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7話 月曜の章 「激情の叫びと甘いベーゼは突然に」
ランス編 2
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ーーーホイールの合図で勝負は呆気なく終わってしまった。
ウルム(...またかよ。) ランス(...まただ。)
片方は相手が苦手なことに立ち向かっていない姿勢に苛つきを覚えて、もう片方はまたやってしまったという罪悪感というものに苛まれる。
2年女子
「それじゃあ今日はここまで、各自ストレッチなどやって解散!」
カスミ「ごめんねフライヤ、私のせいで...」
フライヤ
「いや、その後で私もフォローに回れていなかった。すまない。」
カスミ「じゃあ、これでお互い様だね。」
フライヤ「ああ!」
カスミとフライヤはお互いに絆が深まったような気持ちで相手を見つめた。
フライヤ「...小腹が空いたな。昼食はどうするか。」
カスミ
「たしか土日は毎週寮の食堂が開いてる筈だしそこで済まそうか?」
フライヤ「ああ、そうしよ...。」
「「てめぇッッッ!!」」
カスミ「ん?」
その瞬間バスケ部のスペースから怒号が響き渡ったーーー
ーーランスの目の前まで強く投げ落とされたボールはごろごろと転がり、やがてランスの左足で止まった。
ウルム「いい加減にしろお前!!」
物凄い怒号でランスに向かって突然叫びだす。
ふと、周囲は彼の方へと目を向けた。
ランス「...ウルム...?」
ウルム
「あの距離ならシュートできたはずだろーが!なんで逃げんだよ!いつも...、いつも...!!」
ランス「にっ、逃げてなんか...。」
ウルム
「その言い訳まがいが逆にむかつくんだよ!何を恐れてんだよ、ゴールの一体何を恐れてる?死ぬからか?不幸になるからか?ちげーだろ!?...ゴールは勝利への架け橋、高台なんだよ!」
ランス「........。」
そして、ウルムは少し落ち着いて、
ウルム 「わかってんだよ...、お前が皆のプライドのために、皆の事を考えて今までシュートを打たなかったことも、そしてそれは俺に対しても...。」
そんな彼のその表情は、とても申し訳ない気持ちで一杯だった。その気持ちは仲間に対しての懺悔でもあった。
ランス「!!」
ランスも少し驚きながらもそれを隠すようにしてウルムの方をずっと見続ける。
ウルム
「けどもうそんな事しなくて良い!確かに皆プライドがある、俺にも...。けどなそれ以上に皆お前の事も大事なんだよ!...俺もお前のことが...大事なんだ...。」
ランス「!!」全員「え!?」
一瞬素直に想いを伝えたウルムだったがすぐに顔を赤らめて、
ウルム(...て、俺ってばなにいってんだ?)
彼の性格ではあり得ないような発言に思わず全員、ギャップを感じて、それ以上に感心した者も多かった。バレー部はやや歓喜の声が響いてくる。
エイト
「..あ、まあまあ!!ウルム、一旦落ち着けよ、な?」
エイトを初めて先輩部員達もそんな二人の間に割って入り、和解を促した。
ランス「....ウルム、その..ありが...。」
その時、"もういい"というウルムはランスのところまで歩きだし、彼を横切って顔を見ずにこういった。
ウルム
「...次からは、気ぃ使うなよ。…唯一の親友、ライバルなんだから...。」
ランス「!.....ウルム。」
ランスにしか聞こえない声でそう言う不機嫌で冷たい声色の中には優しさと温かさが込もっているようにも聞こえた。
邪魔して悪いと皆に言いながら体育館を出ていく様子を見ずにランスはただただ、そんなウルムの気持ちに心から嬉しく思ったのだった。ーー
ウルム(...またかよ。) ランス(...まただ。)
片方は相手が苦手なことに立ち向かっていない姿勢に苛つきを覚えて、もう片方はまたやってしまったという罪悪感というものに苛まれる。
2年女子
「それじゃあ今日はここまで、各自ストレッチなどやって解散!」
カスミ「ごめんねフライヤ、私のせいで...」
フライヤ
「いや、その後で私もフォローに回れていなかった。すまない。」
カスミ「じゃあ、これでお互い様だね。」
フライヤ「ああ!」
カスミとフライヤはお互いに絆が深まったような気持ちで相手を見つめた。
フライヤ「...小腹が空いたな。昼食はどうするか。」
カスミ
「たしか土日は毎週寮の食堂が開いてる筈だしそこで済まそうか?」
フライヤ「ああ、そうしよ...。」
「「てめぇッッッ!!」」
カスミ「ん?」
その瞬間バスケ部のスペースから怒号が響き渡ったーーー
ーーランスの目の前まで強く投げ落とされたボールはごろごろと転がり、やがてランスの左足で止まった。
ウルム「いい加減にしろお前!!」
物凄い怒号でランスに向かって突然叫びだす。
ふと、周囲は彼の方へと目を向けた。
ランス「...ウルム...?」
ウルム
「あの距離ならシュートできたはずだろーが!なんで逃げんだよ!いつも...、いつも...!!」
ランス「にっ、逃げてなんか...。」
ウルム
「その言い訳まがいが逆にむかつくんだよ!何を恐れてんだよ、ゴールの一体何を恐れてる?死ぬからか?不幸になるからか?ちげーだろ!?...ゴールは勝利への架け橋、高台なんだよ!」
ランス「........。」
そして、ウルムは少し落ち着いて、
ウルム 「わかってんだよ...、お前が皆のプライドのために、皆の事を考えて今までシュートを打たなかったことも、そしてそれは俺に対しても...。」
そんな彼のその表情は、とても申し訳ない気持ちで一杯だった。その気持ちは仲間に対しての懺悔でもあった。
ランス「!!」
ランスも少し驚きながらもそれを隠すようにしてウルムの方をずっと見続ける。
ウルム
「けどもうそんな事しなくて良い!確かに皆プライドがある、俺にも...。けどなそれ以上に皆お前の事も大事なんだよ!...俺もお前のことが...大事なんだ...。」
ランス「!!」全員「え!?」
一瞬素直に想いを伝えたウルムだったがすぐに顔を赤らめて、
ウルム(...て、俺ってばなにいってんだ?)
彼の性格ではあり得ないような発言に思わず全員、ギャップを感じて、それ以上に感心した者も多かった。バレー部はやや歓喜の声が響いてくる。
エイト
「..あ、まあまあ!!ウルム、一旦落ち着けよ、な?」
エイトを初めて先輩部員達もそんな二人の間に割って入り、和解を促した。
ランス「....ウルム、その..ありが...。」
その時、"もういい"というウルムはランスのところまで歩きだし、彼を横切って顔を見ずにこういった。
ウルム
「...次からは、気ぃ使うなよ。…唯一の親友、ライバルなんだから...。」
ランス「!.....ウルム。」
ランスにしか聞こえない声でそう言う不機嫌で冷たい声色の中には優しさと温かさが込もっているようにも聞こえた。
邪魔して悪いと皆に言いながら体育館を出ていく様子を見ずにランスはただただ、そんなウルムの気持ちに心から嬉しく思ったのだった。ーー
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