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15章※
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「留守にしてる間、ここは可愛がってやったのか?」
捧げ持つように陰茎に触れられ、脆いところで感じるよく知る体温と、直截な問いに、志貴の肌も素直にその温度を上げていく。睫毛を伏せながら、志貴は小さく首を振った。
「だって、自分では……知ってるくせに……」
「だからって、ここだけ弄ってたのか」
「……アッ!」
突然、捻るように強く胸の突起をつままれ、鋭く声が上がった。
前を大きくはだけさせられ、肩から落ちかけたシャツは、その恥ずかしい部分を隠すのに役には立たない。無防備にさらされた、赤く色づいた二つの突起に、男の視線が絡みつく。
それを自覚し、そこはうれしげに主張を始める――志貴自身の指で育てられた、色と形で。
「……触っていいのはここだけだって、兄さんが言ったんじゃないか」
「それは『薬』の間の話だ、お前はここだけじゃ達けないだろう。――それとも、胸だけで達けるようになったのか?」
「そんなこと……ひィッ」
責めるような低い声音と、欲望の先端だけを握り揉み込むような手技に、否定の言葉が喉に絡まった。
一洋から感じるのは、曖昧な苛立ちではなく、明確な怒りだ。しかし、何に対してのものなのか。
(兄さんの言いつけ通りにしただけなのに……)
『薬』を与えられる間、焦らされた志貴が耐えきれずに自身の欲望に手を伸ばしても、一洋は触れることを許さなかった。許されたのは、乳首を弄ることだけ――しかしその刺激だけで達することはできず、さらに煽られた欲情に身の内を食い荒らされた。
週末を待つ間も同じだった。自慰は禁じられなかったが、自身で触っても極めることができず疼きが増すだけだとわかっていたから、平日に欲望が募ってしまった時は、胸を弄るだけでやり過ごすしかなかった。
その延長で、一洋の不在の間、志貴は胸だけで浅くもどかしい快感を得ていたのだ。帰国の噂を耳にしてからは、心身の状態が若干不安定になったせいか、毎晩突起を弄るようになっていた。そうすることで、前や中を弄る太い指を――一洋を思い出し、その存在を感じたかったのだ。
しかし、幻想の男の手技で達することなどできるはずもなく、夜は虚しく過ぎゆくばかりだった。
「そこだけじゃ……イチ兄さんに触ってもらわないと達けないって、知ってるくせにっ」
男としての欲望を――その発露を歪めておきながら、はしたない体を責められる理不尽さに、つい悔し涙が浮かぶ。こんな体にしたのは――無理矢理男の指を受けれさせ、中で感じる快楽を執拗に教え込んだのは、一洋だ。一人前の男として認められたいと拒む志貴に、強引に甘えと依存を覚えさせたのは、目の前の男なのだ。
涙目で睨むと、一洋は怯んだように眉尻を下げた。誤解なのか八つ当たりなのか、志貴に向けた負の感情が的外れであることを悟ったようだ。
しかし、反省したかのように見えたのは一瞬だった。その不埒な両手は、ためらうことなく志貴の胸の二つの突起に伸びたのだ。
捧げ持つように陰茎に触れられ、脆いところで感じるよく知る体温と、直截な問いに、志貴の肌も素直にその温度を上げていく。睫毛を伏せながら、志貴は小さく首を振った。
「だって、自分では……知ってるくせに……」
「だからって、ここだけ弄ってたのか」
「……アッ!」
突然、捻るように強く胸の突起をつままれ、鋭く声が上がった。
前を大きくはだけさせられ、肩から落ちかけたシャツは、その恥ずかしい部分を隠すのに役には立たない。無防備にさらされた、赤く色づいた二つの突起に、男の視線が絡みつく。
それを自覚し、そこはうれしげに主張を始める――志貴自身の指で育てられた、色と形で。
「……触っていいのはここだけだって、兄さんが言ったんじゃないか」
「それは『薬』の間の話だ、お前はここだけじゃ達けないだろう。――それとも、胸だけで達けるようになったのか?」
「そんなこと……ひィッ」
責めるような低い声音と、欲望の先端だけを握り揉み込むような手技に、否定の言葉が喉に絡まった。
一洋から感じるのは、曖昧な苛立ちではなく、明確な怒りだ。しかし、何に対してのものなのか。
(兄さんの言いつけ通りにしただけなのに……)
『薬』を与えられる間、焦らされた志貴が耐えきれずに自身の欲望に手を伸ばしても、一洋は触れることを許さなかった。許されたのは、乳首を弄ることだけ――しかしその刺激だけで達することはできず、さらに煽られた欲情に身の内を食い荒らされた。
週末を待つ間も同じだった。自慰は禁じられなかったが、自身で触っても極めることができず疼きが増すだけだとわかっていたから、平日に欲望が募ってしまった時は、胸を弄るだけでやり過ごすしかなかった。
その延長で、一洋の不在の間、志貴は胸だけで浅くもどかしい快感を得ていたのだ。帰国の噂を耳にしてからは、心身の状態が若干不安定になったせいか、毎晩突起を弄るようになっていた。そうすることで、前や中を弄る太い指を――一洋を思い出し、その存在を感じたかったのだ。
しかし、幻想の男の手技で達することなどできるはずもなく、夜は虚しく過ぎゆくばかりだった。
「そこだけじゃ……イチ兄さんに触ってもらわないと達けないって、知ってるくせにっ」
男としての欲望を――その発露を歪めておきながら、はしたない体を責められる理不尽さに、つい悔し涙が浮かぶ。こんな体にしたのは――無理矢理男の指を受けれさせ、中で感じる快楽を執拗に教え込んだのは、一洋だ。一人前の男として認められたいと拒む志貴に、強引に甘えと依存を覚えさせたのは、目の前の男なのだ。
涙目で睨むと、一洋は怯んだように眉尻を下げた。誤解なのか八つ当たりなのか、志貴に向けた負の感情が的外れであることを悟ったようだ。
しかし、反省したかのように見えたのは一瞬だった。その不埒な両手は、ためらうことなく志貴の胸の二つの突起に伸びたのだ。
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