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蠢動
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まずはシェルの説得に努めなければならないのだが、后狩り以降、連絡が取れなくなっていた。ユングリング家に使いを送っても、慇懃な家令の「不在にしております」「行き先はお答えできかねます」という、判を押したような答えが返ってくるばかりである。
シェルがミレニオから戻ってすぐ、体調がすぐれず書面での挨拶になることへの謝罪と、ミレニオで大評判となっている舞台の戯曲と総譜が大使公邸に届けられた。留学中のシェルが観劇し感想を書き送ったところ、クリスティーナが大層興味を持った作品とのことで、ミレニオ大使の主催で上演してもらえないか、という依頼だった。
シェルが自身でその手配をしない──できないのは、ユングリングではミレニオに関するすべてを、父親が忌避しているためである。
后狩りが落ち着いたら伺いたい、この計画は秘密裏に進めクリスティーナを驚かせたい、と結ばれていたため、連絡があるまで待つつもりでいたのだが、后狩りからもうすでに十日が過ぎている。
取る物も取り敢えずミレニオを発ったシェルの身の回りの整理を済ませ、後を追って帝国に駆けつけたルカも、諸々の報告事項を抱えていたが、当然シェルに会えていない。
「まったく……連絡一つ寄越さずどこに行ったんだ、未来の我が君は」
苛立ちの混じった息子の呟きに、リベルトも深い嘆息で同意した。
シェルがミレニオから戻ってすぐ、体調がすぐれず書面での挨拶になることへの謝罪と、ミレニオで大評判となっている舞台の戯曲と総譜が大使公邸に届けられた。留学中のシェルが観劇し感想を書き送ったところ、クリスティーナが大層興味を持った作品とのことで、ミレニオ大使の主催で上演してもらえないか、という依頼だった。
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后狩りが落ち着いたら伺いたい、この計画は秘密裏に進めクリスティーナを驚かせたい、と結ばれていたため、連絡があるまで待つつもりでいたのだが、后狩りからもうすでに十日が過ぎている。
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