犬の散歩中に異世界召喚されました

おばあ

文字の大きさ
上 下
21 / 40

21 お返ししなきゃ

しおりを挟む
 先日魔王くんと精霊王からバケモノ退治のお祝い?をもらった。
 
 魔王くんからは開店祝いのような大きな花輪。いきなりどーんと現れた。
 【祝・圧勝】と日本語で書かれたメッセージボードが真ん中にはめ込まれている。誰からかなんて書かれてなくても、これだけで送り主が判るわ。
 この日本語、魔王くんの手書きだよね……。

 きっと脳みその構造が違うんだ。
 だって向こうの世界の人間で前世を覚えてる人なんていないよ?オカルト話の中には出てきてたけどさ。そういうのは置いといて。
 三百年以上も前なのに覚えてるって、三十年前のことすらあやふやになってきた私にしたらすごいと言うしかない。

 お花も綺麗。枯れないように永久保存にしましょう。あと、記念撮影。
 人間バージョンと神バージョンで撮る。カメラを浮かばせればいいから自撮り棒なくても大丈夫。花輪も私もバランスよく、丁度いい距離で撮れたわ。


 精霊王がくれたのは蜂蜜。行儀が悪いのは承知で瓶から直接スプーンですくって舐めてみた。
 ――――おいしい。
 なにこれ、すっごい美味しいんですけど。甘すぎて喉が痛くなる事がない。
 え~、どうしよう。味付けに使うのはもったいないわ。

 そうだ!一日一舐めにしよう。


 ここで私の中の社会人としての常識が騒いできた。
「お礼をしなきゃだめじゃない?」
 でも、今の私は社会人じゃないし……?
 頭の中のカミサマからもらった知識を探って、こういう場合の対処を調べよう。

 …………。

 ない。神としては貢物はそのままもらっておくものなんだそうな。でも、今回のは友達としてくれてるよねえ。魔王くんのは特に。

 精霊王にお返しするのはベイビーそっくりなぬいぐるみにした。
 手触りに拘った私渾身の一品。ベイビーの毛をそっくり再現したのだ。ブラッシングしても毛は抜けない加工をしたからね。
 来るたびにベイビーを撫でてた彼なら気に入ってくれる筈。

 そして魔王くんには花輪と一緒に撮った自撮り写真にした。
 PCとプリンタは動くようにしてる。写真用紙に印刷して、インクにない耐水性と色あせ加工の術をかけた。


――後日――


 連絡鳥と呼ばれる、神から魔王への遣いが運んできた封筒を受け取ると、魔王はすぐに私室に籠りいそいそと封筒を開けた。
「ぶわっははははははは」
 魔王の私室からものすごい笑い声が聞こえてきた。
 封筒の中に有ったのは一枚の写真。この世界にはないものだ。
 先日魔王が神へと送った花輪の横でぼんやりとした白い人影がピースサインをして映っていた。
「ちょっ、これ、心霊写真。くっくっくっく」


 ある時から精霊王の膝の上に大きな毛玉が乗るようになった。
 ぬいぐるみと呼ばれるそれを撫でている精霊王の顔は満足そうで、彼に仕える精霊達はいつのまにそのような物が王の許に来たのかは知らないがあるじが喜んでいるならそれで良いと、誰からの献上品なのか訊ねることもしなかったし、一緒に寝ることを咎めもしなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

食堂の大聖女様〜転生大聖女は実家の食堂を手伝ってただけなのに、なぜか常連客たちが鬼神のような集団になってるんですが?〜

にゃん小春
ファンタジー
魔獣の影響で陸の孤島と化した村に住む少女、ティリスティアーナ・フリューネス。父は左遷された錬金術師で村の治療薬を作り、母は唯一の食堂を営んでいた。代わり映えのしない毎日だが、いずれこの寒村は終わりを迎えるだろう。そんな危機的状況の中、十五歳になったばかりのティリスティアーナはある不思議な夢を見る。それは、前世の記憶とも思える大聖女の処刑の場面だった。夢を見た後、村に奇跡的な現象が起き始める。ティリスティアーナが作る料理を食べた村の老人たちは若返り、強靭な肉体を取り戻していたのだ。 そして、鬼神のごとく強くなってしまった村人たちは狩られるものから狩るものへと代わり危機的状況を脱して行くことに!? 滅びかけた村は復活の兆しを見せ、ティリスティアーナも自らの正体を少しずつ思い出していく。 しかし、村で始まった異変はやがて自称常識人である今世は静かに暮らしたいと宣うティリスティアーナによって世界全体を巻き込む大きな波となって広がっていくのであった。 2025/1/25(土)HOTランキング1位ありがとうございます!

処理中です...