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36 ヤマノカミ
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神が代替わりして、その替わった神ってのが異世界から来たとは言え元人間となったら「自分の方が相応しいじゃないか」と思うものが出てきても仕方ないのかもしれない。
なんかごめんよーという気持ちと、いやカミサマが決めた事だから仕方ないじゃんという気持ちがせめぎ合ってなんとなく落ち着かない気分でいた。
そんな気分でいたらカミサマから引き継いだ記憶の中に≪自称・神≫が出た事例があった。勿論、「〇〇の神」みたいな≪とても優れた人物≫という意味は除いてだ。
最初から神として存在していたカミサマの時代でもあったのか。
少し気持ちが軽くなった。
今、とある山で≪自称・神≫が発生しようとしている。
以前、神になろうとした女を始末した。あの時は人間に任せるつもりで成り行きを見ていたら犠牲者が結構出た。
その後、またこんな事が起こった時に犠牲が出る前に処分してしまいたくて、≪騙り神発見モニタ≫を作った。
今日、そのモニタの地図に、インターネット地図上に出るようなピンが出た。そういう仕様にしたのは自分だけどね。神の力を使ってね。
状況は≪数日以内に実行≫、対象は同じ地域に二つ。一つは大型でもう一つは人間くらいの大きさと表示が出ている。
もう一つのモニタに対象の映像を出す。電子音がして対象物の大きさがデジタル表示される。これも神の力を使った。決して私がプログラム組んだとかではない。そもそもプログラミングなんて出来ないし。
両方とも正面と右横左横と真後ろからの姿の画像と体長とか体高とか各部位のサイズのデータと、発生場所と日付を保存した。
モニタに映った大型は四つ足でずんぐりとした体形をして角が生えてる。例えて言うなら乳牛のような角が生えた熊。うん、魔獣だ。
体長は十メートルと出ている。十メートルってどのくらい?トラックかダンプくらいと思っていればいいかな?大きさ比較で煙草の箱置いても差があり過ぎて分からんしなあ。
もう一つはやっぱり人間だった。身長は背の高い女とも取れる高さ。フード付きのマントを着て前を閉じている。フードの所為で顔は見えないけど体格からして男だろう。
これって人間が魔獣を唆したか手懐けたか術をかけたかして「我はこの山の神であ~る~」とかやろうとしてるって事だ。「この山」がここの山とは限らないが。
なにしろこの山の周辺に点在している村はそれぞれ小さい。ここを拠点としても実入りが少ない。人間が関わっているのに益のない行動なんかある訳がない。
モニタを見ると人間の方が魔獣に向かって何かを話している。集音機能を付けていないから何を話しているのか分からない。呪文か、打ち合わせか。しかし何にせよ神の力で作ったモニタは完璧。魔獣を使って神を名乗ろうとしている事は確定している。
いつから始めるのか、何処で名乗るのか、名乗ってどうするのか、知りたいけれど判明するまで待っていたら犠牲が出てしまうだろう。犠牲を出さないために作ったのに、それでは本末転倒だ。
モニタに出た情報から考えるに、計画を考えていたら丁度いいぐあいに魔獣を見つけたからさっそく実行しようとしていると言ったところか。
考えるだけにとどめておけば良かったのに。空想の世界で終わらせておけば私にバレる事もなかったのに。
何か鬱屈したものがあったんだろうかと余計な事を考えそうになってやめる。
これは多分罪悪感だ。既に犯した罪ではなく、これから犯す予定の罪で罰するという行為に後ろめたさを感じているんだ。
確定しているのに、変わるかもしれないという思いがどうしても抜けないんだ。
私が元人間だから感じてるのか?
少し考えて自分のメンタルの為に保険をかける事にした。
件の人間と魔獣双方に呪いをかける。
邪心を持って己を神だと口にした時と、人間に殺意を持った時、どちらか一つでも当てはまった時に心臓が止まるようにする。
魔獣をペットにしたよ自慢をする程度なら生きられる。別の意味で早死にするかもしれないが。
後は野となれ山となれ。
そして結果はがっかり。
連中はあれからすぐに麓の村を襲おうとして私の呪いを発動させた。
たまたまそこに居た村人を踏み潰そうとしながら「わたしはこの山のか」まで口にしたところで両方とも心臓が止まった。
心臓が止まった時点で魔獣は塵となって消え、その上に乗っていた人間は地面に叩きつけられた。死んでたけど。
踏み潰されそうになっていた村人に怪我はなかったのが幸いだ。
村では当然大騒ぎになった。なにしろいきなり出た魔獣があっという間に消えて何か言っていた見知らぬ人間の死体が残ったから。あの人間が口に出した科白は近くにいた村人にすらよく聞こえていなかった。
村人達を混乱させて申し訳ない気持ちになった私は人間の死体をその場で粉砕してやった。村人達の目には魔獣と同じく塵になって消えたように見えただろうが、実際は分子か原子くらいまで細かくしてやった。吸い込んでも多分大丈夫だろう、知らんけど。
そして全村人が眠っている間に記憶操作で忘れさせた。あんなもん忘れた所で困る事はないからね。
なんかごめんよーという気持ちと、いやカミサマが決めた事だから仕方ないじゃんという気持ちがせめぎ合ってなんとなく落ち着かない気分でいた。
そんな気分でいたらカミサマから引き継いだ記憶の中に≪自称・神≫が出た事例があった。勿論、「〇〇の神」みたいな≪とても優れた人物≫という意味は除いてだ。
最初から神として存在していたカミサマの時代でもあったのか。
少し気持ちが軽くなった。
今、とある山で≪自称・神≫が発生しようとしている。
以前、神になろうとした女を始末した。あの時は人間に任せるつもりで成り行きを見ていたら犠牲者が結構出た。
その後、またこんな事が起こった時に犠牲が出る前に処分してしまいたくて、≪騙り神発見モニタ≫を作った。
今日、そのモニタの地図に、インターネット地図上に出るようなピンが出た。そういう仕様にしたのは自分だけどね。神の力を使ってね。
状況は≪数日以内に実行≫、対象は同じ地域に二つ。一つは大型でもう一つは人間くらいの大きさと表示が出ている。
もう一つのモニタに対象の映像を出す。電子音がして対象物の大きさがデジタル表示される。これも神の力を使った。決して私がプログラム組んだとかではない。そもそもプログラミングなんて出来ないし。
両方とも正面と右横左横と真後ろからの姿の画像と体長とか体高とか各部位のサイズのデータと、発生場所と日付を保存した。
モニタに映った大型は四つ足でずんぐりとした体形をして角が生えてる。例えて言うなら乳牛のような角が生えた熊。うん、魔獣だ。
体長は十メートルと出ている。十メートルってどのくらい?トラックかダンプくらいと思っていればいいかな?大きさ比較で煙草の箱置いても差があり過ぎて分からんしなあ。
もう一つはやっぱり人間だった。身長は背の高い女とも取れる高さ。フード付きのマントを着て前を閉じている。フードの所為で顔は見えないけど体格からして男だろう。
これって人間が魔獣を唆したか手懐けたか術をかけたかして「我はこの山の神であ~る~」とかやろうとしてるって事だ。「この山」がここの山とは限らないが。
なにしろこの山の周辺に点在している村はそれぞれ小さい。ここを拠点としても実入りが少ない。人間が関わっているのに益のない行動なんかある訳がない。
モニタを見ると人間の方が魔獣に向かって何かを話している。集音機能を付けていないから何を話しているのか分からない。呪文か、打ち合わせか。しかし何にせよ神の力で作ったモニタは完璧。魔獣を使って神を名乗ろうとしている事は確定している。
いつから始めるのか、何処で名乗るのか、名乗ってどうするのか、知りたいけれど判明するまで待っていたら犠牲が出てしまうだろう。犠牲を出さないために作ったのに、それでは本末転倒だ。
モニタに出た情報から考えるに、計画を考えていたら丁度いいぐあいに魔獣を見つけたからさっそく実行しようとしていると言ったところか。
考えるだけにとどめておけば良かったのに。空想の世界で終わらせておけば私にバレる事もなかったのに。
何か鬱屈したものがあったんだろうかと余計な事を考えそうになってやめる。
これは多分罪悪感だ。既に犯した罪ではなく、これから犯す予定の罪で罰するという行為に後ろめたさを感じているんだ。
確定しているのに、変わるかもしれないという思いがどうしても抜けないんだ。
私が元人間だから感じてるのか?
少し考えて自分のメンタルの為に保険をかける事にした。
件の人間と魔獣双方に呪いをかける。
邪心を持って己を神だと口にした時と、人間に殺意を持った時、どちらか一つでも当てはまった時に心臓が止まるようにする。
魔獣をペットにしたよ自慢をする程度なら生きられる。別の意味で早死にするかもしれないが。
後は野となれ山となれ。
そして結果はがっかり。
連中はあれからすぐに麓の村を襲おうとして私の呪いを発動させた。
たまたまそこに居た村人を踏み潰そうとしながら「わたしはこの山のか」まで口にしたところで両方とも心臓が止まった。
心臓が止まった時点で魔獣は塵となって消え、その上に乗っていた人間は地面に叩きつけられた。死んでたけど。
踏み潰されそうになっていた村人に怪我はなかったのが幸いだ。
村では当然大騒ぎになった。なにしろいきなり出た魔獣があっという間に消えて何か言っていた見知らぬ人間の死体が残ったから。あの人間が口に出した科白は近くにいた村人にすらよく聞こえていなかった。
村人達を混乱させて申し訳ない気持ちになった私は人間の死体をその場で粉砕してやった。村人達の目には魔獣と同じく塵になって消えたように見えただろうが、実際は分子か原子くらいまで細かくしてやった。吸い込んでも多分大丈夫だろう、知らんけど。
そして全村人が眠っている間に記憶操作で忘れさせた。あんなもん忘れた所で困る事はないからね。
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