86 / 237
8章 ※
2
しおりを挟む
長丁場の説教を覚悟し、戸惑いながらも観念して、ベッドの半分を明け渡す。主寝室のベッドはゆとりのあるダブルで、男二人が横たわってもはみ出すことはない。
休み中も仕事をすることを――今は寝食を惜しんででも仕事に打ち込みたいことを、どうしても理解してほしい。そのために、どう言えばこの過保護な幼馴染に納得してもらえるのか。
そのことばかりに頭を巡らせる志貴の体が、突然うつ伏せに転がされた。驚く間もなく寝間着の帯が抜かれ、後ろ手に縛められる。
「イチ兄さん、何を……あっ!」
再び体が返される。寝間着はしどけなくはだけられ、背を覆うだけだ。その下に縛られた両腕が敷き込まれ、自重でさらに動きを封じられた。
下着一枚の無様な姿を、布団をはいで脚の間に移動した一洋が見下ろしてくる。真上の照明の影になり、その表情は読めない。よく知る幼馴染のはずが、突然見知らぬ男のように見えて、志貴は鳥肌を立てた。肌を撫でる、冷たい空気のせいではない。
その無意識の拒絶を引き金に、一洋の手が志貴に伸びた。やさしい幼馴染は、欺かれた憤りを暴力で返すことはしなかった。
「嫌だ兄さん、離して!」
唯一身を覆っていた下着を剥ぎ取られ、露わになったものを握られた志貴は、悲鳴のように叫んだ。ただ握るだけではなく、大きな手のひらはゆっくりとそこを扱いてくる。
「やだ、やめて、離して!」
「眠れないのは、余計なことを考えてるからだ。だから、何も考えられないくらい気持ちよくしてやる」
「そんなっ、――あ、はぁっ」
「大人しくしていろ。もう二度と狸寝入りなんてしようと思わないように、――俺には嘘を吐けないように、体に教えてやる」
「あぁっ」
男の弱みを大きな手のひらにしっかりと包み込まれ、身動きが取れなくなる。痛みは与えられていないが、逆らえば容赦なく力を加えるという意志が込められた形に、握り込まれている。
「志貴はどうされるのが好きなんだ?」
「どう、って……あっ!」
「こうして玉を転がされるのは、好きか」
「やっ、そんなこと、しないで。怖いよ、兄さん……あぁっ」
嚢に収まった双玉をゆったりと揉まれ、息が弾んだ。一番脆いところを他人の手に支配される恐怖を訴えても、淫靡な弄りは止まらない。
一洋の本気を感じ取り、志貴はこくりと喉を鳴らした。二つ年上のやさしい幼馴染を――いつもいじめっ子から守ってくれた強くて大きな兄を、それほど怒らせてしまったのだ。
「……ごめん、ごめんなさい、イチ兄さん。もうしないから、許して……っ」
「志貴のすることなら、俺が何でも許すと思っていたのか?」
「兄さん……」
初めて聞く冷ややかな声音に、許しを乞う声すらも喉に詰まった。
生まれた時から、一洋の存在は傍らにあった。
休み中も仕事をすることを――今は寝食を惜しんででも仕事に打ち込みたいことを、どうしても理解してほしい。そのために、どう言えばこの過保護な幼馴染に納得してもらえるのか。
そのことばかりに頭を巡らせる志貴の体が、突然うつ伏せに転がされた。驚く間もなく寝間着の帯が抜かれ、後ろ手に縛められる。
「イチ兄さん、何を……あっ!」
再び体が返される。寝間着はしどけなくはだけられ、背を覆うだけだ。その下に縛られた両腕が敷き込まれ、自重でさらに動きを封じられた。
下着一枚の無様な姿を、布団をはいで脚の間に移動した一洋が見下ろしてくる。真上の照明の影になり、その表情は読めない。よく知る幼馴染のはずが、突然見知らぬ男のように見えて、志貴は鳥肌を立てた。肌を撫でる、冷たい空気のせいではない。
その無意識の拒絶を引き金に、一洋の手が志貴に伸びた。やさしい幼馴染は、欺かれた憤りを暴力で返すことはしなかった。
「嫌だ兄さん、離して!」
唯一身を覆っていた下着を剥ぎ取られ、露わになったものを握られた志貴は、悲鳴のように叫んだ。ただ握るだけではなく、大きな手のひらはゆっくりとそこを扱いてくる。
「やだ、やめて、離して!」
「眠れないのは、余計なことを考えてるからだ。だから、何も考えられないくらい気持ちよくしてやる」
「そんなっ、――あ、はぁっ」
「大人しくしていろ。もう二度と狸寝入りなんてしようと思わないように、――俺には嘘を吐けないように、体に教えてやる」
「あぁっ」
男の弱みを大きな手のひらにしっかりと包み込まれ、身動きが取れなくなる。痛みは与えられていないが、逆らえば容赦なく力を加えるという意志が込められた形に、握り込まれている。
「志貴はどうされるのが好きなんだ?」
「どう、って……あっ!」
「こうして玉を転がされるのは、好きか」
「やっ、そんなこと、しないで。怖いよ、兄さん……あぁっ」
嚢に収まった双玉をゆったりと揉まれ、息が弾んだ。一番脆いところを他人の手に支配される恐怖を訴えても、淫靡な弄りは止まらない。
一洋の本気を感じ取り、志貴はこくりと喉を鳴らした。二つ年上のやさしい幼馴染を――いつもいじめっ子から守ってくれた強くて大きな兄を、それほど怒らせてしまったのだ。
「……ごめん、ごめんなさい、イチ兄さん。もうしないから、許して……っ」
「志貴のすることなら、俺が何でも許すと思っていたのか?」
「兄さん……」
初めて聞く冷ややかな声音に、許しを乞う声すらも喉に詰まった。
生まれた時から、一洋の存在は傍らにあった。
31
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。



別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…


白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる