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16章※
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そんな一洋も、体は男のそれだが、顔は想い人に瓜二つの志貴が自分の手技に喘ぎ、抗うこともできず愉悦に蕩ける姿には、ひどく執着した。崇拝に近い想いを抱く相手に、自らの欲望の処理をさせるつもりなど毛頭ないが、代わりにその息子の欲望に奉仕し、高め、悦を極めさせることは、恐らく一洋の喜びなのだ。
それは、倒錯してはいるが、無私の愛だ。
しかし志貴ならば――瓜二つの代用品であれば、一洋に見返りを与えることができる。想い人を穢すことなく、彼の欲望を満たすことができる。
どれほど似ていても、志貴は君子ではない。憧憬の対象となるような強さも、高潔さも持ち合わせていない。それどころか年上の幼馴染に対し、今は敬慕だけではなく打算も抱いている。ためらいなく、自らの肉体を差し出すほどに。
とはいえ、これまで男も女も誘惑しようと考えたことすらなかった志貴に、その手管はない。こうして隠さず体を見せるのが、精一杯の誘いだった。
「イチ兄さん……触って、ください」
啼かされなくても自ら懇願する志貴に、男の喉仏がゆっくりと上下する。男の体でも、少しでも彼の欲情を掻き立てられるように、志貴は羞恥を呑み込みながらさらに脚を開いた。
硬く平坦な男の体とは違い、女の体にはいくつもの美点がある。すっぽりと腕の中に収まる華奢な肩、なだらかにくびれた腰の稜線、受けとめた体を包み込むように柔らかな肌、丸くふんわりとした尻、豊かな乳房。そして男をしっとりと押し包む、熱く蕩けた秘裂の奥。
志貴にはないものばかりだが、代わりとなるものもいくつかはある。その数少ない一つが、丸いふくらみはないが、男のそれとはすっかり色と形を変えてしまった突起のある胸だ。
その様は、他に想う人がいる男の目にもいやらしく映るのだろう。何度も絶頂を与えることを優先し、いつも尻の中から志貴を快楽に堕としていた一洋だが、その視線も今夜は、男でも女でもないような妖しい形をした胸に注がれている。
「……随分美味そうに育てたもんだ」
「触ってくれる……?」
「嫌がると思うのか」
「だって、触り心地が……全然違うから」
やわらかな感触も、手に収めた時のしっとりとした重みも。女の乳房の素晴らしさの欠片も、男の胸にはない。
そう続けようとして、赤面する。これではまるで、女の胸ばかりに執着する、幼稚な変態のようではないか。
口籠る志貴に言わんとすることを察したらしく、一洋は軽く苦笑を浮かべた。
「そりゃ俺も男だからな、女の胸は勿論好きだが――こっちの方がよっぽどそそられる。懇ろに可愛がりたくなる……」
「んっ、ぁ……」
さきほど啼かせた時とは打って変わり、突起に触れた指先はやさしかった。乳輪を指で挟み、ふっくら盛り上がるようにゆるゆると揉み込む。赤く勃ち上がった乳頭だけではなく、その周囲からも、もどかしい感覚がしみ出してくる。
「……は、んっ……」
「声を堪えるな。感じるまま、素直に鳴くんだ」
「はい……あぁっ!」
それは、倒錯してはいるが、無私の愛だ。
しかし志貴ならば――瓜二つの代用品であれば、一洋に見返りを与えることができる。想い人を穢すことなく、彼の欲望を満たすことができる。
どれほど似ていても、志貴は君子ではない。憧憬の対象となるような強さも、高潔さも持ち合わせていない。それどころか年上の幼馴染に対し、今は敬慕だけではなく打算も抱いている。ためらいなく、自らの肉体を差し出すほどに。
とはいえ、これまで男も女も誘惑しようと考えたことすらなかった志貴に、その手管はない。こうして隠さず体を見せるのが、精一杯の誘いだった。
「イチ兄さん……触って、ください」
啼かされなくても自ら懇願する志貴に、男の喉仏がゆっくりと上下する。男の体でも、少しでも彼の欲情を掻き立てられるように、志貴は羞恥を呑み込みながらさらに脚を開いた。
硬く平坦な男の体とは違い、女の体にはいくつもの美点がある。すっぽりと腕の中に収まる華奢な肩、なだらかにくびれた腰の稜線、受けとめた体を包み込むように柔らかな肌、丸くふんわりとした尻、豊かな乳房。そして男をしっとりと押し包む、熱く蕩けた秘裂の奥。
志貴にはないものばかりだが、代わりとなるものもいくつかはある。その数少ない一つが、丸いふくらみはないが、男のそれとはすっかり色と形を変えてしまった突起のある胸だ。
その様は、他に想う人がいる男の目にもいやらしく映るのだろう。何度も絶頂を与えることを優先し、いつも尻の中から志貴を快楽に堕としていた一洋だが、その視線も今夜は、男でも女でもないような妖しい形をした胸に注がれている。
「……随分美味そうに育てたもんだ」
「触ってくれる……?」
「嫌がると思うのか」
「だって、触り心地が……全然違うから」
やわらかな感触も、手に収めた時のしっとりとした重みも。女の乳房の素晴らしさの欠片も、男の胸にはない。
そう続けようとして、赤面する。これではまるで、女の胸ばかりに執着する、幼稚な変態のようではないか。
口籠る志貴に言わんとすることを察したらしく、一洋は軽く苦笑を浮かべた。
「そりゃ俺も男だからな、女の胸は勿論好きだが――こっちの方がよっぽどそそられる。懇ろに可愛がりたくなる……」
「んっ、ぁ……」
さきほど啼かせた時とは打って変わり、突起に触れた指先はやさしかった。乳輪を指で挟み、ふっくら盛り上がるようにゆるゆると揉み込む。赤く勃ち上がった乳頭だけではなく、その周囲からも、もどかしい感覚がしみ出してくる。
「……は、んっ……」
「声を堪えるな。感じるまま、素直に鳴くんだ」
「はい……あぁっ!」
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