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8章 ※
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志貴のすることを一洋が咎めることはなかったし、一洋の気に障ることを志貴がしたこともなかった。二人の間に流れるのは、あたたかい兄弟の情であり、志貴にとって一洋は憧憬の対象でもあった。互いに対し、声を荒げて言い合うような喧嘩もしたことがない。たった二つの年の差は、子供時代では二人を大きく隔て、一洋はいつも保護者の顔をして志貴を見守っていた。
多少のわがままなら苦笑して許してくれる――その余裕が気に入らないと思うほど、近いところにいる幼馴染。血の繋がりがないだけの、兄。
その関係を変えたいと思い、一人前の外交官として認められたいと願いながら、無意識の内に勝手な甘えを抱いていたのかもしれない。何をしようと、一洋は自分の味方であり、理解し、やりたいようにさせてくれると。
たとえそれが、健康を損ないかねない、寝食を犠牲にした仕事への取り組みであっても。
「ひっ! そこ、やめっ」
「――こうして二箇所を弄られるのが好きなんだな」
二つのふくらみを転がされながら、別の手が陰茎を包む。先端を剥き出しにされ、指の腹で蜜口を割るように擦られる。鋭い刺激に腰が跳ね、悲鳴が裏返ったが、一洋はわかったと頷くだけでその手を止めることはない。
堪え性のない蜜口は、すでに濡れていた。ぬめりを塗り広げるように、割れ目をぬるぬると弄られると、下肢だけではなく胸や腕にも痺れるような愉悦が広がり、縛められた腕から力が抜けてしまう。その上双玉を、ころころと玩具のように弄ばれているのだ。
かつて生じたことのない快感に、長らく乾いていた体が、この状況を悦び受け入れ始めている。その証拠に、吐息が時折甘くひしゃげ、上げる声の語尾が掠れてしまう。
「ふっ、は、あぁ……」
「玉を弄られるのが、そんなにいいか。後でまた可愛がってやろうな」
ふくらみが凝るまで弄り続けると、一洋はようやくそこから手を離し、両手で陰茎の先端と幹の部分を同時に擦り始めた。
「あ、あっ、やめて、そんなに、しないでっ」
迸る強い快感に、蜜口から透明な雫が泉のように溢れ、垂れ落ちる。敏感な皮膚の上を這うその感触にすら感じ、志貴の吐息が艶めかしく湿り気を帯びた。
「あ、あぅぁ……、くぅんっ」
誑かす指先に、切羽詰まった声が艶を含んでいく。
妻を亡くしてから、たまに自らを慰めることはあったが、こんなにいやらしい手つきとやり方ではなかった。生理現象を処理するだけの、淡々と機械的な行為に過ぎなかった。
欲望を鎮めるどころか煽り立てるような、絡みつく手指が志貴の欲望を唆す。無意識に腰をくねらせ、快感を逃そうとする姿は妖しく、与えられる刺激を嬉々として貪っているようにしか見えない。
一洋が、誘惑するように囁いた。
「ほら、出してしまえ」
「やあっ、手、手をっ、離して!」
限界の予感に、一洋の手を汚したくなくて叫ぶように懇願したが、聞き入れられることはない。逆に扱き上げる手の動きは激しくなり、志貴から体の制御を奪っていく。
多少のわがままなら苦笑して許してくれる――その余裕が気に入らないと思うほど、近いところにいる幼馴染。血の繋がりがないだけの、兄。
その関係を変えたいと思い、一人前の外交官として認められたいと願いながら、無意識の内に勝手な甘えを抱いていたのかもしれない。何をしようと、一洋は自分の味方であり、理解し、やりたいようにさせてくれると。
たとえそれが、健康を損ないかねない、寝食を犠牲にした仕事への取り組みであっても。
「ひっ! そこ、やめっ」
「――こうして二箇所を弄られるのが好きなんだな」
二つのふくらみを転がされながら、別の手が陰茎を包む。先端を剥き出しにされ、指の腹で蜜口を割るように擦られる。鋭い刺激に腰が跳ね、悲鳴が裏返ったが、一洋はわかったと頷くだけでその手を止めることはない。
堪え性のない蜜口は、すでに濡れていた。ぬめりを塗り広げるように、割れ目をぬるぬると弄られると、下肢だけではなく胸や腕にも痺れるような愉悦が広がり、縛められた腕から力が抜けてしまう。その上双玉を、ころころと玩具のように弄ばれているのだ。
かつて生じたことのない快感に、長らく乾いていた体が、この状況を悦び受け入れ始めている。その証拠に、吐息が時折甘くひしゃげ、上げる声の語尾が掠れてしまう。
「ふっ、は、あぁ……」
「玉を弄られるのが、そんなにいいか。後でまた可愛がってやろうな」
ふくらみが凝るまで弄り続けると、一洋はようやくそこから手を離し、両手で陰茎の先端と幹の部分を同時に擦り始めた。
「あ、あっ、やめて、そんなに、しないでっ」
迸る強い快感に、蜜口から透明な雫が泉のように溢れ、垂れ落ちる。敏感な皮膚の上を這うその感触にすら感じ、志貴の吐息が艶めかしく湿り気を帯びた。
「あ、あぅぁ……、くぅんっ」
誑かす指先に、切羽詰まった声が艶を含んでいく。
妻を亡くしてから、たまに自らを慰めることはあったが、こんなにいやらしい手つきとやり方ではなかった。生理現象を処理するだけの、淡々と機械的な行為に過ぎなかった。
欲望を鎮めるどころか煽り立てるような、絡みつく手指が志貴の欲望を唆す。無意識に腰をくねらせ、快感を逃そうとする姿は妖しく、与えられる刺激を嬉々として貪っているようにしか見えない。
一洋が、誘惑するように囁いた。
「ほら、出してしまえ」
「やあっ、手、手をっ、離して!」
限界の予感に、一洋の手を汚したくなくて叫ぶように懇願したが、聞き入れられることはない。逆に扱き上げる手の動きは激しくなり、志貴から体の制御を奪っていく。
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