トゥモロウ・スピーチ

音羽夏生

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8章 ※

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「やっ、もう、そこっ、……ぁあん、いじる、っは、やめっ、……ゆび、ひぃんっ、……ぬいてぇ!」

 いつ終わるとも知れない責め苦に、制止の声が嗚咽で震え呂律が怪しくなっても、一洋から許しは与えられない。

「全部吐き出して、忘れてしまえ。国も義務も、家族も、何もかも、今は――」

 与えられ続ける愉悦の深さに思考が麻痺し、それを生み出す指の動きにしか頭が回らない。奥を探り、粘膜を擦り、快楽の源泉を突く指先の行方だけに、意識を持っていかれる。
 欲望だけに支配される、一匹の原始的な獣。人の形をした獣に堕ちた志貴の双眸は、快楽に染められ、虚ろになっていく。

(気持ち、いい……こんなの、駄目、なのに……)

 快楽に駆り立てる容赦のない鞭に打ち据えられ、心とは裏腹に肉体は容易く引きずられる。志貴の欲望は、一洋の望むままに引き出され、赤裸々に曝された。
 尻の中を弄られる感覚を、もう不快と言い繕うことはできない。指の腹で、その我慢ならない場所を押されると、涌泉のように鈍い疼きが下肢に広がる。堪え切れず、腰を突き上げて悶えてしまうのだ。

「あ、ぁんっ、ああぁ――…」

 砂を搾るように最後の白濁を吐き出した時には、蜜口がひりつき、快楽と苦痛の境界も曖昧になっていた。びく、びくっ、と壊れたゼンマイ仕掛けの人形のように、濡れた体が不規則に痙攣を続ける。
 すべての感覚が飽和した中で、志貴の意識は真っ白な闇に弾け飛んでいた。
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