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再会
(9)※
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三本に増えた指に、届く限りの奥まで肉筒を嬲られ、梟は敷布の上で身をくねらせながら煩悶していた。
内襞のあちこちに眠る快楽の種を一つ残らず刺激してくる蜻蛉の手技は執拗で、全身が色づいて汗ばみ、枕を掴み耐える手も湿っている。感じれば感じるほど欲望に組紐が食い込むことになり、脆い部分だけにその痛みは耐え難い。
あまりのつらさに呻いていると、蜻蛉が勃ち上がった両の乳首を手加減なく捻り上げてくる。皮膚の薄いところを弄られ続け、指が掠めるだけでも体が跳ねるほど敏感に熟してしまっているのに、手荒に扱われてはもう心地好さだけでは済まされない。身の内を走る鋭い痛みに欲望が萎え、また肉筒に指を埋められて、中を拡げられる。それを何度も繰り返される。
気を失えば楽になれるのに、与えられる痛みにそれも叶わず、梟は涙で曇った視界の中、怨じるように酷い男を見つめた。その眼差しに気づき、蜻蛉が満足そうに喉を鳴らす。
「そなたのこれは薄い色合いで果実のように瑞々しいゆえ、赤い組紐に縛められるのが似合うな。このように震えて……苦しいか」
透明な蜜を零し続ける蜜口を指の腹で擦られ、疼きと痛みが生じる。欲望を刺激されればそれだけ、雄芯は頭を擡げようとし、それを阻む組紐の張りがきつくなる。強まる痛みに、また涙が零れた。愉しそうに見下ろしてくる蜻蛉に気がつき、震える声で詰る。
「変態っ、恥知らず! ――ひぃっ!」
心からの非難は、組紐を引っ張られる痛みに掻き消された。蜻蛉の指が、張り詰めた組紐を弓のようにキリキリと引き絞り、蜜袋を押し上げ欲望の先端を締め上げる。
「いたっ、……蜻蛉、痛い……!」
「そなたが戒律を破って自涜などせぬよう封じてやったのだ。痛いのが嫌なら、高潔な神聖騎士らしく欲望を鎮めてみよ。――そのように可愛い顔をしても、許してやらぬぞ」
埋め込んでいた指を引き抜くと、蜻蛉はすっかりほぐれた蕾に、天を衝くように聳り立つ男根を宛がった。その熱さに驚き引けた細腰を掴むと、傘の張り出した先端を容赦なくぐぽんと飲み込ませる。
「あああぁっ!」
衝撃に、抱えられた脚が跳ね上がった。蕾も肉筒も、蜻蛉の形にひしゃげ、形を変えていく。他者の熱を体内に受け入れる、生々しい感覚。
一月ぶりではあるが、よく慣らされたことのはずなのに、今日はこれまでとは違っていた。押し入ってきたものが、あまりに太く、大きいのだ。しかもそれは、衝撃に強張る肉筒を軋ませながら、小刻みに抽送を繰り返し、少しずつ侵入する深さを増そうとしている。今でも圧迫感で息が苦しいのに、こんなものを奥まで入れられたら、――きっと裂けてしまう。
あの最初の、血の臭いが漂う強姦のように。
「いやっ、蜻蛉っ、ふと、太いっ、……どうして、こんなっ、……」
限界まで拡げられる苦しさと恐怖に、太い、太い、と譫言のように弱々しく抗議する梟は、その非難の卑猥さに気づかない。煽られさらに猛々しさを増した雄が、ぐうっと肉筒を押し拡げる。凄まじい威容に、梟の喉から高い悲鳴が迸った。
「ああぁぅ! あ、あっ、ああぁ……」
「……余をこれほど昂らせるのはそなたの仕業、自業自得ぞ。迂闊に男を煽るとどうなるか、思い知るがよい」
「何、もっ、してないっ……」
「……そうだな。そなたは何もせずとも余を狂わせる、罪なき魔性であったな……」
ゆるゆると腰を使われ、裂けそうに軋みながらも、奥まで流し込まれた香油とともに否応なく肉筒が蜻蛉の大きさに馴染んでいく。かつてなく拡げられる痛みが麻痺し、奥深くまで食い締める物を待ちわび靡いていく。
蜻蛉が動きを止めても、貪欲に躾けられた肉筒はぞろぞろと蠢き、奥へと導くように雄に絡みついた。臍の下あたりが切なく疼き、肉筒全体が波を起こすようにうねって悪辣な男に縋り付く。その従順さを褒めるように、蜻蛉の大きな手が涙に濡れた頬を撫で、額に張り付いた髪をかき上げる。
「いい子だな、梟……。処女の頑なさで拒んでも、余に懐く術は覚えておったか」
甘くやさしい声とは裏腹に、蜻蛉は震える白い脚を抱え直し押し開くと、指も届かず硬さの残る奥を鋭く突き上げた。
「ああああぁぁっ……!」
無理矢理抉じ開けられる痛みと衝撃に、挿入の衝撃ですでに張りが失われていた組紐が、完全に緩んだ。痛みによってしか、前を縛められる辛苦からは逃れられない。その事実に、梟はこれから我が身を襲う責め苦に気がつき、体の震えを堪えることができなかった。
今は一月ぶりに受け入れた長大な雄に怯えていても、いずれこのはしたない体は、その痛みを快感に置き換えて見境なく貪ってしまう。奥を暴かれることに悦楽を見出し、蜻蛉の望むままに悶え啼く。組紐の縛めは、男の絶頂を封じたまま、中での絶頂に狂わせる淫靡な罠だったのだ。痛みと快楽、緊張と弛緩が繰り返され、許されるまで梟に安寧は訪れない。
酷い仕打ちに、ぼろぼろと涙が溢れる。抱かれるにしても、どうしてこのような目に遭わされるのか。
幾筋も頬を濡らす透明な雫は、身を屈めた蜻蛉の熱い舌に舐め取られた。その雄は、一月ぶりのきつい締め付けをたっぷり堪能し、大胆な抽送で肉筒を手懐け始めていた。
湿った吐息を零しながら、蜻蛉が熱に浮かされたような目をして囁いてくる。
「上からも下からも涙を零して……忙しいな。そなたの泣き顔は愛らしいゆえ、こうして何度も泣かせたくなる」
「……変態っ。意地、悪っ、……ああうっ!」
硬い切っ先を奥に押し付け、蜻蛉が腰を卑猥に回す。ぐりぐりと脆い肉を捏ねられ、足の指がぎゅっと丸まった。
痛みも圧迫感も残っているのに、快楽の種は構うことになく肉筒のあちこちで芽吹き、根を張り巡らせる。暴走する体に振り回され自由を奪われる、快楽の下僕と成り果てる瞬間は、すぐそこまで来ていた。
「酷いのも意地が悪いのも、そなたの方がよほど上だ。この一月、健やかに眠るそなたの隣でどれほど余が身を燃やしておったか。これまでそなたが無邪気に煽ってくるのを、どれほど堪えてやったことか。今宵一夜、こうして欲望に身を焦がし、余の味わったつらさを思い知れ」
「ああぁっ、あ、ああっ、……ひあぁんっ」
ぬぐっ、ぬぐっ、と奥を抉った雄が先端だけを残して引き出され、今度は雄芯の内側にあるしこりを突き捏ねる。そこばかりを標的にする意地の悪い抽送に、梟の欲望が震えながら勃ち上がり、また組紐が張り詰め始めた。
その快楽の種は、指で弄られただけで達してしまう、一番我慢ならない場所だ。硬い切っ先で押し上げられるその一突き一突きごとに、梟は軽く中で極めてしまう。そして極めるたびに、組紐がキリキリと欲望を締め上げる。
「良く吸い付く……そなたも余を味わっておるのか? ここを責めると、そなたは大層良い声で鳴く。その囀り、もっと聴かせよ」
「あ、あんっ、ああっ、……はっ、はう、あぁんっ」
「……もっとだ」
「あんっ、あう、……いやっ、いやあっ!」
ぬちゅぬちゅと香油を掻き混ぜながら、弱いところを狙い撃ちにされ、梟は背筋を震わせて仰け反った。堪えようとするのに、その喉は蜻蛉の望むままに快楽の調べを囀り、その淫らさに、蜻蛉だけではなく自身の欲望も煽っていく。そしてその分、組紐がもたらす辛苦も増していく。
痛みと前で達することのできないつらさ、そして身の内に溜まり続ける深い悦楽に耐えられず、陥落するように、梟はまた体をくねらせながら、中での大きな絶頂に押し上げられた。
「ふあっ、あ、ぁあああんっ」
宙に浮いた爪先が引き攣り、だらしない嬌声が零れる。その極みの代償に、ぎりっと硬く縛められた雄芯が勢いを失っていく。
「あうぅっ、……もう、……もう、許して……」
「今宵一夜と申したはずだ」
儚い声の哀願は、一言の下に切り捨てられた。
立て続けに快楽と辛苦に打ち据えられ、次に襲い来る刺激に怯える体は力を失い、蜻蛉の思うままだ。散々痛めつけられ、もう十分意趣返しは果たされたと思うのに、まだ足りないと言わんばかりに、奥深くをいきなり突き抉られる。脳天まで響く鈍い衝撃に、ひっと喉が鳴り、がくがくと腰が痙攣した。
これほど好きにしておきながら、蜻蛉はまだ終わらせる気がないのだ。
(何も、していないのに…!)
どうして、このような目に遭わなければならないのか。
一方的に責められ、嬲られるのが悔しくて、梟は震える手を伸ばした。初めて蜻蛉の胸の突起に触れ、指の腹で挟む。自分が飲み込まされている苦しみのほんの一部でも、蜻蛉に与えたいと思ったのだ。
酷いことをされているのに、何故か今夜の蜻蛉は怖くなかった。心を抉じ開け追い詰めるような気配はなく、酷薄な笑みを浮かべることもない。得体の知れない闇の獣に、拗ねて戯れつかれているような感じだった。だからこそ仕返しをしたいと、これまで思いもしなかった企みが浮かんだのかもしれない。
「……余に触れたいのか?」
指先を凝視する蜻蛉を意識しながら、すでに凝った胸の突起を回転させるようにゆっくり捏ねる。白い指の淫靡な動きに、頭上の男が息を詰めた。
敷布に沈められてからずっと胸を弄られ、時に吸われ、時に噛まれ、快楽と痛みを引き出されていた。その上肉筒を遠慮なく責められ、なのに前を封じられて、荒れ狂う快感は限界を超えている。
そのつらさを、蜻蛉は知らない。同時に何箇所にも与えられる強すぎる刺激が、どれほどの責め苦であるか、蜻蛉にわからせてやりたかった。自分一人だけがつらい思いをしていると言い張る、この傲慢な男に。
しかし、敵と見做していない相手に力を振るうことができない梟の拙い指先は、仕返しとはいえ他者の体の一部を捻り潰すことなどできず、ただ揉みしだき愛撫したに過ぎなかった。
「……っ、こやつめ…!」
突然、唸るような声が降ってきた。
胸に触れていた手を振り払われた。膝裏を掴まれ、押さえ付けられる。腰がより高く浮き上がり、蕾が雄を咥え込んだまま上を向いた。角度が変わった男根にこれまでとは別のところを抉られ、体を二つに畳まれる苦しさに呻く梟に構わず、蜻蛉は真上から突き刺すように乱暴な抽送を開始した。
「ああっ、いやぁ、はげしっ、……あああぁんっ!」
長大な男根に容赦なく奥まで一気に串刺しにされ、一瞬意識が真っ白になる。激しい呼吸で閉じることもできない口の端から、唾液が零れ顎を伝った。
撃ち込まれる雄は逞しく漲り、すでに限界まで拡がっている肉筒をみちみちと無慈悲に軋ませながら膨張していく。その大きさに怯える梟の理性を打ち崩すように、ぐちゅんっ、どちゅんっ、と弱い奥ばかりを掘り抉られて、舌先までもが痺れた。
「はっ、あっ、ああ、も、いや……!」
認め難い、しかし認めざるを得ない悦楽に、快楽の種に支配された体が歓喜を叫んでいる。ぬかるんだ肉を刮げるように内襞を擦り上げられて、怖気のような悦楽が込み上げ、甘い嬌声が迸った。梟の欲望も、組紐に阻まれながらも解放を求めて懸命に身を起こし、痛みに涙を零している。封じられていなければ、とっくに白蜜を零している甘くつらい淫獄に、梟はただ悶え啼いた。
「やあっ、かげろ、大きいっ、おおき、いっ、……こわれる、おく、こわれるっ」
「――壊れてしまえばよい。そうしたら欠片をすべて拾い集めて作り直し、その心に覗き窓をつけてやるものを…」
「いやぁっ」
掛けられた言葉に、胸の中に手を入れ探られるような恐怖を感じ、踵で空を蹴って悲鳴を上げた瞬間、蜻蛉が低く呻いた。
肉筒を削る勢いで、雄の精が大量に叩きつけられる。その熱さと、逆流する白濁に肉襞を舐められる感触に、梟もまた出さずに極めた。
「ああぁんっ、あ、あ、……あ、あふぅ……」
奥を男の精に濡らされる感触に――たまらなく感じる。快感が痛みを凌駕したのか、梟の欲望は萎えることなく、組紐に苛められたまま健気に勃ち上がっていた。
「あれほど警告してやったのに、よくも煽ってくれたものよ……」
絶頂で息が整わないまま、蜻蛉が低く嗤う。
むせ返るような雄の色気を滴らせながら、組み敷いた梟に屈み込み、ねっとりと唇を塞ぐ。二人ともまだ呼吸が荒く、その状態での息苦しい口づけは何故か興奮を煽り立て、蜻蛉に唆されるまま、梟も懸命に舌先を絡め、根元を擦り合わせた。
んっ、んっ、と小さく鼻を鳴らしながら精一杯応える梟の髪を、褒美を与えるように蜻蛉が何度も梳き上げる。胸と胸を擦り合わせ、互いの乳首を刺激し合うように仕向ける動きは、大きな獣に懐かれ、淫靡に戯れられているようだ。
口づけがほどかれた時、唇の端から溢れた唾液が滴り、汗と涙に混じって、梟の顔はぐちゃぐちゃだった。みっともないと思うのに、構わず蜻蛉は顔中にやさしい口づけを降らせて、労わるように梟を甘やかす。
しかし、続いた言葉は不穏でしかなかった。
「花街では、男を三度搾り取らねば自身は極めることを許されぬのだったな」
「ひいっ!」
痛々しく勃ち上がった雄芯を大きな手のひらに包まれ、ゆっくりと扱かれる。組紐に縛められたままの愛撫は、意地の悪いいたぶりでしかない。何度も襲われた絶頂に痺れた体では、力強い男の手を払うこともできず、何よりまだふてぶてしい雄に居座られたままでは身動ぎすらもできない。
雄芯だけではなく、蜜をたっぷりと溜めた双珠も揉みしだかれ、高い鳴き声を上げて見悶えた梟は、なすすべもなく男の手に――墜ちた。
「今宵は扇屋の趣向に乗るとしよう。あと二度、余を搾り取ってみよ。そなたに許すのは、それからだ」
内襞のあちこちに眠る快楽の種を一つ残らず刺激してくる蜻蛉の手技は執拗で、全身が色づいて汗ばみ、枕を掴み耐える手も湿っている。感じれば感じるほど欲望に組紐が食い込むことになり、脆い部分だけにその痛みは耐え難い。
あまりのつらさに呻いていると、蜻蛉が勃ち上がった両の乳首を手加減なく捻り上げてくる。皮膚の薄いところを弄られ続け、指が掠めるだけでも体が跳ねるほど敏感に熟してしまっているのに、手荒に扱われてはもう心地好さだけでは済まされない。身の内を走る鋭い痛みに欲望が萎え、また肉筒に指を埋められて、中を拡げられる。それを何度も繰り返される。
気を失えば楽になれるのに、与えられる痛みにそれも叶わず、梟は涙で曇った視界の中、怨じるように酷い男を見つめた。その眼差しに気づき、蜻蛉が満足そうに喉を鳴らす。
「そなたのこれは薄い色合いで果実のように瑞々しいゆえ、赤い組紐に縛められるのが似合うな。このように震えて……苦しいか」
透明な蜜を零し続ける蜜口を指の腹で擦られ、疼きと痛みが生じる。欲望を刺激されればそれだけ、雄芯は頭を擡げようとし、それを阻む組紐の張りがきつくなる。強まる痛みに、また涙が零れた。愉しそうに見下ろしてくる蜻蛉に気がつき、震える声で詰る。
「変態っ、恥知らず! ――ひぃっ!」
心からの非難は、組紐を引っ張られる痛みに掻き消された。蜻蛉の指が、張り詰めた組紐を弓のようにキリキリと引き絞り、蜜袋を押し上げ欲望の先端を締め上げる。
「いたっ、……蜻蛉、痛い……!」
「そなたが戒律を破って自涜などせぬよう封じてやったのだ。痛いのが嫌なら、高潔な神聖騎士らしく欲望を鎮めてみよ。――そのように可愛い顔をしても、許してやらぬぞ」
埋め込んでいた指を引き抜くと、蜻蛉はすっかりほぐれた蕾に、天を衝くように聳り立つ男根を宛がった。その熱さに驚き引けた細腰を掴むと、傘の張り出した先端を容赦なくぐぽんと飲み込ませる。
「あああぁっ!」
衝撃に、抱えられた脚が跳ね上がった。蕾も肉筒も、蜻蛉の形にひしゃげ、形を変えていく。他者の熱を体内に受け入れる、生々しい感覚。
一月ぶりではあるが、よく慣らされたことのはずなのに、今日はこれまでとは違っていた。押し入ってきたものが、あまりに太く、大きいのだ。しかもそれは、衝撃に強張る肉筒を軋ませながら、小刻みに抽送を繰り返し、少しずつ侵入する深さを増そうとしている。今でも圧迫感で息が苦しいのに、こんなものを奥まで入れられたら、――きっと裂けてしまう。
あの最初の、血の臭いが漂う強姦のように。
「いやっ、蜻蛉っ、ふと、太いっ、……どうして、こんなっ、……」
限界まで拡げられる苦しさと恐怖に、太い、太い、と譫言のように弱々しく抗議する梟は、その非難の卑猥さに気づかない。煽られさらに猛々しさを増した雄が、ぐうっと肉筒を押し拡げる。凄まじい威容に、梟の喉から高い悲鳴が迸った。
「ああぁぅ! あ、あっ、ああぁ……」
「……余をこれほど昂らせるのはそなたの仕業、自業自得ぞ。迂闊に男を煽るとどうなるか、思い知るがよい」
「何、もっ、してないっ……」
「……そうだな。そなたは何もせずとも余を狂わせる、罪なき魔性であったな……」
ゆるゆると腰を使われ、裂けそうに軋みながらも、奥まで流し込まれた香油とともに否応なく肉筒が蜻蛉の大きさに馴染んでいく。かつてなく拡げられる痛みが麻痺し、奥深くまで食い締める物を待ちわび靡いていく。
蜻蛉が動きを止めても、貪欲に躾けられた肉筒はぞろぞろと蠢き、奥へと導くように雄に絡みついた。臍の下あたりが切なく疼き、肉筒全体が波を起こすようにうねって悪辣な男に縋り付く。その従順さを褒めるように、蜻蛉の大きな手が涙に濡れた頬を撫で、額に張り付いた髪をかき上げる。
「いい子だな、梟……。処女の頑なさで拒んでも、余に懐く術は覚えておったか」
甘くやさしい声とは裏腹に、蜻蛉は震える白い脚を抱え直し押し開くと、指も届かず硬さの残る奥を鋭く突き上げた。
「ああああぁぁっ……!」
無理矢理抉じ開けられる痛みと衝撃に、挿入の衝撃ですでに張りが失われていた組紐が、完全に緩んだ。痛みによってしか、前を縛められる辛苦からは逃れられない。その事実に、梟はこれから我が身を襲う責め苦に気がつき、体の震えを堪えることができなかった。
今は一月ぶりに受け入れた長大な雄に怯えていても、いずれこのはしたない体は、その痛みを快感に置き換えて見境なく貪ってしまう。奥を暴かれることに悦楽を見出し、蜻蛉の望むままに悶え啼く。組紐の縛めは、男の絶頂を封じたまま、中での絶頂に狂わせる淫靡な罠だったのだ。痛みと快楽、緊張と弛緩が繰り返され、許されるまで梟に安寧は訪れない。
酷い仕打ちに、ぼろぼろと涙が溢れる。抱かれるにしても、どうしてこのような目に遭わされるのか。
幾筋も頬を濡らす透明な雫は、身を屈めた蜻蛉の熱い舌に舐め取られた。その雄は、一月ぶりのきつい締め付けをたっぷり堪能し、大胆な抽送で肉筒を手懐け始めていた。
湿った吐息を零しながら、蜻蛉が熱に浮かされたような目をして囁いてくる。
「上からも下からも涙を零して……忙しいな。そなたの泣き顔は愛らしいゆえ、こうして何度も泣かせたくなる」
「……変態っ。意地、悪っ、……ああうっ!」
硬い切っ先を奥に押し付け、蜻蛉が腰を卑猥に回す。ぐりぐりと脆い肉を捏ねられ、足の指がぎゅっと丸まった。
痛みも圧迫感も残っているのに、快楽の種は構うことになく肉筒のあちこちで芽吹き、根を張り巡らせる。暴走する体に振り回され自由を奪われる、快楽の下僕と成り果てる瞬間は、すぐそこまで来ていた。
「酷いのも意地が悪いのも、そなたの方がよほど上だ。この一月、健やかに眠るそなたの隣でどれほど余が身を燃やしておったか。これまでそなたが無邪気に煽ってくるのを、どれほど堪えてやったことか。今宵一夜、こうして欲望に身を焦がし、余の味わったつらさを思い知れ」
「ああぁっ、あ、ああっ、……ひあぁんっ」
ぬぐっ、ぬぐっ、と奥を抉った雄が先端だけを残して引き出され、今度は雄芯の内側にあるしこりを突き捏ねる。そこばかりを標的にする意地の悪い抽送に、梟の欲望が震えながら勃ち上がり、また組紐が張り詰め始めた。
その快楽の種は、指で弄られただけで達してしまう、一番我慢ならない場所だ。硬い切っ先で押し上げられるその一突き一突きごとに、梟は軽く中で極めてしまう。そして極めるたびに、組紐がキリキリと欲望を締め上げる。
「良く吸い付く……そなたも余を味わっておるのか? ここを責めると、そなたは大層良い声で鳴く。その囀り、もっと聴かせよ」
「あ、あんっ、ああっ、……はっ、はう、あぁんっ」
「……もっとだ」
「あんっ、あう、……いやっ、いやあっ!」
ぬちゅぬちゅと香油を掻き混ぜながら、弱いところを狙い撃ちにされ、梟は背筋を震わせて仰け反った。堪えようとするのに、その喉は蜻蛉の望むままに快楽の調べを囀り、その淫らさに、蜻蛉だけではなく自身の欲望も煽っていく。そしてその分、組紐がもたらす辛苦も増していく。
痛みと前で達することのできないつらさ、そして身の内に溜まり続ける深い悦楽に耐えられず、陥落するように、梟はまた体をくねらせながら、中での大きな絶頂に押し上げられた。
「ふあっ、あ、ぁあああんっ」
宙に浮いた爪先が引き攣り、だらしない嬌声が零れる。その極みの代償に、ぎりっと硬く縛められた雄芯が勢いを失っていく。
「あうぅっ、……もう、……もう、許して……」
「今宵一夜と申したはずだ」
儚い声の哀願は、一言の下に切り捨てられた。
立て続けに快楽と辛苦に打ち据えられ、次に襲い来る刺激に怯える体は力を失い、蜻蛉の思うままだ。散々痛めつけられ、もう十分意趣返しは果たされたと思うのに、まだ足りないと言わんばかりに、奥深くをいきなり突き抉られる。脳天まで響く鈍い衝撃に、ひっと喉が鳴り、がくがくと腰が痙攣した。
これほど好きにしておきながら、蜻蛉はまだ終わらせる気がないのだ。
(何も、していないのに…!)
どうして、このような目に遭わなければならないのか。
一方的に責められ、嬲られるのが悔しくて、梟は震える手を伸ばした。初めて蜻蛉の胸の突起に触れ、指の腹で挟む。自分が飲み込まされている苦しみのほんの一部でも、蜻蛉に与えたいと思ったのだ。
酷いことをされているのに、何故か今夜の蜻蛉は怖くなかった。心を抉じ開け追い詰めるような気配はなく、酷薄な笑みを浮かべることもない。得体の知れない闇の獣に、拗ねて戯れつかれているような感じだった。だからこそ仕返しをしたいと、これまで思いもしなかった企みが浮かんだのかもしれない。
「……余に触れたいのか?」
指先を凝視する蜻蛉を意識しながら、すでに凝った胸の突起を回転させるようにゆっくり捏ねる。白い指の淫靡な動きに、頭上の男が息を詰めた。
敷布に沈められてからずっと胸を弄られ、時に吸われ、時に噛まれ、快楽と痛みを引き出されていた。その上肉筒を遠慮なく責められ、なのに前を封じられて、荒れ狂う快感は限界を超えている。
そのつらさを、蜻蛉は知らない。同時に何箇所にも与えられる強すぎる刺激が、どれほどの責め苦であるか、蜻蛉にわからせてやりたかった。自分一人だけがつらい思いをしていると言い張る、この傲慢な男に。
しかし、敵と見做していない相手に力を振るうことができない梟の拙い指先は、仕返しとはいえ他者の体の一部を捻り潰すことなどできず、ただ揉みしだき愛撫したに過ぎなかった。
「……っ、こやつめ…!」
突然、唸るような声が降ってきた。
胸に触れていた手を振り払われた。膝裏を掴まれ、押さえ付けられる。腰がより高く浮き上がり、蕾が雄を咥え込んだまま上を向いた。角度が変わった男根にこれまでとは別のところを抉られ、体を二つに畳まれる苦しさに呻く梟に構わず、蜻蛉は真上から突き刺すように乱暴な抽送を開始した。
「ああっ、いやぁ、はげしっ、……あああぁんっ!」
長大な男根に容赦なく奥まで一気に串刺しにされ、一瞬意識が真っ白になる。激しい呼吸で閉じることもできない口の端から、唾液が零れ顎を伝った。
撃ち込まれる雄は逞しく漲り、すでに限界まで拡がっている肉筒をみちみちと無慈悲に軋ませながら膨張していく。その大きさに怯える梟の理性を打ち崩すように、ぐちゅんっ、どちゅんっ、と弱い奥ばかりを掘り抉られて、舌先までもが痺れた。
「はっ、あっ、ああ、も、いや……!」
認め難い、しかし認めざるを得ない悦楽に、快楽の種に支配された体が歓喜を叫んでいる。ぬかるんだ肉を刮げるように内襞を擦り上げられて、怖気のような悦楽が込み上げ、甘い嬌声が迸った。梟の欲望も、組紐に阻まれながらも解放を求めて懸命に身を起こし、痛みに涙を零している。封じられていなければ、とっくに白蜜を零している甘くつらい淫獄に、梟はただ悶え啼いた。
「やあっ、かげろ、大きいっ、おおき、いっ、……こわれる、おく、こわれるっ」
「――壊れてしまえばよい。そうしたら欠片をすべて拾い集めて作り直し、その心に覗き窓をつけてやるものを…」
「いやぁっ」
掛けられた言葉に、胸の中に手を入れ探られるような恐怖を感じ、踵で空を蹴って悲鳴を上げた瞬間、蜻蛉が低く呻いた。
肉筒を削る勢いで、雄の精が大量に叩きつけられる。その熱さと、逆流する白濁に肉襞を舐められる感触に、梟もまた出さずに極めた。
「ああぁんっ、あ、あ、……あ、あふぅ……」
奥を男の精に濡らされる感触に――たまらなく感じる。快感が痛みを凌駕したのか、梟の欲望は萎えることなく、組紐に苛められたまま健気に勃ち上がっていた。
「あれほど警告してやったのに、よくも煽ってくれたものよ……」
絶頂で息が整わないまま、蜻蛉が低く嗤う。
むせ返るような雄の色気を滴らせながら、組み敷いた梟に屈み込み、ねっとりと唇を塞ぐ。二人ともまだ呼吸が荒く、その状態での息苦しい口づけは何故か興奮を煽り立て、蜻蛉に唆されるまま、梟も懸命に舌先を絡め、根元を擦り合わせた。
んっ、んっ、と小さく鼻を鳴らしながら精一杯応える梟の髪を、褒美を与えるように蜻蛉が何度も梳き上げる。胸と胸を擦り合わせ、互いの乳首を刺激し合うように仕向ける動きは、大きな獣に懐かれ、淫靡に戯れられているようだ。
口づけがほどかれた時、唇の端から溢れた唾液が滴り、汗と涙に混じって、梟の顔はぐちゃぐちゃだった。みっともないと思うのに、構わず蜻蛉は顔中にやさしい口づけを降らせて、労わるように梟を甘やかす。
しかし、続いた言葉は不穏でしかなかった。
「花街では、男を三度搾り取らねば自身は極めることを許されぬのだったな」
「ひいっ!」
痛々しく勃ち上がった雄芯を大きな手のひらに包まれ、ゆっくりと扱かれる。組紐に縛められたままの愛撫は、意地の悪いいたぶりでしかない。何度も襲われた絶頂に痺れた体では、力強い男の手を払うこともできず、何よりまだふてぶてしい雄に居座られたままでは身動ぎすらもできない。
雄芯だけではなく、蜜をたっぷりと溜めた双珠も揉みしだかれ、高い鳴き声を上げて見悶えた梟は、なすすべもなく男の手に――墜ちた。
「今宵は扇屋の趣向に乗るとしよう。あと二度、余を搾り取ってみよ。そなたに許すのは、それからだ」
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・話の流れが遅い
・作者が話の進行悩み過ぎてる
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別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
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嫌われものの僕について…
相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。
だか、ある日事態は急変する
主人公が暗いです
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