后狩り

音羽夏生

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蜜月

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 不意の乱れ打ちも怖いほどの激しさもない。自身の欲望も、皇帝の硬い腹に擦られて喜悦の涙を湯に溶かしている。甘痒いような心地好さと、それに浸る自分を見られる羞恥が、シェルを昂めていく。

「あんっ、は、あぁん、……あっ、そんな、エーヴ……」

 従順に自らの快楽を追い始めたシェルの胸に、皇帝が顔を寄せた。熱い口腔に硬く凝った乳首を含まれ、舌先で転がされる。
 じぃん、と胸から広がる痺れのような快さが、尻の中の秘められたしこりから生じるそれと繋がり、交わって増幅していく。苛められているのは乳首としこりだけなのに、全身に陶酔が広がるのを止められない。
 絶えず腰をゆらめかせることで、湯がその動きを受けとめて、小さな波を作り出す。二人の体の間でそれはぶつかり、反復してぱしゃぱしゃと肌を打つ感触すら愛撫のようだ。

(駄目、こんな、……気持ちいい、なんて……)

 気を抜くと、すぐに達してしまいそうだ。
 きゅっと唇を引き結んだシェルに、皇帝が阻むように胸や首筋を強く吸い上げ、わずかな抵抗をも挫く。なすすべもなく、恥じらいながら喘ぎ続けるシェルを見つめる眼差しには、雄の歓びが滲んでいた。

「……あの、これで、よいのでしょうか……?」

 息を切らせながら訊ねるシェルに、皇帝も少し呼吸を乱した様子で頷く。

「とても上手にできている。……だが、少々浅いな。もっと深く受け入れてくれないか」
「……深くされると、動けません……」
「もう夫の言葉を忘れたのか。これは一人ですることではない、二人で分かち合うものだ。──甘えてみろ、伴侶に」
「はい……。エーヴ、ゆっくり、奥まで、入れて、ぁあああぁっ!」

 願いを言い終わる前に、強く乳首を齧られた。衝撃に腰が萎え、シェルの体はあっけなく、屹立した男根を飲み込んでいく。
 支えてくれる手が、一気に奥まで届かないようにとどめてくれたおかげで、吐精は何とか堪えられた。しかしもう力が入らず、中は男の欲望でみっちりと満たされてしまう。

「ア、アッ、あん……は、あぅ……」
「愛しい妻のおねだりには、しっかり応えねばな」

 熱い囁きは、甘く執拗な交わりの宣言だった。
 激しく突き上げる代わりに、押し当てた先端で奥を捏ね回され、シェルはだらしない悲鳴を上げた。そこはどうしても弱く、駄目になってしまうのだ。
 耐えきれず咄嗟に腰を跳ね上げるが、じきに虚ろな中が切なくなって、導く手に唆されるまま、ずるずると腰を落としてしまう。ぴっちりと男根に張り付いた粘膜が引きずられる感覚に背筋を引きつらせ、再び弱いところに突き当てたまま腰を回され、がくんっと顎が上がる。

「アアッ、……ア、あんっ、エーヴぅ……お願い、お願いが、アァンッ」

 立て続けに迸る嬌声で閉じることもできない唇から、唾液が溢れて喉を伝う。それを舌先で辿られ、その感触にまた身を震わせて悶えるシェルの健気な訴えに、皇帝が目を細めた。
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