42 / 78
後朝
9
しおりを挟む
昨夜拓いたのはほんの浅瀬で、エーヴェルトはまだ半分ほどしかシェルの中を知らない。今もまた、新たな痛みを与えないように、深みは目指していない。
それなのにうわ言のように、深い、深い、と弱々しく繰り返され、否応なく一物がいきり立つ。
小悪魔などと可愛気のあるものではない。これは大人しく清らかな顔をした、魔性だ。
男を惑わす小癪な手管に流されそうになるのを、エーヴェルトは奥歯を噛み締めて堪える。
厄介なことに、シェルの言葉に他意はない。破瓜を迎えたばかりの体は、いまだ青い。欲望のままに抱いてしまっては、愛しい后を傷つけることになる。
大きなものを受け入れさせられているシェルはもとより、しばらくはエーヴェルトも、愛の交歓とともに忍耐を強いられそうだった。
「体が馴染むまで、こうして朝晩、ゆっくり愛してやる」
「お、お許しを……う、あぅ、……あっ、あァッ」
「お前のためだ、早く慣れろ」
「陛下……へいかぁ、あンッ……お情けを、私に、どうか……!」
「言うことを聞かぬ口はこれか……っ」
聞き分けのない口を塞がれ、呻くように泣くシェルの中は熱く蕩け、未熟ながらも上等な蜜壺となって男を包み込む。
激しく突き抉り、奥の奥まで暴きたくなるのを堪えながら、エーヴェルトはシェルの胸に手をやり、つんと立った突起をつまんだ。途端にシェルの中がぎゅっと締まる。
七夜の馴らしと昨夜の交情で、シェルがかなり過敏な質であると知った。そして、人の手に触れられると怯えるように肌を粟立たせることも。
その理由に心当たりがあるため、哀れにも思ったが、怖がらないように夫の手を覚えさせれば、シェルの官能をより深めることができる。
つまんだ小さな乳首を指先でくりくりと転がし、ゆっくりと浅い抽送を繰り返す。時折、男の弱みを先端で刮げるように押してやると、くぅん、と甘く鼻を鳴らした。
弱いところと同時に、弱みとなりそうなところを攻め、快感で繋ぎ、連鎖するように躾ける。純真な魔性を堕とすには、艶事に慣れた男の手練手管を駆使するしかない。
口の中で弱いのは、口蓋と舌下を舌先でくすぐられること。花筒は、浅瀬のしこり。淡く色づいた乳首をじわじわと攻め、すでに見つけた泣きどころと結びつけていく。
慣れない体にはたまらない刺激らしく、口づけを振りほどこうとしては顎を掴まれ、新たに唇を重ねられてシェルが小さく呻く。くちゅ、ぬちゅ、と上と下でいやらしい水音が立ち、それに合わせて乳首を転がされ、眦から一筋の涙が伝った。
慰めるように吸ってやると、敷布を掴んでいた手を離し、胸元に縋りついてくる。
「へい、か……恐ろしゅう、ございます……どうか、もう……!」
「後朝だからと大目に見てきたが……そろそろ名を呼ばねば、酷くするぞ」
魔性の仕草に惑わされまいと、敢えて低い声で咎める。途端にシェルの目が、溢れた涙で潤んだ。
黒い瞳の煌めきは、寒夜に瞬く北天の星々のようだ。呑まれそうになり、エーヴェルトは甘やかそうとする言葉を、すんでのところで舌の上にとどめた。
それなのにうわ言のように、深い、深い、と弱々しく繰り返され、否応なく一物がいきり立つ。
小悪魔などと可愛気のあるものではない。これは大人しく清らかな顔をした、魔性だ。
男を惑わす小癪な手管に流されそうになるのを、エーヴェルトは奥歯を噛み締めて堪える。
厄介なことに、シェルの言葉に他意はない。破瓜を迎えたばかりの体は、いまだ青い。欲望のままに抱いてしまっては、愛しい后を傷つけることになる。
大きなものを受け入れさせられているシェルはもとより、しばらくはエーヴェルトも、愛の交歓とともに忍耐を強いられそうだった。
「体が馴染むまで、こうして朝晩、ゆっくり愛してやる」
「お、お許しを……う、あぅ、……あっ、あァッ」
「お前のためだ、早く慣れろ」
「陛下……へいかぁ、あンッ……お情けを、私に、どうか……!」
「言うことを聞かぬ口はこれか……っ」
聞き分けのない口を塞がれ、呻くように泣くシェルの中は熱く蕩け、未熟ながらも上等な蜜壺となって男を包み込む。
激しく突き抉り、奥の奥まで暴きたくなるのを堪えながら、エーヴェルトはシェルの胸に手をやり、つんと立った突起をつまんだ。途端にシェルの中がぎゅっと締まる。
七夜の馴らしと昨夜の交情で、シェルがかなり過敏な質であると知った。そして、人の手に触れられると怯えるように肌を粟立たせることも。
その理由に心当たりがあるため、哀れにも思ったが、怖がらないように夫の手を覚えさせれば、シェルの官能をより深めることができる。
つまんだ小さな乳首を指先でくりくりと転がし、ゆっくりと浅い抽送を繰り返す。時折、男の弱みを先端で刮げるように押してやると、くぅん、と甘く鼻を鳴らした。
弱いところと同時に、弱みとなりそうなところを攻め、快感で繋ぎ、連鎖するように躾ける。純真な魔性を堕とすには、艶事に慣れた男の手練手管を駆使するしかない。
口の中で弱いのは、口蓋と舌下を舌先でくすぐられること。花筒は、浅瀬のしこり。淡く色づいた乳首をじわじわと攻め、すでに見つけた泣きどころと結びつけていく。
慣れない体にはたまらない刺激らしく、口づけを振りほどこうとしては顎を掴まれ、新たに唇を重ねられてシェルが小さく呻く。くちゅ、ぬちゅ、と上と下でいやらしい水音が立ち、それに合わせて乳首を転がされ、眦から一筋の涙が伝った。
慰めるように吸ってやると、敷布を掴んでいた手を離し、胸元に縋りついてくる。
「へい、か……恐ろしゅう、ございます……どうか、もう……!」
「後朝だからと大目に見てきたが……そろそろ名を呼ばねば、酷くするぞ」
魔性の仕草に惑わされまいと、敢えて低い声で咎める。途端にシェルの目が、溢れた涙で潤んだ。
黒い瞳の煌めきは、寒夜に瞬く北天の星々のようだ。呑まれそうになり、エーヴェルトは甘やかそうとする言葉を、すんでのところで舌の上にとどめた。
183
お気に入りに追加
1,076
あなたにおすすめの小説
その部屋に残るのは、甘い香りだけ。
ロウバイ
BL
愛を思い出した攻めと愛を諦めた受けです。
同じ大学に通う、ひょんなことから言葉を交わすようになったハジメとシュウ。
仲はどんどん深まり、シュウからの告白を皮切りに同棲するほどにまで関係は進展するが、男女の恋愛とは違い明確な「ゴール」のない二人の関係は、失速していく。
一人家で二人の関係を見つめ悩み続けるシュウとは対照的に、ハジメは毎晩夜の街に出かけ二人の関係から目を背けてしまう…。
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
初夜の翌朝失踪する受けの話
春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…?
タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。
歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け
愛する人
斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
「ああ、もう限界だ......なんでこんなことに!!」
応接室の隙間から、頭を抱える夫、ルドルフの姿が見えた。リオンの帰りが遅いことを知っていたから気が緩み、屋敷で愚痴を溢してしまったのだろう。
三年前、ルドルフの家からの申し出により、リオンは彼と政略的な婚姻関係を結んだ。けれどルドルフには愛する男性がいたのだ。
『限界』という言葉に悩んだリオンはやがてひとつの決断をする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる