犬の散歩中に異世界召喚されました

おばあ

文字の大きさ
上 下
30 / 40

30 噂話はシルフィードに乗って

しおりを挟む
 風の噂で異世界から聖女を呼べなくなって困ってるんだって聞いた。なんで?

 わざわざ異世界から呼ばなくたっていいじゃない。そんな考えだからカミサマに見捨てられて、私に激怒されるんだよ。


 この世界に居る魔力量多い者から探せばいいじゃん?分業制でもいいじゃん。聖女なんて肩書廃止して神官が担ったっていいじゃん。
 なんで女の子にだけそんな役目やらせてるの?聖人はどうした。男の子だって癒しの技とか結界の技とか光の魔法とか使えるのがいるでしょうが。知ってるよ、私。
 まさか“聖女”ってこの世界の王家の嫁配給システムか?余所から若い女の子攫って嫁にするなんて野蛮もいいところだ。滅ぼすぞ。

 そんな事をぶつくさ言ってたら、どこからか漏れたらしい。

 記憶を辿ったら《人間からの訴えが聞こえる部屋》だった。確かに、この部屋でぶつくさ言ってた。下界と関係が近いのはここだから。
 それにしてもここ、受信専用じゃなかったのか。送受信スイッチみたいなのを探したら半球に近い形の石がその役目をしていた。そういえばこの石に向かって言ってたわ。丁度いい相手だったし。

 なんで漬物石がこんな所に?と思っていたんだよね。懐かしいとも思った。今の漬物石って持ち手がついてる形で売ってるけど、昔は河原から丁度いい大きさと形の石を拾ってきてた。祖父母の家にも実家にもあった。
 そんな昔話は置いといて。

 ひょっとしたらこの石はご神体かもしれないと思って触らないでいたんだ。そんな訳ないと今なら思う。カミサマ本体がちゃんといるんだし。なので遠慮なく送信機能は潰した。

 各部屋に防音機能をつけてるからベイビーのおねだりわんわんは聞こえなかったはず。私がベイビーに話しかけてる妙に高い声も聞こえなかったはず。あれはあまり赤の他人に聞かれたくない。


 私の独り言を聞いてしまった世界中の神殿は焦ったらしい。正式な神託ではなくてぶつぶつ言ってる声だったので、対外的には平静を装ってたそうだけど。
 聖女の役割は男女関係なく分担制になったそうだ。最初からそうしてろ。
 そして各神殿では魔術書から異世界召喚の記述を黒塗りで消したそうだ。民間所有の魔術書には載ってないからそこまでの騒ぎにはならなかったようだ。
 これも風の噂で知った後日談だ。

 黒塗りってインクが違うと透けて見えるよね。なんて意地の悪い事を思った。文房具が色々あった向こうの世界と違うから大丈夫なんだろう。


 私に噂話を教えてくれたのは風の精霊達。彼女達は自力で神域までこれるんだね。神域でぼけら~と暮らしている私を心配した精霊王の命令だって。
 のんびり暮らしているのを心配されるとは思わなかっ……ん?働けってことか?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

陽だまりキッチン、ときどき無双~クラス転移したけどかわいい幼馴染とのんびり異世界を観光します~

一色孝太郎
ファンタジー
 料理人を目指しながらも、そこそこの進学校に通う高校二年生の少年味澤祥太は、ある日突然、神を名乗る謎の発光体によってクラスごと異世界へと転移させられてしまう。  その異世界は、まるで聖女モノのネット小説のように聖女が結界を張って町を守り、逆ハーレムが当然とされる男には厳しい世界だった。  日本に帰るには、神を名乗る謎の発光体によって課された試練を乗り越えなければならない。  祥太は転移の際に神から与えられた能力を駆使し、幼馴染の少女と共にのんびり異世界を観光しながら、クラスメイトたちを探す旅をすることとなる。  はたして祥太たちは生き残ることができるのだろうか? そして無事に日本に帰ることはできるのだろうか? ※2024/03/02 18:00 HOTランキング第5位を獲得! お読みいただきありがとうございます! ※本作品は現在、他サイトでも公開しております

7人のメイド物語

モモん
ファンタジー
理不尽な人生と不自由さ…… そんな物語を描いてみたいなと思います。 そこに、スーパーメイドが絡んで……ドタバタ喜劇になるかもしれません。

玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす
ファンタジー
 病院で病死したはずの月島玲子二十五歳大学研究職。目を覚ますと、そこに広がるは広大な森林原野、後ろに控えるは赤いドラゴン(ニヤニヤ)、そんな自分は十歳の体に(材料が足りませんでした?!)。  時は、自分が死んでからなんと三千万年。舞台は太陽系から離れて二百二十五光年の一惑星。新しく作られた超科学なミラクルボディーに生前の記憶を再生され、地球で言うところの中世後半くらいの王国で生きていくことになりました。  べつに、言ってはいけないこと、やってはいけないことは決まっていません。ドラゴンからは、好きに生きて良いよとお墨付き。実現するのは、はたは理想の社会かデストピアか?。  月島玲子、自重はしません!。…とは思いつつ、小市民な私では、そんな世界でも暮らしていく内に周囲にいろいろ絆されていくわけで。スーパー玲子の明日はどっちだ? カクヨムにて一週間ほど先行投稿しています。 書き溜めは100話越えてます…

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

処理中です...