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第五十七話 幻影(6)
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「久しぶりに連絡してくれたのに、もう私に連絡しないでって。人形なんていらない、何も欲しくない。他に好きな人が出来たから、もう、あなたのことなんて全然好きじゃないし、顔も見たくない。そう言っちゃったんです。また懲りずに嘘付いて、こんなに好きなのに……」
「……うん」
「他に好きな人なんて居ないんです……。ただ、彼にもっと必要とされたくて、でもどうしたら良いのか分からなくて。ウザいですよね、こんな女。私も自分のこと大嫌いです。あの姉の方が増しだった、きっとそういうことなんです……」
「そんなことない!」
「それから連絡が返ってこないままの彼から、別れようって。俺にも他に好きな女性が出来たから、今まで負担かけちゃってごめん。力になれなくてごめん。そっちも俺なんか忘れて幸せになってな。そうさっき連絡が入ってて、嘘であって欲しい、嘘に決まっている。私も他に好きな人が出来たなんて嘘だから……。お願い……。そう祈るように探ったら、こんなツーショットが出てきちゃって……」
「……うん」
「今日は店長が、やっと再開出来る素敵な日なのに……。彼と喧嘩していた私は、大好きな店長と優しい金魚すくいの彼が、上手くいかなければ良いのにって。本当は幸せになって欲しいのに、どこかで失敗して欲しいって、そんな髪型にしちゃって……。最低ですよね私、店長も私のこと嫌いになりましたよね。こんなんだから、彼にも捨てられて当然ですよね」
「嫌いになんかならないよ!私こそ、何も気付けずに呑気に相談しちゃってごめんなさい……。あなたが、そんなに苦しんでいたなんて知らなくて……。髪型だって、作戦通りだったんだよ!こんな不良みたいな髪型のおかげで、私は頑張れたんだから!それに、彼と喧嘩している時に、誰かの惚気話なんて聞いたら、失敗して欲しいって思っちゃうのも仕方がないでしょ!私はあなたに助けられてばかりなんだから、嫌いになんかなる訳ないよ!」
「店長も、本当に優しいですよね……。何も知らないのに馬鹿みたい……。これは罰なんですよ、最低な私への」
どうして、彼女の寂しさに気付けなかったのだろう。私の言葉が彼女に届かずに溶けている、光が届かないトンネルの奥。その闇が、すぐそこまで来ているような気がした。
「最低なんかじゃない!」
「いいえ、最低ですよ私は。最初から知っていたんですよ。金魚すくいの彼の連絡先を」
「……うん」
「他に好きな人なんて居ないんです……。ただ、彼にもっと必要とされたくて、でもどうしたら良いのか分からなくて。ウザいですよね、こんな女。私も自分のこと大嫌いです。あの姉の方が増しだった、きっとそういうことなんです……」
「そんなことない!」
「それから連絡が返ってこないままの彼から、別れようって。俺にも他に好きな女性が出来たから、今まで負担かけちゃってごめん。力になれなくてごめん。そっちも俺なんか忘れて幸せになってな。そうさっき連絡が入ってて、嘘であって欲しい、嘘に決まっている。私も他に好きな人が出来たなんて嘘だから……。お願い……。そう祈るように探ったら、こんなツーショットが出てきちゃって……」
「……うん」
「今日は店長が、やっと再開出来る素敵な日なのに……。彼と喧嘩していた私は、大好きな店長と優しい金魚すくいの彼が、上手くいかなければ良いのにって。本当は幸せになって欲しいのに、どこかで失敗して欲しいって、そんな髪型にしちゃって……。最低ですよね私、店長も私のこと嫌いになりましたよね。こんなんだから、彼にも捨てられて当然ですよね」
「嫌いになんかならないよ!私こそ、何も気付けずに呑気に相談しちゃってごめんなさい……。あなたが、そんなに苦しんでいたなんて知らなくて……。髪型だって、作戦通りだったんだよ!こんな不良みたいな髪型のおかげで、私は頑張れたんだから!それに、彼と喧嘩している時に、誰かの惚気話なんて聞いたら、失敗して欲しいって思っちゃうのも仕方がないでしょ!私はあなたに助けられてばかりなんだから、嫌いになんかなる訳ないよ!」
「店長も、本当に優しいですよね……。何も知らないのに馬鹿みたい……。これは罰なんですよ、最低な私への」
どうして、彼女の寂しさに気付けなかったのだろう。私の言葉が彼女に届かずに溶けている、光が届かないトンネルの奥。その闇が、すぐそこまで来ているような気がした。
「最低なんかじゃない!」
「いいえ、最低ですよ私は。最初から知っていたんですよ。金魚すくいの彼の連絡先を」
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