189 / 237
16章※
9
しおりを挟む
潤滑剤として男の体液を尻の中に、そして今夜は、男の「遊び」でぷっくりとふくらんでしまった乳首にも塗りたくられる。それは、三ヵ月もの間迎え入れる指もなく、すっかり固く閉じてしまった中を、以前のようにやわらかくほころぶまでくつろげる、長い行為を意味していた。
延々と続く手技の間、潤いが足らなくならないように、志貴は一洋の欲望を扱くように命じられた。一洋が溢れさせる透明な雫も、噴き出す勢いで迸る白濁も、すべて志貴を潤わせていく。
中を拡げられる愉悦に啼きながら、雄々しいものに手を添え奉仕する行為は、命じられたというよりは、許されたという方が正しいかもしれない。唯一許された献身――一洋の欲望に寄り添う行為を、志貴は嬉々として受け入れたのだから。
「……はっ、あ、あぅ……は……んぁっ」
一本の指でもきつかったそこを、一洋は辛抱強くくつろげ、かつてのように三本飲み込めるようになる頃には、すでに二時間近くが経っていた。
穴に指を入れられたままの志貴は、その間に二度達し、自身の白濁も中を潤わせるのに使われた。一洋と自分のものが体内で混ざり合い、染み込んでいく。
昼寝の前には、精路もそうして支配されたのだ――男の象徴の中までも。被虐的な思いに、体がさらに高まっていく。
互いへの執着を深めながらも一線は越えない、この生々しい行為を、どんな名で呼べばいいのか志貴にはわからなかった。相互自慰というには背徳的で、情交と呼ぶには体の交わりが足らない。口づけすらも交わさずに、二人は濡れていく。
それでも、その精にぬるぬると侵された中は、もう処女地とは呼べない気がした。一洋の精液に灼かれ、被虐の快楽に堕ちた精路も――。
男を知らないまま、志貴の体は穢されたのだ。二人の執着と欲望に。
そう思い至った時、理由のわからない涙がすっと眦から流れ落ちた。
(どうして……)
自身の目的のためにやさしい幼馴染を縛り付けようとする、不誠実で醜い人間に、綺麗な涙は似合わない。頬を濡らすのは、おそらく過ぎた快楽の発露だろう。
その証拠に、今はもう切羽詰まった喘ぎ声でしか、一洋の名を呼ぶことができない。
「……は、んっ、……イチ兄さん……っ」
とっくに蕩けているのに、一洋は指を入れたまま執拗に中を拡げ、擦り上げる。終わりの見えない行為に目眩を感じ、志貴は男の腕に縋りついた。
「もう、出ない、……も、無理……っ」
「嘘を吐くな。お前の、また勃ってるぞ」
「おかしく、なってるだけ……にぃさん、もぅ、いや……あぁん!」
ずぶぅっ、とぬかるんだ肉の狭間を太い指が貫き、前立腺を押し上げる。背を仰け反らせ、志貴は高く鳴いた。男に縋っていた腕が力を失い、シーツの上に落ちる。
今夜の『薬』は中を拡げ手懐けるのを目的としているらしく、一洋はなかなか前立腺を触ってくれなかった。あまりのつらさに志貴が根を上げると、こうして言い聞かせるように指先で潰される。
それは褒美ではなく、懲罰だった。鋭い快楽で志貴を陥落させながら、加減をよく知る指は射精には導いてくれないのだ。
延々と続く手技の間、潤いが足らなくならないように、志貴は一洋の欲望を扱くように命じられた。一洋が溢れさせる透明な雫も、噴き出す勢いで迸る白濁も、すべて志貴を潤わせていく。
中を拡げられる愉悦に啼きながら、雄々しいものに手を添え奉仕する行為は、命じられたというよりは、許されたという方が正しいかもしれない。唯一許された献身――一洋の欲望に寄り添う行為を、志貴は嬉々として受け入れたのだから。
「……はっ、あ、あぅ……は……んぁっ」
一本の指でもきつかったそこを、一洋は辛抱強くくつろげ、かつてのように三本飲み込めるようになる頃には、すでに二時間近くが経っていた。
穴に指を入れられたままの志貴は、その間に二度達し、自身の白濁も中を潤わせるのに使われた。一洋と自分のものが体内で混ざり合い、染み込んでいく。
昼寝の前には、精路もそうして支配されたのだ――男の象徴の中までも。被虐的な思いに、体がさらに高まっていく。
互いへの執着を深めながらも一線は越えない、この生々しい行為を、どんな名で呼べばいいのか志貴にはわからなかった。相互自慰というには背徳的で、情交と呼ぶには体の交わりが足らない。口づけすらも交わさずに、二人は濡れていく。
それでも、その精にぬるぬると侵された中は、もう処女地とは呼べない気がした。一洋の精液に灼かれ、被虐の快楽に堕ちた精路も――。
男を知らないまま、志貴の体は穢されたのだ。二人の執着と欲望に。
そう思い至った時、理由のわからない涙がすっと眦から流れ落ちた。
(どうして……)
自身の目的のためにやさしい幼馴染を縛り付けようとする、不誠実で醜い人間に、綺麗な涙は似合わない。頬を濡らすのは、おそらく過ぎた快楽の発露だろう。
その証拠に、今はもう切羽詰まった喘ぎ声でしか、一洋の名を呼ぶことができない。
「……は、んっ、……イチ兄さん……っ」
とっくに蕩けているのに、一洋は指を入れたまま執拗に中を拡げ、擦り上げる。終わりの見えない行為に目眩を感じ、志貴は男の腕に縋りついた。
「もう、出ない、……も、無理……っ」
「嘘を吐くな。お前の、また勃ってるぞ」
「おかしく、なってるだけ……にぃさん、もぅ、いや……あぁん!」
ずぶぅっ、とぬかるんだ肉の狭間を太い指が貫き、前立腺を押し上げる。背を仰け反らせ、志貴は高く鳴いた。男に縋っていた腕が力を失い、シーツの上に落ちる。
今夜の『薬』は中を拡げ手懐けるのを目的としているらしく、一洋はなかなか前立腺を触ってくれなかった。あまりのつらさに志貴が根を上げると、こうして言い聞かせるように指先で潰される。
それは褒美ではなく、懲罰だった。鋭い快楽で志貴を陥落させながら、加減をよく知る指は射精には導いてくれないのだ。
31
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…



【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる