后狩り

音羽夏生

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侍童

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(酷い夢だ……)

 下着を濡らし、呆然とするしかなかった少年の日を夢に見た今朝も、あの朝と同様に最悪な気分だ。何故か鳩尾の辺りが疼くような気もする。
 小さく唸りながら、シェルは重い瞼を開け――しばし沈思した。
 見知らぬ天井。首を傾ければ、見知らぬ壁と調度品。

(ここは、どこだ?)

 うず高く積まれた書籍に埋もれた、ミレニオの自室ではない。
 ――そうだ、知らせが来て急ぎ帝都に戻ったのだ。クリスティーナのために――后狩りの護衛をするために。

(后狩りはどうなった?!)

 跳ね起きた勢いそのままに、シェルは転げるように寝台から飛び下りた。上質な薄絹の寝間着を着せられており、体に異状はないが、目に入った窓の外の景色に愕然とする。
 かつて皇帝に随従し、日常的に目にしていた風景。艶めかしい赤瓦の葺かれた屋根が、海原のように連なる。帝国広しといえども、この造りの建物が並ぶ場所は一つしかない。
 ここは、――後宮だ。
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