后狩り

音羽夏生

文字の大きさ
上 下
73 / 87
蜜月

6

しおりを挟む
 不意の乱れ打ちも怖いほどの激しさもない。自身の欲望も、皇帝の硬い腹に擦られて喜悦の涙を湯に溶かしている。甘痒いような心地好さと、それに浸る自分を見られる羞恥が、シェルを昂めていく。

「あんっ、は、あぁん、……あっ、そんな、エーヴ……」

 従順に自らの快楽を追い始めたシェルの胸に、皇帝が顔を寄せた。熱い口腔に硬く凝った乳首を含まれ、舌先で転がされる。
 じぃん、と胸から広がる痺れのような快さが、尻の中の秘められたしこりから生じるそれと繋がり、交わって増幅していく。苛められているのは乳首としこりだけなのに、全身に陶酔が広がるのを止められない。
 絶えず腰をゆらめかせることで、湯がその動きを受けとめて、小さな波を作り出す。二人の体の間でそれはぶつかり、反復してぱしゃぱしゃと肌を打つ感触すら愛撫のようだ。

(駄目、こんな、……気持ちいい、なんて……)

 気を抜くと、すぐに達してしまいそうだ。
 きゅっと唇を引き結んだシェルに、皇帝が阻むように胸や首筋を強く吸い上げ、わずかな抵抗をも挫く。なすすべもなく、恥じらいながら喘ぎ続けるシェルを見つめる眼差しには、雄の歓びが滲んでいた。

「……あの、これで、よいのでしょうか……?」

 息を切らせながら訊ねるシェルに、皇帝も少し呼吸を乱した様子で頷く。

「とても上手にできている。……だが、少々浅いな。もっと深く受け入れてくれないか」
「……深くされると、動けません……」
「もう夫の言葉を忘れたのか。これは一人ですることではない、二人で分かち合うものだ。──甘えてみろ、伴侶に」
「はい……。エーヴ、ゆっくり、奥まで、入れて、ぁあああぁっ!」

 願いを言い終わる前に、強く乳首を齧られた。衝撃に腰が萎え、シェルの体はあっけなく、屹立した男根を飲み込んでいく。
 支えてくれる手が、一気に奥まで届かないようにとどめてくれたおかげで、吐精は何とか堪えられた。しかしもう力が入らず、中は男の欲望でみっちりと満たされてしまう。

「ア、アッ、あん……は、あぅ……」
「愛しい妻のおねだりには、しっかり応えねばな」

 熱い囁きは、甘く執拗な交わりの宣言だった。
 激しく突き上げる代わりに、押し当てた先端で奥を捏ね回され、シェルはだらしない悲鳴を上げた。そこはどうしても弱く、駄目になってしまうのだ。
 耐えきれず咄嗟に腰を跳ね上げるが、じきに虚ろな中が切なくなって、導く手に唆されるまま、ずるずると腰を落としてしまう。ぴっちりと男根に張り付いた粘膜が引きずられる感覚に背筋を引きつらせ、再び弱いところに突き当てたまま腰を回され、がくんっと顎が上がる。

「アアッ、……ア、あんっ、エーヴぅ……お願い、お願いが、アァンッ」

 立て続けに迸る嬌声で閉じることもできない唇から、唾液が溢れて喉を伝う。それを舌先で辿られ、その感触にまた身を震わせて悶えるシェルの健気な訴えに、皇帝が目を細めた。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

田舎者の愛し方

ふぇい
BL
「旦那様ァー!オラさ旦那様の傍にいられて嬉しいンだなァ」「僕もだ。今更なんなんだ?」そう言って端正な顔で微笑を浮かべるオルガートの顔と、屈託のない笑顔をいつまでも見せるノルドが今日も公爵家本邸を明るくさせる。これがオルガート公爵の邸、ホーノルド邸のいつもの姿のはずだった。ある少年がこの世界に現るまで。その少年は美しかった。この世界の者ではないとわかる彫りの薄い顔、所謂儚き美人。その少年はオルガートに恋慕を抱いた。その少年の健気な姿に心打たれ、いつも自分のような田舎貴族と懇意にしてくれるオルガートに恩を返したいと、きっと将来素晴らしい夫婦(男同士)になるだろうとノルドはどうしてか痛む胸を抑えながら、付き合おうと躍起になる少年の背中を押すのだ。 初作品となる拙作をどうぞよろしくお願いします!エセ方言なので所々おかしかったり設定ゆるゆるなところがありますが暖かい目でお願いします!!※女性はいますが同性婚が普通な世界です。かなりおそい投稿ですが、そんな長くはならないと思います。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

愛する人

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
「ああ、もう限界だ......なんでこんなことに!!」 応接室の隙間から、頭を抱える夫、ルドルフの姿が見えた。リオンの帰りが遅いことを知っていたから気が緩み、屋敷で愚痴を溢してしまったのだろう。 三年前、ルドルフの家からの申し出により、リオンは彼と政略的な婚姻関係を結んだ。けれどルドルフには愛する男性がいたのだ。 『限界』という言葉に悩んだリオンはやがてひとつの決断をする。

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

僕はお別れしたつもりでした

まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!! 親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。 大晦日あたりに出そうと思ったお話です。

一日だけの魔法

うりぼう
BL
一日だけの魔法をかけた。 彼が自分を好きになってくれる魔法。 禁忌とされている、たった一日しか持たない魔法。 彼は魔法にかかり、自分に夢中になってくれた。 俺の名を呼び、俺に微笑みかけ、俺だけを好きだと言ってくれる。 嬉しいはずなのに、これを望んでいたはずなのに…… ※いきなり始まりいきなり終わる ※エセファンタジー ※エセ魔法 ※二重人格もどき ※細かいツッコミはなしで

処理中です...