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初夜
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皇帝直々の「馴らし」が七夜続いた後、床入りの日が来た。
宦官による執拗な浄めに耐え、華やかな模様が織り込まれた練絹の夜着を着せられたシェルは、女官に言われた通りに寝台に上がり、正座する。俯いた頭に房の付いた紗の覆いを掛けられ、自身の姿の滑稽さに乾いた笑みが洩れた。
まさか男の身で、新床を待つ花嫁の衣装――純潔を象徴する白の夜着をまとう日が来ようとは。
(男の身で、純潔も何もなかろうに。それに、あんなことをされて、僕はもう……)
あの淫靡な「馴らし」を経た身を、純潔とは呼べないだろう。
奉仕したことはあっても、自身は女も男も知らず無垢だったシェルにとって、この一週間施された「馴らし」は驚愕であり、かつて経験したことのない羞恥であり、苦痛でもあった。
痛みは与えないと宣言された通り、痛覚を刺す痛みを与えられることはなかった。しかし、香油に濡れた指で尻の穴を撫で回される感覚は異様で、じっとしてはいられない。
その上、刺激に耐えられず穴がはしたなくひくつき始めると、皇帝はその指を不浄の場所に挿し入れたのだ。慎重に、反応を見ながら少しずつだったとはいえ、最初の夜、堪えきれずシェルは声を洩らしてしまった。
「あ、アッ、……そんな、ところに……、……んぅっ」
ぬるん、と根元まで指を飲み込み、びくっと背中を反らせたシェルは、うろたえながらも必死に懇願した。
「どうか、どうかおやめくださいませっ。そのような場所に……! ご指示をいただければ、私がいたしますから」
「それはまたの機会にな」
「あぅんっ!」
長い指をすべて収めたところで、指先がくいくいと中を探る動きをする。そうしながら、指の出し入れが始まる。新たな刺激に驚いた体が、その動きを阻むように反応し、勝手に指を食い締める。
そのせいで、まざまざと侵入者の形も硬さも思い知る羽目になり、――その状態で、指先があるところを掠めた時、それは起きた。
「あぁ! ……ァア、んぅ……、はぁ、あ……」
不快な異物感に耐えていたシェルの体に、甘い戦慄が走り抜けた。布団についていた両腕から力が抜け、上半身が崩れ落ちる。
腰だけを高く掲げた卑猥な姿で秘処を捧げていることに、シェルは気づかない。我が身に何が起きたのかもわからず、混乱するばかりのシェルに、愉悦に満ちた男の声が追い打ちをかける。
「お前のここは随分と素直だな、もう俺に懐いている。忠義一辺倒で、愛嬌をまるで振りまかぬ上の口にも見習ってほしいものだ」
楽しそうに揶揄され、これ以上無様な姿を見せまいと身構えたが、無駄だった。
シェルのそこは――探り当てられたしこりだけではなく、ただの排泄器官であるはずのそこは、ひどく脆く感じやすく、自慰では得られない快感を生み出す感覚器官でもあったのだ。
「ん……んぅ! ……ふ、ぅ……ッ」
(何で……こんなところが……っ)
硬い指が、柔らかな中を何度も往き来する。そのたびに、中は指の形に拓かれ、追い縋るように閉じる。決して急がず、侵入したものの形をじっくりと思い知らせ、覚え込ませるような指の動きに、シェルの体は従順に馴らされていく。
それでも、体内を侵す指への強烈な拒絶で、鳥肌が立つ。歯を噛み締めていないと、弱音を吐いてしまいそうだ。――そのはずなのに、堪えているのは苦痛の声だけではなかった。
宦官による執拗な浄めに耐え、華やかな模様が織り込まれた練絹の夜着を着せられたシェルは、女官に言われた通りに寝台に上がり、正座する。俯いた頭に房の付いた紗の覆いを掛けられ、自身の姿の滑稽さに乾いた笑みが洩れた。
まさか男の身で、新床を待つ花嫁の衣装――純潔を象徴する白の夜着をまとう日が来ようとは。
(男の身で、純潔も何もなかろうに。それに、あんなことをされて、僕はもう……)
あの淫靡な「馴らし」を経た身を、純潔とは呼べないだろう。
奉仕したことはあっても、自身は女も男も知らず無垢だったシェルにとって、この一週間施された「馴らし」は驚愕であり、かつて経験したことのない羞恥であり、苦痛でもあった。
痛みは与えないと宣言された通り、痛覚を刺す痛みを与えられることはなかった。しかし、香油に濡れた指で尻の穴を撫で回される感覚は異様で、じっとしてはいられない。
その上、刺激に耐えられず穴がはしたなくひくつき始めると、皇帝はその指を不浄の場所に挿し入れたのだ。慎重に、反応を見ながら少しずつだったとはいえ、最初の夜、堪えきれずシェルは声を洩らしてしまった。
「あ、アッ、……そんな、ところに……、……んぅっ」
ぬるん、と根元まで指を飲み込み、びくっと背中を反らせたシェルは、うろたえながらも必死に懇願した。
「どうか、どうかおやめくださいませっ。そのような場所に……! ご指示をいただければ、私がいたしますから」
「それはまたの機会にな」
「あぅんっ!」
長い指をすべて収めたところで、指先がくいくいと中を探る動きをする。そうしながら、指の出し入れが始まる。新たな刺激に驚いた体が、その動きを阻むように反応し、勝手に指を食い締める。
そのせいで、まざまざと侵入者の形も硬さも思い知る羽目になり、――その状態で、指先があるところを掠めた時、それは起きた。
「あぁ! ……ァア、んぅ……、はぁ、あ……」
不快な異物感に耐えていたシェルの体に、甘い戦慄が走り抜けた。布団についていた両腕から力が抜け、上半身が崩れ落ちる。
腰だけを高く掲げた卑猥な姿で秘処を捧げていることに、シェルは気づかない。我が身に何が起きたのかもわからず、混乱するばかりのシェルに、愉悦に満ちた男の声が追い打ちをかける。
「お前のここは随分と素直だな、もう俺に懐いている。忠義一辺倒で、愛嬌をまるで振りまかぬ上の口にも見習ってほしいものだ」
楽しそうに揶揄され、これ以上無様な姿を見せまいと身構えたが、無駄だった。
シェルのそこは――探り当てられたしこりだけではなく、ただの排泄器官であるはずのそこは、ひどく脆く感じやすく、自慰では得られない快感を生み出す感覚器官でもあったのだ。
「ん……んぅ! ……ふ、ぅ……ッ」
(何で……こんなところが……っ)
硬い指が、柔らかな中を何度も往き来する。そのたびに、中は指の形に拓かれ、追い縋るように閉じる。決して急がず、侵入したものの形をじっくりと思い知らせ、覚え込ませるような指の動きに、シェルの体は従順に馴らされていく。
それでも、体内を侵す指への強烈な拒絶で、鳥肌が立つ。歯を噛み締めていないと、弱音を吐いてしまいそうだ。――そのはずなのに、堪えているのは苦痛の声だけではなかった。
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