トゥモロウ・スピーチ

音羽夏生

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8章 ※

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「……僕の、尻の穴から、……ああぁ、……イチ兄さんの指を、抜いてくださいっ、――ひぃっ!」

 こみ上げる涙をシーツに吸われながら、どうにかその卑猥な願いを口にした途端。
 突然、雷に打たれたように全身が痙攣した。舌先が縺れ、言葉があやうくなる。
 一洋の指先が、神経が剝き出しになっているような恐ろしい場所に触れたのだ。尻の中にそんな場所があることも知らなかった志貴は、枕を握り締めながら強すぎる快感をやり過ごそうとした。しかし無慈悲な指は探り当てた快楽の源泉に留まり、やさしく押しては執拗に可愛がる。

「うぁっ、アッ、あぁ、……や、そこ、触らないでっ!」
「随分ここが気に入ったようだな。欲しいだけ触ってやろうな」
「欲しくないッ! ……尻の、穴、……あぁんっ、て、言ったら、抜いてくれるって……はぁぁっ、いやぁ、お願い、抜いてぇ!」
「抜いてやる、――後でな」

 ぬくぬくと、指が出し入れされる。そのたびに中が練られ、柔らかくほどけていく。
 志貴は一洋の思うがままに乱れ、啼いた。腰を振って逃れようとすると、すっかり覚えられ支配された恐ろしい場所を自ら強く刺激することになり、身動きすらままならない。むしろ捧げるように腰を高く掲げ、中を弄る指のなめらかな動きを助けていた。そうするのが一番指の動きが乱れず、――一番気持ちいいのだと、体が自然に学んだのだ。

「やあぁっ、あ、あ、ああぁあっ……」

 一度も前に触れられることなく、志貴が一洋の寝間着に欲望を染み込ませる。後孔を延々と嬲られ、全身を巡る愉悦に蕩けた体が、吐精の衝撃に崩れ落ちた。

「よしよし、達ったな。――ここは気持ちいいだろう?」
「ぁんっ」

 ここ、と言いながら、また指先がその弱く脆いところを撫で擦る。すっかり覚えてしまった一洋の指の腹の感触に、反射的に志貴は甘い声で応えていた。

「もう二度と迷子にならないように、お呪いを教えてやる。よく覚えるんだぞ、いいな。――一つ、よく働くこと。二つ、きちんと食事をすること。三つ、よく眠ること」

 抜くことなく奥を探る指を小刻みに蠢かせながら、一洋が身を屈め、耳元で低く囁く。

「眠れない時は、快楽が薬になる。こうして気持ちいいところを触って、自分を解放してやるんだ」
「……そんな、いやらしい、こと……」
「俺に任せておけばいい。いやらしくて気持ちいいことは、全部俺がしてやる。お前は綺麗なまま、こうして――」
「あぁうっ」
「こうして素直に泣いていればいい……」

 休むことを許さない指が、再び中で大きく動き出す。もう片方の手が、たなごころに双玉を収めながら、陰茎を包み擦り上げる。
 痙攣のおさまらない体は、後ろの刺激だけで至った絶頂の衝撃に、まだ身の内を喰い荒らされている証拠だ。それなのに脆いところを中と外から同時に責められ、尻の穴から蜜口までを快楽で串刺しにされるような感覚に、志貴は抗うこともできず――ただ悶え泣いた。
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