三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃

紫月 由良

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終幕後01 ネイサン=ファーナムの決闘履歴

04. 入団直後 4

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 夕方、移動した同期たちが寮に戻ってきたとき、疲労困憊し歩くのがやっとの生きた屍状態だった。

「お前、上官に泣きついたのかよ」

 ヘロヘロになりながらも、ネイサンの顔を見つけて恨み言をぶつけてくる。

「知らないよ」

「お前らが羨んだコネそのものだよ」

 ネイサンを庇うライリーは、いつもの調子で突き放す。

「お前らが死にそうな訓練、俺は入団前から同じくらい扱かれてたからな。あれが俺の普通なんだ」

 ライリーの言葉で周囲が一瞬、しんと静まり返る。

「大体な、自分の弟や息子が弱かったら恥ずかしいだろ、だから自分のために扱くんだよ! 一回くらいで恨み言なんか言うなよ、情けねえな」

 自分のため……ライリーのためではなく、自分のために息子や弟を扱く、そんな言葉が一気にライリーへの同情に変わった。

「俺、武器と水を持たされただけで山の中に放り出されたこともあるんだぜ。十歳のときに。自力で山を下りて来いって」

 わざわざ剣を持たされるのだ、遊び目的で行くような場所ではないのだろう。

「下山するまで三日もかかるし、獣はうようよいるし、夜は狼の群れに襲われたりして、あれは大変だった……」

 思い出しながらライリーは遠い目になる。

「食事なんか自分が狩った獲物しかないから、道中、兎を仕留めたり猪を仕留めたりして食つなぐんだけど、手早くやんないと他の獣が血の臭いに釣られてやって来るし、あれは大変だった。本当に大変過ぎて二度とごめんだ」

 大変だと二度言うライリーは、心底嫌そうだった。

「そんなにコネが羨ましいってんだったら、兄貴たちを紹介するから言ってくれよ」

 そう言えば、誰も何も言わなくなった。




「……大変だったんだな」

 ネイサンを始めとする友人たちはライリーを労る。

「もう思い出したくない。俺、末っ子だったから兄貴たち全員から可愛がられて……」

 可愛がるという言葉が文字通りでないことは、全員が判っていた。

「多分だけど、今日のあいつらは初めてだからすごく手加減されたと思う。それで愚痴を言うなんて甘ったれすぎだよ」

 その日、一番荒れたのは扱かれた連中ではなくライリーだった。
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