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第三話「夢は現実の一部なのか?」
第三話「夢は現実の一部なのか?」1
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意識は妙にはっきりしていた。
だから、これがあの夢の続きだということもわかっていた。
てくてくと靄のかかる街を歩く。
足は登り坂をひたすら登り、拓けた場所に出た。
街の端にある、街を一周するために結ばれている自動車専用の大きな橋のたもとだ。橋のこちら側は駐車場と広場になっていて、本来なら昼間は多少人がいるはずだった。
リアルでは登り坂の先にある場所ではないが、地理的におかしくなっていても夢なのだから構うことはないだろう。
自動車は一つも見当たらない。
辺りは無人だった。
物産店と飲食店が入った小さな建物が見えるが、明かりが灯っている様子はない。
「また、会えた」
近くの、海が見えるように置かれたベンチに座っていたのは一条だ。
今日も彼女は藤色の着物に編み上げのブーツを履いている。彩花の記憶にある一条の格好がそれしかないのだろう、と彩花自身思っていた。
「祈、さん」
「祈って呼んでほしい」
優しい声で一条は自分の呼び名を改めるように言った。
「いの、り……」
「そう、嬉しい」
メガネをかけた祈が小首を傾げる。
「あの話の続きをしましょう」
祈が言う。
「……あの? 蝶の夢の?」
リアルコミュニケーションで話した内容だ。
「そう。もし、この世界が蝶の夢なら、もう一つの本当の現実がある。それは蝶のいる世界の話。それが、この現実では反対に夢と呼ばれているとしたら」
祈が続けた。
「私たちの見ている夢は、一つに統合されるのではないかしら」
「一つ、に?」
「そう、一つ」
祈は控えめに指を立てた。
「だけど、夢にだって種類がある」
やけに現実的なものから、荒唐無稽なものまで、夢は見るたびに世界が違って見える。それが一つだなんて到底思えない。
「そこなのよね」
あっさりと祈は認めた。
「もしかしたら、夢を見る蝶はたくさんいるのかもしれない。それぞれの世界があって、ときどき起きた蝶の世界に行くし、夢から夢に移動しているだけなのかもしれない」
祈は相変わらず微笑みながら言う。
「あるいは、一つの世界だけど、その世界はむちゃくちゃで、なんでもありなのかもしれない」
「難しくてわからない」
祈の言葉は一度で咀嚼するには難解だった。
「ねえ、ゲームを続けてくれる?」
「どう、して」
これは夢だ。
夢なんだ。
だから、私の意識が語りかけてきているに違いない。
「ゲームをしていれば、いずれわかるわ」
「え?」
「それに、あなたは私に会うことができる」
一方的に祈は話しかけてくる。
「私は、あなたに会いたいの」
わかった、とは彩花は言えなかった。
「じゃあ、どこにいるの?」
ふふ、と祈は笑う。
「大丈夫、そのうち、きっと」
だから、これがあの夢の続きだということもわかっていた。
てくてくと靄のかかる街を歩く。
足は登り坂をひたすら登り、拓けた場所に出た。
街の端にある、街を一周するために結ばれている自動車専用の大きな橋のたもとだ。橋のこちら側は駐車場と広場になっていて、本来なら昼間は多少人がいるはずだった。
リアルでは登り坂の先にある場所ではないが、地理的におかしくなっていても夢なのだから構うことはないだろう。
自動車は一つも見当たらない。
辺りは無人だった。
物産店と飲食店が入った小さな建物が見えるが、明かりが灯っている様子はない。
「また、会えた」
近くの、海が見えるように置かれたベンチに座っていたのは一条だ。
今日も彼女は藤色の着物に編み上げのブーツを履いている。彩花の記憶にある一条の格好がそれしかないのだろう、と彩花自身思っていた。
「祈、さん」
「祈って呼んでほしい」
優しい声で一条は自分の呼び名を改めるように言った。
「いの、り……」
「そう、嬉しい」
メガネをかけた祈が小首を傾げる。
「あの話の続きをしましょう」
祈が言う。
「……あの? 蝶の夢の?」
リアルコミュニケーションで話した内容だ。
「そう。もし、この世界が蝶の夢なら、もう一つの本当の現実がある。それは蝶のいる世界の話。それが、この現実では反対に夢と呼ばれているとしたら」
祈が続けた。
「私たちの見ている夢は、一つに統合されるのではないかしら」
「一つ、に?」
「そう、一つ」
祈は控えめに指を立てた。
「だけど、夢にだって種類がある」
やけに現実的なものから、荒唐無稽なものまで、夢は見るたびに世界が違って見える。それが一つだなんて到底思えない。
「そこなのよね」
あっさりと祈は認めた。
「もしかしたら、夢を見る蝶はたくさんいるのかもしれない。それぞれの世界があって、ときどき起きた蝶の世界に行くし、夢から夢に移動しているだけなのかもしれない」
祈は相変わらず微笑みながら言う。
「あるいは、一つの世界だけど、その世界はむちゃくちゃで、なんでもありなのかもしれない」
「難しくてわからない」
祈の言葉は一度で咀嚼するには難解だった。
「ねえ、ゲームを続けてくれる?」
「どう、して」
これは夢だ。
夢なんだ。
だから、私の意識が語りかけてきているに違いない。
「ゲームをしていれば、いずれわかるわ」
「え?」
「それに、あなたは私に会うことができる」
一方的に祈は話しかけてくる。
「私は、あなたに会いたいの」
わかった、とは彩花は言えなかった。
「じゃあ、どこにいるの?」
ふふ、と祈は笑う。
「大丈夫、そのうち、きっと」
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