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「俺の方が、どうにかなりそうだって…」

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食後は、いつものようにカフェオレを飲みながらテレビ見て、それぞれ風呂入って、寝る準備して……今は布団に入ってるけど………


「…寝れねぇ」


ボソ、と呟く。


「ふふ…5時間も寝るからだよ~」


隣で布団に潜って笑ってた慶が、少し顔を出して俺を見る。

「爆睡したからな…今、眠いどころかスッキリしてるわ」

全く寝れそうにない。

「俺もまだ眠くないよ」
「そうなの?」
「うん、何か目が冴えてる」

緊張したし、料理もしたし、疲れてんじゃねぇの?

「侑利くんが起きてるから、寝たら勿体ないよぉ」

素で言ってんのか、それとも計算なのか……
何にしろ、言われて嫌なセリフじゃない。

いや、むしろ、今の俺にはただただ慶を可愛がるきっかけでしかない。

「何、可愛い事言ってんの」
「え?可愛かった?」

計算してんな…コイツ。
アハ、と緩く笑い、布団の中で俺の方を向いた。

「風邪…平気?」

2人に聞こえるだけのボリュームを下げた声。

「復活」
「早い~」
「だろ」

とん、と慶の頭が俺の胸にあたった。
シャンプーの匂いがほのかに香る。

その髪に顔をつける。

「慶、」
「くすぐったいよぉ」

そのまま喋ったらくすぐったかったのか、頭を一度小さく振って俺がら逃れると、今度は少し上へずれて目線を同じにする。

「何?」

伸びた髪がまた…慶の目の前にかかってる。

「髪…」
「ん…伸びた」
「切らないの?」
「…切ろうか?」
「俺が聞いてんだよ」
「あはは、そっか」

他愛もない会話…。
2人だけの、緩い時間。

「どんなのが好き?」
「…特にねぇけど…似合ってたら良いんじゃないの?」
「えー、それだけぇ?」
「何だよ、何て言えば良いんだよ」
「もっとさぁ、こんな感じ、とか、芸能人で言ったら誰、とか…」
「芸能人、知らねぇだろ」
「……うん」
「ははっ」

何か、可笑しくなって笑ってしまった。
知らねぇくせに言うなよ。

天然か。

「お前だったら良いよ、何でも」

言った後、少しして……慶の腕が俺に巻き付いて来た。


「侑利くんてさぁ…」

…お、何だ…


「何でそんなに……俺のツボなの」
「…あ?」


一瞬、理解出来なかったじゃねぇか。
何だよ、急に。

「ツボなの?」
「ツボだよ~」
「どの辺が?」

すごく興味がある。
聞いてみたい。


「もうね………全部」


くそ、可愛いじゃねぇか。


「奇遇だな……俺もだよ」


本心を言ったら……


「そういうとこだよ」


と、返された。

もうこれは、キスするしかない、って思ったら……先に、唇を塞がれた。


行き成り、深いやつ。
拒む理由が無い俺は、素直にそれに応える。


いつもは、そろそろ離れて行く慶の舌を、今日は離してやらない。
キスを続けたまま、布団の中で体勢を変えて慶を下に敷き、俺が上になる。

そろそろ、慶の呼吸が苦しくなって来た頃だろう。
緩く慶の下唇を噛みながら唇を離し、そのまま、今度は首筋を軽く噛んだ。


「…っ、あ、」


初めて聞く、慶の艶を持った声。

そのまま、首筋を下へ向かって吸い付くように食む。


「……ぁ、…あ、……っん」


そんな声聞いたら……悪いけど、俺はもうダメだ。


「慶…」
「…ん、」

何を言われるか、分かってるんだろ……
そうだよ……きっと、あってる。



「したい」



はっきりと、簡潔に。

こういうのは、はっきり伝えるに限るだろ…。


「………うん…」


OKが出た。


「でも…」


慶が少し困った顔してる。


「…俺………初めてだよ……」


……ちょっと………真っ白になっちまったじゃねぇか。

照れた顔して目を合わせない慶に、俺も何故かドキドキしてしまって異常に顔が熱い。


初めてって……どういう初めてだよ…。
男とすんのが、って事?

それとも…。


「初めてって、」
「…初めて」


もう一度言われた。


「…や、だから…どういう、初めてなの?」
「……どういう、って……だから、初めてなの。した事ない」


マジで、血管切れるかと思ったわ……
いや、何本か切れたかも……。


「女の子とは?」
「……ないよ……だって……そんな機会、なかったし…」


……ヤバい…
クラクラして来た…。


「全くの、初めてが…俺って事?」
「何回も聞かないでよぉ」


困ったように慶が言う。


「い…良いの?」
「……良いよ…だって好きなんだし……」


まぁ……そうだよな……。

そりゃ、そうだよ。



……完全に、慶の初めてを俺が貰う事になる。


ヤバい……ヤバいヤバい………
初めての女の子相手より緊張するんですけど…。


「…侑利くんは?」


不安そうに聞いて来る。


「…え………俺は……男とすんのは初めてだよ。…だから……上手く出来るか分かんねぇけど……………優しくする」


男に告白された事はけっこうあるけど……付き合ったのは女だけで、正直、男同士でやっても気持ち良いもんなのか疑問に思ってたクチだ。

でも……自分と同じ体って事は……気持ち良いとことか分かる訳だし………


「……途中で……やっぱり、男じゃダメだって思ったら……言ってね」


なんだかいじらしくて愛おしい。


「…恥ずかしいし……ちょっと怖いけど…………侑利くんとなら………どうなってもいい……」


かろうじて踏み止まってた小さな理性なんて一瞬にして吹き飛び………もう、俺の中の、慶の全部を俺の物にしたい衝動が……完全に暴れ出した。


「俺の方が、どうにかなりそうだって…」


俺はきっと今……ギラついてんだろうな…。


「そういうとこも全部好き」


慶が言い終わるかどうかのところまでしか待てなかった。

そのまま、噛み付くようにキスをする。
さっき、交わしたキスよりももっと、熱の篭ったキス。

舌を絡ませ合って、吸い上げて、互いの口内を探る。
時々、呼吸を求めて離れる度に、慶が甘美な声を漏らす。


「…っ、ぁ……ん………」


キスの合間で聞こえて来る声は……俺を煽り続けてる。

慶の服の裾に手をかけ少し捲り、脇腹から背中へと手を滑らせると、恥ずかしそうに身を捩って逃げようとする。
唇を横に移動させ、慶の耳の形を確かめるように舌を這わせると、

「…んっ、……ん、あぁ……」

と、その舌の動きに合わせて声を漏らす。
そのまま耳朶を咥え込み、緩く噛んだ。

「あっ、……や、…ぁ…」

耳は……感度が良さそうだ。

そろそろ服が邪魔になって来たな……
耳への愛撫を一旦止めて、慶が着てる家用のトレーナーを一気に脱がせる。

ルームライトだけの灯りで照らされてる慶の、そのキレイな鎖骨の陰影に目眩がしそうなくらい欲情した。
少し不安気に俺を見上げて来る慶の頭をそっと撫でて、その彫刻のように細くてキレイな鎖骨に舌を這わせる。


ほんとに、キレイな体…。


「っ、あっ…ぁ…」

鎖骨を舐め上げ、時々吸い付くようにキスを落とす度、慶の体が小刻みに跳ねる。

そのまま、少し下……胸の突起に舌を移し……舌先で強く押したり啄ばむように吸い上げると、慶はまた聞いた事のない声を上げる。

「…あっ、あっ、……や、……あぁ、……ぁ、ん……んん、……」

……可愛い。

俺のする事に…いちいち反応してこんな声出してんのかと思ったら、愛おしさが一気に押し寄せて来る。

煩わしい布団をベッドの端へ退けて、慶がよく見えるようにした。
恥ずかしそうにしてるけど、その少し上気した顔と俺を刺激して来る声は、もうどう見ても誘ってるようにしか見えねぇよ。

もう完璧、雄の顔してる俺を、慶がどう思ってんのかは分からないけど……もうブレーキはとっくにぶっ壊れてる……。

慶の上に跨ったまま、俺も服を脱いで雑にベッドの脇に投げた。

慶の両胸に交互に唇で愛撫を送りながら………さっきから、主張して来てる慶自身にそっとズボンの上から触れる。


「あっ、やだっ…」

慶の手が俺の手を掴む。

俺は、黙ってろとばかりに、慶の唇を自分のソレで塞ぎ口内を激しく冒す。
噛み付き吸い上げるようなキスをすると、だんだんと慶の力が抜けて来るのが分かる。

その間に、ズボンの上からだった手を下着の中へ忍ばせて、直に触れる。

「あぁ、んっ……や、あ……やだ、ぁ……あ、あ、……ん、んん……」

ここからは、俺だって未経験だ。
慶の上から一旦退いて、今度は下着とズボンに手をかける。

「…や、…」

慶の手もそれを掴んで、脱がされるのを拒んでる。

「…嫌なの?」

ふるふる、と首を振る。
どっちだよ…。

「……嫌じゃない…けど……」
「けど、何」
「…………恥ずかしい……すごく…」

……今更かよ…。

…まぁ、でも……そうか……
全裸をさらすんだもんな……

恥ずかしいと思って当然っちゃ、当然だ。


でも……


「恥ずかしいって思ってんのは慶だけでさぁ…………俺は、今、すげぇ欲情してんの」


少し泣きそうな顔で俺を見てる。


「俺は、慶が見たい。…………ダメ?」


一応伺いを立てる。



「……ダメじゃない……」



消え入りそうな小さな声で慶はそう言って、服を掴んでた手を緩めた。
俺は、慶のズボンとパンツを一気に剥ぎ取り、自分も全て脱いだ。

これでお互い裸。
慶だけが恥ずかしがる事はない。

俺自身も、妖艶な慶を見て、触りもしねぇのに随分硬く主張してて、そっちのが恥ずかしいじゃんって思ったけど……もう、そんなの気にしてらんねぇ。


慶の体をまじまじと見る。


線の細いその体は、本当に「キレイ」という表現がぴったりだって思うほど艶があって、女の人みたいに爪先まで滑らかで………

細くて長い足を折り曲げて、恥ずかしそうにしてる姿は……その辺の女よりも色気があって、艶めかしい。


「……真剣に見ないでよぉ…」


慶が顔を背けながら言う。
その声で、少し正気に戻った。

「…キレイだなって、思ってたんだよ」
「えー……ウソだぁ」
「嘘じゃねぇよ」

言いながら、もう一度、慶の上に被さり太腿を慶の足の間に割り入れ、慶自身に少し押し付けるようにする。

「…ん、…ぁ」

ピクリと体が跳ねる。
時々、噛み付く様にキスをしながら、今度は慶自身を俺の手で掴む。

「あっ、ん……っ、」

掴んだ手を上下に動かして、ゆっくりと扱く。
これは……自分が気持ち良いように慶にも施す。

「あっ、…あ、…っ、はぁ…あ、……んん……っ、はっ、…あぁ、ん……」

緩く閉じられた目尻から一筋涙が零れる。
その涙の筋が、ルームライトのオレンジに照らされてキラリと光った。

慶は、恍惚の表情で俺の手の動きに合わせて喘ぐ。
こんなエロい表情すんだね、お前。

慶の先端部分からとろりと透明な液が垂れて来る。
俺は、その先端をそっと舌で舐め上げ、慶自身を咥え込んだ。

「やっ、あぁっ、…んっ、やだ、……やだ、…侑利くんっ……あぁ、んっ……や、めて……」

やめてって……こんなに腰を震わせながら言われても、説得力ねぇよ。

俺は、そのまま聞こえないフリをして、慶自身を舌で愛撫する。
強く吸ったり、先端を突いたり、裏側を舐め上げたり……リズムをつけて上下に扱く。

先端からは絶え間なく独特の滑る液が出てて……慶自身がもう余裕ねぇなって分かる。

こんな事、もちろんした事ない。

される側だったから……どうかと思ってたけど………実際、自分と同じ体の相手に、女にする様にキスしたり愛撫したりして……でも、中心部に存在するソレに違和感を覚えながらも、咥え込んで扱き上げて欲情してる自分が居るんだから……人の体って単純だな、って思う。

「やぁ…だ……侑利くん……ダメ……ダメ…あっ、……も、ぅ……ダメ……あぁ、」

慶の息遣いが少し早くなり、ダメだと繰り返す。
きっと…もう、イキそうなんだろう。

口内から解放してやり、もう一度根元から掴むと、最後は速度を増して一気に絶頂へと導く。

「あぁっ、も、…ダメッ…ああぁっ!…やぁ、んっ!……あ、あぁ…」

一際、慶の声が大きくなり、腰が浮くほどに体を反らせた。
細い腰が痙攣したように震え、俺の手の中に熱い液体が放たれる。

慶がイッた。
俺の、愛撫で。

その事実が……俺をどうしようも無くケダモノに変える。


もう、待てない。

ぐったりとして、達した後の余韻に浸りたいかも知れねぇけど……


ごめんな、もう、俺も限界。


まだ、目を閉じて上がった呼吸を整えてる最中だけど……慶の足を俺の肩に担ぎ上げる。


「……ぁ、……ちょっ、と……侑利くんっ……やっ」


慶が俺の手の中に吐き出した白濁を、俺を受け入れるであろう慶の入り口へと塗り付ける。


「やだっ、……待って……あっ…んっ、」


拒否する言葉を言おうとしてたけど……慶の液で滑る入り口に俺の指がスルリと入り込んだ事で、その言葉はまた俺を煽る喘ぎに変わる。

白濁を塗り込んで行くようにして、入り口を指で掻き回す。
ゆるゆると……ぐりぐりと……

その度に、さっきまでとは違う……慶の、切羽詰まったような声が漏れて、もう俺は、バカになりそうだ…。

慶自身からは、今イッたばかりなのに、また新たに後ろへ刺激を与えてるせいか、先端から液がダラダラと零れてる。


こんなの、あんの……

エロすぎんだろ……


俺は、その液も掬い取って慶の中へと塗り付ける。
きっと痛いだろうから……少しでも、楽に出来るように……

もう、誰の何の液なのか分からない液体でぐちゃぐちゃで……されるがままで、もう抵抗するのも忘れて喘ぎまくってる慶が、エロくて可愛くて仕方なくて……


「慶……もう、俺も無理」


現状を伝える。


「……良いよ……っ、ん………侑利くん……もう……来て……」


呼ばれた…。

もう行こう。

我慢の限界。


ベッドサイドにそっと置いてた、天馬に渡されたゴムの袋を開ける。

装着すると、薄い素材のソレには、周りにオイルかジェルか分からないけどそういった類のものが、滑らかに挿入出来るようにと塗り付けられている。

俺自身はもう、酷い興奮状態………


「慶……行くよ」


そう言って、自身を慶の入り口へとあてがう。


「…うん……侑利くん………愛してる……」


薄目を開けて、涙を溜めた目でそんな事を言うから…………入れる前にこれ以上ないくらい優しくキスをした。



「俺だって愛してるよ」



それを合図に、肩に引っ掛けた慶を足をもう一度担ぎ上げ、折れそうに細い腰を掴んでゆっくり慶の中へ入って行く。

途端に、慶の体に力が入り、肩にかけてる足も俺の体を締め付けて来る。

「っ、はっ、…ぅう……あっ!…あぁぁっ、…やぁ、っ…あぁぁっ」

痛いんだって…伝わる。

硬く閉じられた目と、震える程の力でシーツを掴んでる手と、痛みに必死で耐えてる声……全てが、健気で可愛くて愛おしい。




何とか根元まで入ったけど……すごくキツい……


「慶…力、抜ける?」
「…むり…」


ゆるりと首を振る。

俺は上体を倒し、慶に深く口付ける。

「…っふ、…ぅ…ん……んん……」

俺が前かがみになったせいで、挿入してる角度が変わりまた甘い声を漏らす。
締め付けてた慶の入り口も、少し力が抜けた気がした。

キスをしながら、少しだけ動いてみる。

「…っ、……あっ、…」

顔を背けてキスを解き、声を上げる。

「……動いて良い?」

うん、うん、と首を縦に振る。
声にはならない。

少しずつ動く。
少し後ろに腰を引き、奥へと進む………それの繰り返し。

何度も繰り返すうちに………次第に慶もそれに合わせて腰を揺らす。


「慶……エロいね」


思わず言った。


「……バカ…」


緩く、力の入らない手で叩かれる。
怒んなよ……誉め言葉だよ?

繰り返す毎にほんの少しずつその行為に慣れて来てる感じ…。

動く速度と、突き入れる力を少しずつ増す。
ギリギリのところまで引き抜いて、一気に奥を突く。

「ああぁっ!…んんっ、…ッ、はぁ、っ…あっ、ああっ、」

慶の体はずっと震えっ放しで……奥を突く度に高い声が部屋に響く。
シーツは慶がぐしゃぐしゃに乱して、汗だか液だかなんだか分からないものでもうめちゃくちゃで……

何度目か、慶の奥を突いた時……


「ああぁっ!やっ、だ、め…」


慶の体が大きく跳ねて、細い首を仰け反らせ悲鳴に近い声で喘いだ。
腰はびくびくと震え、呼吸が乱れてる。


「…奥、気持ちいいの?」
「……き……気持ち…い、ぃ……」


絞り出したような喘ぎ声。
それなら、何度でも気持ち良くしてやる。

慶の腰を持ち上げて、奥の少し上……慶が善がって仕方ないポイントを何度も突き上げた。


「ああぁぁっ!…やっ、あぁっ!っ、んんっ!…侑利、…くん……あぁっ!…ん…だ、め…」


途中で何か言ったけど……もう、何を言ってるか分からない………


「…慶…もう、限界」
「…俺も……だめ…」


慶の言葉を待って、俺は慶の好きな場所を壊しそうな勢いで突き上げた。


「ああぁぁぁっ!侑利くんっ!あぁぁっ、んんっ…」
「っ、慶、……っ、く……」


自分の体が脈打って、押し出すように吐出したのが分かった。
同時に慶の足が俺の体を締め付けて、再び立ち上がろうとしてた慶自身はまた俺と同時にドロリとした液体を吐き出していた。








慶の体の横に腕を突っ張って呼吸を整える。
結合部はまだ…繋がったまま…。

俯いた俺の額を汗が流れてるのが分かった。


…熱い…。


慶は……ぐったりとしてて……少し眉間に皺を寄せたまま、肩で息をしてる。
恥ずかしい、なんて言ってたけど……エロさ全開じゃん。


「……慶」


まだ、整わない息のまま、慶を呼んでみた。
動かないから…。


「慶」


……動かない。

慶の中から、自身をゆっくり引き抜く。

「…ぁ……」

抜け落ちる瞬間、慶が小さく喘いだ。

天馬に貰ったゴムに、俺が放った液が重たそうに溜まっている。
ゴムを外して、慶の様子を伺う。

汗で額に前髪が貼り付いてて……まだ肩で息をしている。
息を吸う度に鎖骨がキレイに浮き出て、その上の部分に窪みを作る。

肩に引っ掛けていた足を下ろすと、曝け出してる自身に少し恥ずかしくなったのか、隠そうと身を捩るけど体が動かず全く隠せてない。

ってか、あんだけの事しといて、今更隠す必要あんの?って俺は思うんだけど…。

「慶…大丈夫か」

慶の顔を上から覗き込む。
やっと……薄く目を開けた。



「………声………うるさかったかな……」



そこかよっ。

周りの部屋への声漏れを心配してんのか…。


「…ふっ……あははっ」


何だか、慶らしいと言うか……天然と言うか……とにかく、初めて繋がった後、息を整えてからの第一声が予想外すぎて笑ってしまった。


「……何だよぉ……笑わないでよ」
「いや、笑うでしょ」

慶の横にドサッと倒れ込んで横になる。

「…だってさ………自分でも……あんな声出ると思わなかったし」

気まずそうに腕で顔を隠す。
肢体は曝け出したまま。

「隠すとこ間違ってんぞ」

意地悪く言ってやったら、ハッとしたようにぐしゃぐしゃのシーツを引っ張って体を隠す。

「…侑利くん……気持ち良かった?」

シーツから少しだけ顔を出して聞いて来る。
恥ずかしい割には、質問が大胆だな…。

「気持ち良かったよ。だから、イッたんじゃん」
「………………恥ずかし」

またシーツの中に引っ込んだ。



「侑利くん………男前すぎるよ」



シーツの中からの声に……素直にニヤけてしまう俺も大概だ…。
緩んだ顔の筋肉を戻しつつ…。



「お前は、キレイでエロすぎ」



被ってるシーツの端を少し上げて、そこから俺を見て来る。
猫か。

その隙間から細い腕が伸びて来て……俺の頬にそっと手の平をあてる。


「侑利くん…………ありがとう…」


何に対しての「ありがとう」なのかは分からない。

さっきまで高揚してた体の熱は引いて、慶の手の平はひんやりと冷たくなってて……細長い腕から伝わって来たその「ありがとう」に、何故か感動して慶をシーツごと抱きしめた。

「もうダメだわ…」
「え…何が…?」
「ハマりすぎ」

俺ってこんなに素直に何でも言うタイプだったかな……
女の人ともこんな感情で付き合った事ないのに……男の慶に対して、今までの誰より大事にしたいって思ってる。

慶がシーツの中で「ふふ」と笑う。

ふんわりしてて、俺の好きな声。
ずっと隣で聞いていたいって……素直にそう思える。






その後は、ベタベタな体を流しに、2人でシャワーに入ったけど……風呂場でまた欲情した俺が「無理」と嫌がる慶を宥め倒して2回目を決行。

その後、軽く説教されて、罰としてグチャグチャに荒れてるベッドメイキングを言い渡され……寝たのは、3時近く…。


何やってんだ…。
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