トゥモロウ・スピーチ

音羽夏生

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15章※

12

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 自身のシャツのボタンを留めた一洋は、手を伸ばし、横たわったままの志貴のボタンもすべて留めると、布団を掴んで志貴の隣に横たわった。頭を抱え込むように腕を回され、志貴はすっぽりと一洋に抱き込まれる形になる。
 『薬』の後の、満たされてあたたかな眠りの時間――しかし今、志貴に穏やかな眠りが訪れる気配はなかった。陰茎の中を満たす一洋の精液が蠢き、精路が、前立腺が、そして乳首までもがざわめいて、無数の虫に内側を食い荒らされているような錯覚を覚えるのだ。

「こうしてタオルを巻いておけば、シーツが汚れることもない。さ、昼寝をしよう」
「そんな……っ」

 他人ひとの精液に侵され、じくじくと疼くそこを放置したまま眠れるわけがない。扱き出してしまいたいが、一洋が許さない以上、勝手なことをすれば罰として何をされるかわからない。
 何を考えているのかわからない、一洋が怖い。
 しかし、迷いなく志貴の手を掴み、離そうとはしない一洋だからこそ、すべてを委ねることができる――身も、心も。

「いじ、わる……」
「可愛いな、志貴。起きたら風呂に入ろうな」

 つむじに唇を落とされ、そのやさしい感触にため息がこぼれた。腑に落ちない理不尽さも不満も、ほどけて霧散してしまう。
 擦り寄るように身動ぎすると、逞しい腕が背を撫でてくれる。その確かさに、置いていかれていないのだと安堵する。

(イチ兄さんが、戻った……)

 ひたひたと、改めて歓喜がこみ上げた。もう自分は、一人ではない。故国を救う唯一の道――和平工作の押し潰されそうな重圧に、一人で立ち向かわなくていい。
 安らぎと倦怠感、そして自身を包む腕のあたたかさが、異常な状況でも睡魔を呼び寄せる。胸も陰茎も疼いたままで、眠れるはずがないと思うのに、瞼が重くなっていく。
 自分のものではない白濁を垂れこぼし、脚の間がじっとりと濡れる淫靡な「お仕置き」に耐えながら、いつしか志貴は浅い眠りに落ちていた。
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