三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃

紫月 由良

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終幕後01 ネイサン=ファーナムの決闘履歴

07. 婚約者の名誉 1

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「ネイサン=ファーナム! 婚約者の名誉をかけてお前に決闘を申し込む!!」

 突然の決闘申し込みに、ネイサンは少々面食らう。

「えっと、君の婚約者って誰だっけ? 僕は多分、顔も名前も知らないと思う」

 騎士の名前は判る。一年後輩のダニー=エドモンだ。王城勤務だが王太子宮配属のネイサンと違って、官吏たちの勤務する外に開かれた場所に配属されているため、滅多に会うことは無い。

 そもそも顔や所属などは知っているが、婚約者には会ったことがないどころか、存在すら知らなかった。

 それなのに婚約者の名誉をと言われてもピンとこないのは仕方がない。とはいえ申し込まれた決闘を受けないという選択肢は騎士に無い。

 釈然としないまま、二人の休暇が合う十日後に決闘が行われることになった。



「エドモンの婚約者のことは判った?」

 ネイサンはダニーと近い職場に配属されている同期のサイラスに尋ねる。

 入団直後、色々とやりあった二人だったが、サイラスが嫌がらせに対して謝罪をする形で二人は和解し、今では親しい間柄だ。

 決闘はともかく、理由もわからず婚約者の名誉をかけられても、困るというのがネイサンの本音だ。

 そこで友人の中でもダニーの配属先と近い場所に配属されているサイラスに声をかけたのだった。

「エドモンは半年前に婚約したらしい。相手はローラ=エドワーズ、伯爵令嬢らしいが知っているか?」

「ローラという女性は知らないけど、エドワーズ伯爵の方は名前だけなら知ってる。地方貴族の一人で、平均的な子爵家と同程度の規模の所領しかない小貴族だな。エドモンの実家も伯爵家だが、家格的には少しエドワーズ家の方が落ちるか」

「詳しいな、さすが侯爵家」

「貴族なら男爵以上の名前を知ってて当然だよ。流石に子供たちの名前までは知らない」

「だけどライリーは知らなかったぞ」

 父親が準男爵でしかないサイラスは貴族年鑑など見たことがなく、王宮でみかける有力貴族くらいしか名前を知らない。

「ライリーは勉強しなさ過ぎなだけ。最近は言葉遣いがようやく貴族らしくなっただけマシだけど、相変わらず貴族っぽくない」

 男爵家の末っ子ライリーはサイラスより爵位は上だが、もっと庶民的な言動だ。

 しかしネイサン同様、王族の警備に配属されて随分と洗練されてきてはいる。

「でも判らないな、なんで僕なんだろう? 社交に顔を出さないし、寮生活だから顔を合わす機会も全然ないんだけど」

「それは本人に聞くしかないよ」

 サイラスは俺も知らんとばかりに説明を終わらせた。
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