后狩り

音羽夏生

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初夜

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「ん……んぅ! ……ふ、ぅ……ッ」

(何で……こんなところが……っ)

 硬い指が、柔らかな中を何度も往き来する。そのたびに、中は指の形に拓かれ、追い縋るように閉じる。決して急がず、侵入したものの形をじっくりと思い知らせ、覚え込ませるような指の動きに、シェルの体は従順に馴らされていく。
 それでも、体内を侵す指への強烈な拒絶で、鳥肌が立つ。歯を噛み締めていないと、弱音を吐いてしまいそうだ。――そのはずなのに、堪えているのは苦痛の声だけではなかった。

「ん、んくっ……、ふっ、う……!」
「堪えるな。シェルの囀る声が聴きたい」

 掲げた腰が落ちないように支える手が、明確な意志を持って腰から尻へのなだらかな丸みを撫でる。かつて口づけの作法を教えながら、腕の中に捕らえた愛猫の官能を高めるべく、時に撫で、時に強く掴んで主の愛撫を覚えさせた場所だ。それを覚えていた賢い黒猫は、「アァン」と甘く鳴いて身をくねらせ、主を悦ばせる。
 細やかな愛技にそこがわずかに緩んだことを確認した指は、ゆるゆると出ていった。かと思うと、すぐに水晶の張り形がつるりと挿入される。

「ひいぃっ!」

 その冷たさと硬さに、シェルの喉から鋭い悲鳴が迸った。
 水晶はたっぷりと香油をまとい、含まされても痛みはなかったが、体温の通わない物に侵されている、冷酷な異物感がおぞましい。衝撃と嫌悪にぶるぶる震える尻を、宥めるように温かい手が撫で擦る。
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