トゥモロウ・スピーチ

音羽夏生

文字の大きさ
上 下
179 / 237
15章※

11

しおりを挟む
 快楽に浸った頭はまだ働かず、その上兄とも思う男の自慰を直視させられて戸惑う志貴をよそに、一洋は漲った男の象徴を、志貴のそれに押し付けた。

「えっ」

 先端を割り、蜜口が密着する。脆い粘膜に雄の熱を感じ、びくりと腰を引こうとしても、志貴の陰茎は一洋に握られたままだ。
 身動ぎすらできず、怯えて見上げると、一洋は無言のまま艶めいた眼差しで見つめ返し――自身を解放した。

「――いゃああぁぁっ!!」

 どくっ、どくっ、と力強く精が放たれる。口づけを交わす唇のように睦み合った蜜口は、その勢いを素直に受け入れてしまう。一洋が脈動するたびに、びゅるっ、びゅくっ、と流し込まれる熱に精路を灼かれ、志貴は惑乱した。

「いやだぁっ、なか……なかに……ッ!」
「大人しくしろ。まだ……まだまだだ。お前を満たすには……っ」
「ゆるしてっ……おねがい、ゆるしてぇ!」

 泣き叫んでも一洋の射精は止まらず、志貴の中を侵食していく。入り込んだ物を押し出してしまいたいのに、あまりの弄虐と異様な感覚に力が入らない。それに、たっぷりと射精し、潮噴きまで強いられた直後で、押し出すにも出せるものがないのだ。
 そして――到底認められないことだが、この恐ろしい行為に、志貴の体は悦びを見出していた。前立腺を、注がれた濃い精液で中から刺激される、異常な悦楽だ。『薬』と言いながら触れてもらえないそこは、ようやく与えられた愛撫に飛びつき、節操なく擦り寄っている。
 前を侵されながら奥を嬲られるこの行為に、体は歓喜し――呆気なく陥落した。

「……あ、あぅ……イチ、にぃさん……ぁふう……」
「……気に入ったみたいだな、俺の精液ザーメンが。奥まで届いたか」

 脱力したまま蕩けた目を向ける志貴に、精を出し切った一洋が息を弾ませながら悪辣に微笑む。大量の白濁は精路に入りきらずに溢れ、志貴の陰茎を白く濡らしていた。――それだけではなく、付け根の双玉も、その下で淫らにひくつく穴も。

「ぁ、ん……これ、すごい……」
「こうされるのは初めてか?」
「はじ、めて……だよ」

 わかっているくせに、どうしてそんなことを聞くのか。こんな淫らなことをするのは、一洋しかいない。こんなに酷く志貴を責め立て、罰するように快楽を与えるのは、一洋しかいない。
 何故ならあの男には、唇しか許していないから。飼い犬として受け入れても、スパイに心は明け渡していないからだ。

「こんなの、にぃさんだけ……」
「『こんなの』には、何が含まれるんだ……?」

 小さな呟きは志貴に届かず、聞き返そうとした時には、一洋は次の行動に移っていた。敷いてあったタオルの端で自身を清めると、その汚れたタオルをそのまま志貴の腰に巻き付けたのだ。

「どうして……?」
「お前はこのままだ、お仕置きだからな」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

処理中です...