トラとウマ─研修医の俺が拾ったのはアルビノ被虐待児でした─

西似居ハイロ

文字の大きさ
上 下
2 / 7
出会い編

しおりを挟む

俺、秋田虎治あきたとらじは24歳の研修医。

今日も研修を終え、帰路についていた。
…のだが

黒い短髪をガシガシとかいて今起こっていることを疲れた脳をフル回転して処理しようとした。

公園に小さい子供らしきものが転がっている。

「……………………どう見ても人間…だよな」

その髪は白く、肌の色も薄い。ただ顔面に青あざができている。

「……………アルビノ?」

そうとしか考えられない色をしていた。
生きているか不安になって顔に手をかざすと若干の鼻息を感じる。

「………………………………。」

嫌な予感がする。
長考の末俺はソイツを抱き上げた。
さっきは見えなかった方の腕に新しい傷跡がある。
予想通り身体は軽い。

「…チッ」

俺はなるべく早く家に帰るため足を早めた。




家に帰って俺はまた頭を抱えた。

「風呂入れてからベッドに寝かせたいけど、寝てるやつ、無理に風呂入れられねー…」

第1男女がわからない。
コイツが女でもしこのまま勝手に風呂に入れてしまえばコイツにとってトラウマもんだろ。

「どーすっかなあ…」

「う?」

良すぎるタイミングで腕の中で子どもが身じろいた。

「う?」

眠たそうに目を擦ったあと俺見上げるソイツ。
ソイツの目を見て俺は驚いた。
その目は紫がかった赤だった。
人間の目が赤く染まるのは相当珍しいのだ。

「おいちゃん…だれ?ここ…どこ?」

俺を見て1瞬ビクッとしたあと、子どもらしい高い声で腕の中のソイツは大きな目をパチクリさせながら言った。

「……おじちゃんって歳ではないと思うんだが…俺は秋田虎治。」
「とら…?とらさん!」

”虎”を知っていたようで目をキラキラさせている。

「いや、うん…まあ、あってはいる…か。お前、名前は?」
「?」
「…。まあいい。お前風呂入れるか?」
「?」
「ふーろ」

子どもを腕に抱きながら風呂場に連れていき、実物を見せる。

「ここで体を洗うんだ。できるか?」

こくんと頷いてはいたが、危なっかしいのでもし必要だったら俺も手伝うことにした。

「服ぬごーな。」

そっと降ろして頭をなでてやろうと手を伸ばすとソイツはビクッと体を揺らして条件反射なのか腕で頭をガードした。

ハッとして手を引っ込める。

「わ、わりぃ。ほら。何もしないから早くはいっちまえ」

目線の高さまでしゃがんでやって背中を軽く押してやるとノロノロと動き出した。

(…男だったのか)
下着を脱いだ姿をちらりと見やると男であることが確認できた。
(キレーな顔してるし髪長かったからわかんなかったな)

あまり量を出していないのか小さく聞こえるシャワーの音を聞きながら俺は背中をドアに預けた。




10分くらいして、ガチャリとドアが開いた。
タオルを出してやってそっと体を拭いてやる。
…ん?心なしかさっきより身体、冷たくないか??

(いやそれより…)

痣があちこちにあって痛々しかった。丸い傷跡も多く残っていた。

(…?やけど…???…。まさか…な。)

あまり傷がなかった下半身には服を着せ、リビングで手当をした。

「…痛くないか?」
「うん」
「…包帯キツくないか?」
「うん」

そんなぎこちない会話をしながら傷口を処理し、包帯等を丁寧にあてがっていく。(手当の間にもちょいちょい体をびくつかせていた。)
とは言っても傷というよりかは痣のほうが多く、あまりできることはなかったのだが。
脱衣所での1件のせいなのか、はたまたほぼ初対面だからなのか子供は若干警戒の色をにじませている。

…どーしたもんか。

ちらりと時計を見やると9時を越していた。

「…。今日はもう遅い。とりあえずココで寝てけ。布団用意するな。待ってろ。」

物置から布団を出して戻ると、子供はソファーの上で既に寝息を立てていた。

そっと布団に寝かせてやって掛け布団もしっかりかけてやる。

「……どーすっかなあ…」

俺の呟きは静かな部屋に溶けて消えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

家族になろうか

わこ
BL
金持ち若社長に可愛がられる少年の話。 かつて自サイトに載せていたお話です。 表紙画像はぱくたそ様(www.pakutaso.com)よりお借りしています。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

モテ男×盲目ボーイ

おもち
BL
クラスのカーストトップのイケメンモテ男×盲目ボーイのBL。 イケメンくんが盲目くんに猛アタックしてほしい。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

生まれ変わりは嫌われ者

青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。 「ケイラ…っ!!」 王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。 「グレン……。愛してる。」 「あぁ。俺も愛してるケイラ。」 壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。 ━━━━━━━━━━━━━━━ あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。 なのにー、 運命というのは時に残酷なものだ。 俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。 一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。 ★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!

処理中です...