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12 ぶらり異世界散歩旅 獣人国編
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ベイビーのお散歩は神域にドッグラン作ってしばらくそこで済ませていた。だけど、そろそろ異世界デビューしてもいいんじゃないかと思ったので、私の髪と目の色を変えて他の外見はそのままに下界に降りた。服装はこの世界の一般庶民仕様だ。
デビューの地は獣人国。私が来たかったから。
興味あったの、獣人ってどんな風なのか。人間に立ち耳か垂れ耳と尻尾がついたタイプなのか、動物が二足歩行してる感じなのか。
動物が二足歩行タイプならリアルトムとジェリーだよ。見たい。
知ろうと思えば頭に浮かぶよ?神だから。でも実際にこの目で見たかったんだ。
降り立った場所は首都からかなり離れた鄙びた所。失敗した、誰もいないかも。
道の向こう石垣が見える。頭の中の地図と照らし合わせたら国境に近い。それなら人間もいるかもしれない。悪目立ちしなくていいかも。
「ベイビー、あっちに行くよ」
石垣に向かって歩き出す。道の両側は森?民家とかなさそう。
ベイビーにはハーネスとリードを着けている。好奇心旺盛な子だから「あれなにー」って勝手にどこか行かれたら大変だ。自分にもベイビーにも結界を張っているとはいえ、ここら辺向こうの世界での習慣が抜けない。
しばらく歩いていたら進行方向から土埃が見えてきた。ベイビーの耳と耳の間が狭くなる。ちょっと尻尾も下がっているから警戒してるな。
「ベイビー、抱っこだよ」と言って抱き上げる。何が来るか分からないから安全のため。何かあれば結界が弾くけれど、用心するに越したことはない。
真正面から来てるみたいなので道の反対端に移動してゆっくり歩く。
「ぉぉぉぉぉ」なんか叫んでいるように聞こえる。雄叫び?こういうのは知らん顔してやり過ごすに限る。絶対に目を合わせないようまっすぐ前を見たりベイビーの様子も見る。近づいてきた。
あっという間に目の前まで来て見事なブレーキっぷりを見せてくれたのは、シベリアンハスキーだった。この世界にハスキーって在たっけ?記憶にあるハスキーより大きい気がする。でも尻尾がまっすぐだからアラスカンマラミュートじゃないはず。
犬種がどうあれ息切れしてるので「こんにちは。水飲むかい?」と、右手をグーにして匂いを嗅がすように鼻先に出して声をかける。ベイビーを左腕だけで抱いて体の右側を少し前に出し、体だけ少し斜めな体勢になりベイビーを庇う。ベイビーは警戒心を露わにして唸っている。
ここで相手に怯えを見せると襲ってくる可能性があるから「私は君の事怖がってないよー」というふりをして虚勢を張るのだ。
匂いを嗅いでいるのかいないのか、よく分からないので右手を下げて神通力で器に入った水を出した。
その途端、目の前の大型犬が人間に化けた。頭の上に立ち耳と後ろに尻尾が見え隠れしてるけど。これが獣人か。トムとジェリータイプじゃなかった。
なんかでっかい。昔見た立ち上がったヒグマのはく製くらいあるか?ないか?
服装は制服っぽい。警備とかか。
「見つけたぞ!我が番!」挨拶もなしになんだこいつ。
「あぁ?うちの子は嫁にやらん!!」何が番だ。
言い返しながら上半身をひねってこいつからベイビーが見えないように庇う。水は隠した。ついでに結界を強化した。
番って繁殖期に子孫繁栄の為に組むオスとメスのことでしょ。だいたいは鳥がそうなるはず。うちのベイビーは犬だし避妊手術済みだ。発情期はないからオスを誘う匂いを発しない。そもそも何言ってんだこいつ、と思って臨戦態勢に入ろうかと構えていたらハス男が「そっちじゃない!」と言った。そっちってどっちだ。
「お前だ!お前が俺の番だ!」
「そんな訳あるか!指さすな!無礼者!!」
思わず怒鳴り返す。いかん、大人げないと思ったがここではっきりしておかないと後々面倒な事になる気がした。
私、元異世界人で現在は神ですよ?対象外だろう?今ここでそれを言っていいか悪いか、ぐるぐる考える。
つがいたい相手がいるなら、求愛のダンスするとか、素敵な巣を作って審査してもらうとか、ライバルと戦って勝つとか順番があるんじゃないのか?
「間違いない!匂いがする」
さっき右手の匂いを嗅がせたからそれか。犬の嗅覚は疑いようがないしな。
だがしかし「私の匂いがお前の番と言うのはお前の主張でしかない。客観的で科学的に分析した証拠資料を提示しろ!」犬の嗅覚が鋭い件と、私の匂いが番の匂いというのは別の問題だ。
「なんだよ、科学的とか分析とかって」
おや、しょぼーんとしてるよ。やっぱり、この世界の者には酷だったか。殆どを魔法で何とかしちゃってるもんなあ。その魔法の中に成分分析できるものってないのかね。
いや、待て。分析魔法あるじゃないか。神の知識の中にあったぞ。
「俺、難しい事は解んねえよ」
そっちの方か。
「番うんたら言うのなら選ぶ権利はメス側にある。私はお前を選ばない。去れ!」
ほんのちょっぴりの鳥類知識を振りかざしてダメ押ししてやる。
しょぼーんとされても同情心なんぞ湧かない。散歩の邪魔だ。
「去れって、向こうへ行くんだろ?」とハス男が石垣の方を指す。「俺は向こうから来たんだ。行く方向一緒だな」立ち直りが早い。
面倒くさい、ここで帰っちゃおうかなーと一瞬思ったが、こいつの上司に苦情を申し入れようかと思い直す。しかし道中一緒は鬱陶しい。
逡巡してると石垣の方から数人がこちらに向かって走ってくるのが見えた。
「班長ー!勝手に持ち場を離れないでくださいよー。」
「悪いな!番の匂いがしたんだ」まだ言ってる。
「違うと言っ「またっすかぁ?お嬢さんすみませんね」
言葉使いからして部下その一が苦情を言い、部下その二が私に謝る。
またって言った?発情期のたびに番認定で持ち場を勝手に離れてるのか?よく班長までなれたもんだ。職場放棄だろ。職場の規定違反じゃないのか?そもそも規定あるのか?
「この人番認識機能が壊れてるらしくて、それっぽい匂いした女性がいると必ず番だって言い張るんですよ」
思考が明後日の方向へ行きそうになってたら部下その二が説明を始めた。それっぽい匂いした女性に必ずって、対象になった女性には迷惑な話だな。
「腕は立つので戦闘では手柄が多いんですけど、平和な時は番問題で職場放棄が多いもんで手柄の割に出世しないって有名なんですよ」
そんな紹介されてもね、だからどうした。
「そうですか。皆さん大変ですね。ではその人を持ち場に連れて行ってください。絡まれて迷惑なんです」
「いやあ、大変すみませんでした」「「「すみませんでした」」」
ハス男は後から来た同僚全員に持ち上げられながらも騒いでいたが無視されていた。皆、慣れてるな。
「お疲れさまでした」
私はその場に留まって手を振って皆とお別れ。ハス男は皆に担がれて猿轡まで咬まされていた。
番認識機能が壊れてるって本当ならかわいそうな話だけど、それは自分で医者にかかるなりして治すなり何なりすればいい話。
立てた手柄の割に職場放棄が多くて出世しないのは、本人と上司が考えればいい話。それでよいと職場が認めてるならそれも良し。
それっぽい匂いがする女性を番と言い張るというのが気になるけど、いざとなったら腐るから大丈夫。
うん、私が気にする事ではない。
そう結論づけた私はもう帰ることにした。この辺には二度と来ないでおこうと決心して。忘れないよう帰ったら地図にバツ印つけなくちゃ。
「ちゅかれたねー、ベイビー?」
神域に帰ってきて地図にバツ印と理由を書き込みながら、ハス男はハスキー獣人じゃなくて狼獣人なんじゃないかと気がついた。でも別にどっちでもいいや。
デビューの地は獣人国。私が来たかったから。
興味あったの、獣人ってどんな風なのか。人間に立ち耳か垂れ耳と尻尾がついたタイプなのか、動物が二足歩行してる感じなのか。
動物が二足歩行タイプならリアルトムとジェリーだよ。見たい。
知ろうと思えば頭に浮かぶよ?神だから。でも実際にこの目で見たかったんだ。
降り立った場所は首都からかなり離れた鄙びた所。失敗した、誰もいないかも。
道の向こう石垣が見える。頭の中の地図と照らし合わせたら国境に近い。それなら人間もいるかもしれない。悪目立ちしなくていいかも。
「ベイビー、あっちに行くよ」
石垣に向かって歩き出す。道の両側は森?民家とかなさそう。
ベイビーにはハーネスとリードを着けている。好奇心旺盛な子だから「あれなにー」って勝手にどこか行かれたら大変だ。自分にもベイビーにも結界を張っているとはいえ、ここら辺向こうの世界での習慣が抜けない。
しばらく歩いていたら進行方向から土埃が見えてきた。ベイビーの耳と耳の間が狭くなる。ちょっと尻尾も下がっているから警戒してるな。
「ベイビー、抱っこだよ」と言って抱き上げる。何が来るか分からないから安全のため。何かあれば結界が弾くけれど、用心するに越したことはない。
真正面から来てるみたいなので道の反対端に移動してゆっくり歩く。
「ぉぉぉぉぉ」なんか叫んでいるように聞こえる。雄叫び?こういうのは知らん顔してやり過ごすに限る。絶対に目を合わせないようまっすぐ前を見たりベイビーの様子も見る。近づいてきた。
あっという間に目の前まで来て見事なブレーキっぷりを見せてくれたのは、シベリアンハスキーだった。この世界にハスキーって在たっけ?記憶にあるハスキーより大きい気がする。でも尻尾がまっすぐだからアラスカンマラミュートじゃないはず。
犬種がどうあれ息切れしてるので「こんにちは。水飲むかい?」と、右手をグーにして匂いを嗅がすように鼻先に出して声をかける。ベイビーを左腕だけで抱いて体の右側を少し前に出し、体だけ少し斜めな体勢になりベイビーを庇う。ベイビーは警戒心を露わにして唸っている。
ここで相手に怯えを見せると襲ってくる可能性があるから「私は君の事怖がってないよー」というふりをして虚勢を張るのだ。
匂いを嗅いでいるのかいないのか、よく分からないので右手を下げて神通力で器に入った水を出した。
その途端、目の前の大型犬が人間に化けた。頭の上に立ち耳と後ろに尻尾が見え隠れしてるけど。これが獣人か。トムとジェリータイプじゃなかった。
なんかでっかい。昔見た立ち上がったヒグマのはく製くらいあるか?ないか?
服装は制服っぽい。警備とかか。
「見つけたぞ!我が番!」挨拶もなしになんだこいつ。
「あぁ?うちの子は嫁にやらん!!」何が番だ。
言い返しながら上半身をひねってこいつからベイビーが見えないように庇う。水は隠した。ついでに結界を強化した。
番って繁殖期に子孫繁栄の為に組むオスとメスのことでしょ。だいたいは鳥がそうなるはず。うちのベイビーは犬だし避妊手術済みだ。発情期はないからオスを誘う匂いを発しない。そもそも何言ってんだこいつ、と思って臨戦態勢に入ろうかと構えていたらハス男が「そっちじゃない!」と言った。そっちってどっちだ。
「お前だ!お前が俺の番だ!」
「そんな訳あるか!指さすな!無礼者!!」
思わず怒鳴り返す。いかん、大人げないと思ったがここではっきりしておかないと後々面倒な事になる気がした。
私、元異世界人で現在は神ですよ?対象外だろう?今ここでそれを言っていいか悪いか、ぐるぐる考える。
つがいたい相手がいるなら、求愛のダンスするとか、素敵な巣を作って審査してもらうとか、ライバルと戦って勝つとか順番があるんじゃないのか?
「間違いない!匂いがする」
さっき右手の匂いを嗅がせたからそれか。犬の嗅覚は疑いようがないしな。
だがしかし「私の匂いがお前の番と言うのはお前の主張でしかない。客観的で科学的に分析した証拠資料を提示しろ!」犬の嗅覚が鋭い件と、私の匂いが番の匂いというのは別の問題だ。
「なんだよ、科学的とか分析とかって」
おや、しょぼーんとしてるよ。やっぱり、この世界の者には酷だったか。殆どを魔法で何とかしちゃってるもんなあ。その魔法の中に成分分析できるものってないのかね。
いや、待て。分析魔法あるじゃないか。神の知識の中にあったぞ。
「俺、難しい事は解んねえよ」
そっちの方か。
「番うんたら言うのなら選ぶ権利はメス側にある。私はお前を選ばない。去れ!」
ほんのちょっぴりの鳥類知識を振りかざしてダメ押ししてやる。
しょぼーんとされても同情心なんぞ湧かない。散歩の邪魔だ。
「去れって、向こうへ行くんだろ?」とハス男が石垣の方を指す。「俺は向こうから来たんだ。行く方向一緒だな」立ち直りが早い。
面倒くさい、ここで帰っちゃおうかなーと一瞬思ったが、こいつの上司に苦情を申し入れようかと思い直す。しかし道中一緒は鬱陶しい。
逡巡してると石垣の方から数人がこちらに向かって走ってくるのが見えた。
「班長ー!勝手に持ち場を離れないでくださいよー。」
「悪いな!番の匂いがしたんだ」まだ言ってる。
「違うと言っ「またっすかぁ?お嬢さんすみませんね」
言葉使いからして部下その一が苦情を言い、部下その二が私に謝る。
またって言った?発情期のたびに番認定で持ち場を勝手に離れてるのか?よく班長までなれたもんだ。職場放棄だろ。職場の規定違反じゃないのか?そもそも規定あるのか?
「この人番認識機能が壊れてるらしくて、それっぽい匂いした女性がいると必ず番だって言い張るんですよ」
思考が明後日の方向へ行きそうになってたら部下その二が説明を始めた。それっぽい匂いした女性に必ずって、対象になった女性には迷惑な話だな。
「腕は立つので戦闘では手柄が多いんですけど、平和な時は番問題で職場放棄が多いもんで手柄の割に出世しないって有名なんですよ」
そんな紹介されてもね、だからどうした。
「そうですか。皆さん大変ですね。ではその人を持ち場に連れて行ってください。絡まれて迷惑なんです」
「いやあ、大変すみませんでした」「「「すみませんでした」」」
ハス男は後から来た同僚全員に持ち上げられながらも騒いでいたが無視されていた。皆、慣れてるな。
「お疲れさまでした」
私はその場に留まって手を振って皆とお別れ。ハス男は皆に担がれて猿轡まで咬まされていた。
番認識機能が壊れてるって本当ならかわいそうな話だけど、それは自分で医者にかかるなりして治すなり何なりすればいい話。
立てた手柄の割に職場放棄が多くて出世しないのは、本人と上司が考えればいい話。それでよいと職場が認めてるならそれも良し。
それっぽい匂いがする女性を番と言い張るというのが気になるけど、いざとなったら腐るから大丈夫。
うん、私が気にする事ではない。
そう結論づけた私はもう帰ることにした。この辺には二度と来ないでおこうと決心して。忘れないよう帰ったら地図にバツ印つけなくちゃ。
「ちゅかれたねー、ベイビー?」
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