマネージャーに就任するや否や、主に裏方の仕事を担当するよう手を回したのは、彼を息子のようにも思っているアンソニーの、年頃の娘を気遣うような親心がさせたことだった。
心得たレジナルドの崇拝者達は、今までのように頻繁に彼をフロントで見掛けるのが難しくなったことを知り残念がったが、気持ちよく昇進祝いを贈り、また彼らの高貴な客人や取引相手に、ザ・ジャロルズのフロントマネージャーを最上級の賛辞をもって紹介し、花を持たせてくれた。
そしてレジナルドも彼らの訪れを知れば、どんなに忙しくても仕事の手を止め、鏡の前で身嗜みを確認し、背筋を伸ばして挨拶に出向く。顧客を大切に思う彼の心遣いが、ザ・ジャロルズの評判の一助となっていることは疑いようもなく、教えられるでもなく接客の一番の基本で最も大切なことを会得しているレジナルドを、上司としてアンソニーは頼もしく、そして誇らしく思っていた。
純粋な好意を寄せる者には心温まるレジナルドの微笑みも、邪な欲を持つ者には取り付く島のない鉄壁の冷微笑に映る。その品のある迫力に気圧され、本人には何も言えず、上司であるアンソニーにそれとなく橋渡しを頼む者は、これまでに何人もいた――男ばかりだったが。
レジナルドは何も言わないが、おそらく本人を直接口説いた剛の者もいたことだろう。
(そちらはすべて御婦人方ばかりだといいのだが)
そう思いつつ、レジナルドがフロントマネージャーに就任するや否や、主に裏方の仕事を担当するよう手を回したのは、彼を息子のようにも思っているアンソニーの、年頃の娘を気遣うような親心がさせたことだった。
心得たレジナルドの崇拝者達は、今までのように頻繁に彼をフロントで見掛けるのが難しくなったことを知り残念がったが、気持ちよく昇進祝いを贈り、また彼らの高貴な客人や取引相手に、ザ・ジャロルズのフロントマネージャーを最上級の賛辞をもって紹介し、花を持たせてくれた。
そしてレジナルドも彼らの訪れを知れば、どんなに忙しくても仕事の手を止め、鏡の前で身嗜みを確認し、背筋を伸ばして挨拶に出向く。顧客を大切に思う彼の心遣いが、ザ・ジャロルズの評判の一助となっていることは疑いようもなく、教えられるでもなく接客の一番の基本で最も大切なことを会得しているレジナルドを、上司としてアンソニーは頼もしく、そして誇らしく思っていた。
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