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1つ目の宝玉と
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目の前の三馬鹿は、ゲームにおいてことごとく宝玉を探す私達リュミエール王国の邪魔をしてくる言わば、敵キャラ。宝玉の力を持ってして世界征服を狙うネイブール帝国の代表である。
「はっ!見ろよ彼奴らの顔。この俺様の華麗すぎる姿に見とれてやがる」
「流石ですー。ドゥム様」
「ドゥム様の魅力の前では、ネイブールもリュミエールも関係ないのですねー」
上から、ネイブール帝国の皇子ドゥム・ネイブール。そして、その後に続くのはドゥムの取り巻きのロイトとゴーチェ。見ての通り、彼らは双子の兄弟だ。にしても同じような顔が、馬鹿皇子を挟んでいるのはある意味滑稽というか、面白い。ゲームでは特に何とも思わなかったが、実際目の前にして見てみるとこうじわじわくるものがある。
と、いつまでも笑っているわけにはいかない。目の前の奴らが敵である事は変わり用のない事実。そして、今さっき私達の乗って居た馬車を攻撃してきた張本人だ。……薄々予想はできていた。ぶっちゃけ襲ってくるのはこいつらしか、居ないよなーとは、思っていたが、それでもまさか殿下にも危険が及ぶタイミングで襲ってくるとは思いもしなかったのだ。
殿下と彼らは協力関係にある。だから、殿下に危害をもたらす事はない。なんて、思っていた。が、どうやらそれは飛んだ勘違い。よくよく考えたら、あり得ないことだ。いくら協力関係にあるからといっても、建前上は敵同士。攻撃してくるに決まっている。むしろ、殿下だけ攻撃しなかったとすれば、それはそれで怪しい事になる。
それにあの殿下の事だ。
「俺を襲うな……」
なんて、そんな間抜けな事は、きっと言わない。むしろ、手加減なく、容赦なくしろと彼らに言っていそう。そう言う人なのだ、殿下は。
「というか、ドゥム様。みてくださいよ。ドゥム様の素晴らしい攻撃魔法で、すでに1人重症ですよ。あの、血だらけな姿。笑えますね~」
「わぁ、これは楽勝に勝てますよ。勇者さま御一行。我らに敗れたり!という未来しかあり得ませんね。これもそれも、ドゥム様の素晴らしい攻撃のおかげですよ。」
「まぁ、この俺様にかかれば、このくらいなんて事はない。なんせ俺様だからな!!」
自画自讃するドゥムの姿はまさにおバカ系俺様キャラのテンプレとも言える。
ドゥムを中心に、ワイワイとはしゃぐ三馬鹿。まだ、何も始まってすらいないというのに、すでに彼らは勝ちを確信しているよう。対して、私達といえば、いきなり現れた敵への警戒心が半端ない。すでに臨戦状態。いつ戦いの火蓋が降ろされても、問題ないという緊張感に包まれている。もちろん、私も彼らからの攻撃が来てもいいようと、聖剣に手をかけ、彼らの攻撃に備える。あと、血だらけの重傷で悪かったな!!!
ゲームでは、この一番初めの戦闘も死亡ルートの1つになっていた。まだ、始まって間もないというのに、負けると容赦なくゲームオーバー。待っているのは、帝国の捕虜にされたのちの死。まさか序盤でいとも簡単にゲームオーバーになるなんて!!!こんちきしょう!!とSNSで、呟かれるほどに、余裕をかましていると、簡単に負けてしまうこの戦闘。油断は厳禁、絶対に負ける事は許されない。……いや、そもそも、ゲームとは違い本当の、本物の戦闘なのだ。初めから本気でやらねば、殺られる。
はっきりいって、彼らはバカだが驚くほど強いのだ。人数ではこちらが優勢だが、それを覆すほどに強いのだ。主にあの双子が、尋常じゃないほどにヤバイ。
「間抜けな、あいつら如き僕達だけで大丈夫ですから、ドゥム様はそこでかっこよく高みの見物でもしていて下さい。」
「シュランム・ラプゥぺ」
双子が呪文を唱えれば、地面から大量のゴーレムが次々と生み出れ出てくる。
「さぁ、勇者御一行!ドゥム様の為、ネイブールの為に死んで下さいね」
双子の片割れ、そう言ってドロイドがにこりと笑ったかと思えば、生み出されたゴーレムが私達の方へと襲ってきた。
聖剣を振るい、襲いかかってくるゴーレムを次々となぎ倒す。幸いにも、ゴーレム自体はそこまで強くなく、簡単に倒すことができた。だが、なにぶん数が多い。倒しても倒しても、次から次へと生み出される。他のみんなを見てみても、どうやらゴーレムを破壊するのに苦戦しているようだ。切っても切っても、それでもなお生み出されるゴーレム。これではらちがあかない。しかも、ゴーレムの泥のせいで、だんだんと聖剣の切れ味が悪くなってきた気がする。
「あー、もう。これじゃあいつまで経ってもらちがあかない!ねぇ、馬鹿ルーナ、聖剣の力でどうにかならないの?……っと!!」
「そんなことができたら、今頃やってるよ!!……っく。もう、なんでこんなに次から次へとうじゃうじゃ出てくんな!!」
ズバッズバッと泥が切れていく感覚。倒しても倒してもなお、復活するゴーレム。あぁ、これが、永遠に続くのかと思うと気が遠くなる。
「あはははは、そのままやられて下さいね?」
「プランツェナ!!」
再び、双子が呪文を唱えた次の瞬間、地面が割れ大中様々な植物が生えきた。と思えば、その植物達も、ゴーレム同様私達めがけて襲いかかってくる。
ゴーレムの所為で、切れ味の悪くなった剣。それを使い植物とゴーレムを切り倒すのははっきりいって困難。すでに作業は、切るというか叩く感じになってきた気がする。
「きゃぁっ!!」
気が遠くなってきた頃、後ろの方から聞こえてきたセシルちゃんの叫び声。
主に私とアネルは前衛、あとの4人は後援から魔法で私達を支援するという形で戦っていた為、今一瞬後ろで、セシルちゃんに何があったのか全くわからなかった。一体何事かと思い振り返ると、そこにいたのはエロ同人誌のように植物が絡みつき、身動きの取れないセシルちゃん。
な、なんだ、この光景。エロ同人誌か!?前世、お兄ちゃんが読んでたエロ同人誌なのか!?いつの間に、乙女ゲームからエロ同人誌になったんだ!
いやはや、絡みつく植物がいい仕事している。こう、胸とか、お尻とかの形を浮かび上がらせているのが、素晴らしい。私が仮に男だったら、この光景はたまらないだろう。事実、周りの男共は一瞬思考が停止している。いやぁ、気持ちは分からなくもないが、今は戦闘中、集中しようぜ………とやばいやばい。そんな事を言っている私も戦闘に、戦闘に集中しなくては。セシルちゃんの救出は、後援組に任せるとよう。多分ディルクあたりがセシルちゃんを助けて……的なイベントになっててくれることを期待しておこう。それに、そろそろこの戦闘にキリをつけるべき頃合いだろう。体力的にも、…………身体的にも限界がきているのだから。
じわじわと身体中に広がる痛み。どうやら、先ほど馬車に落ちた際、自分にかけた魔法が溶けかかっているみたいだ。今はまだいいが、このままでは、動けなくなるのも時間の問題。私がかけたこの魔法。しばらくの間、ある程度の痛覚を麻痺させてくれるというなんとも便利な魔法だが、便利な反面、欠点がある。この魔法が解けた瞬間、麻痺していた時の痛みが一気に襲ってくるのだ。その痛み、本来の痛みの約数倍。
……ただでさえ、あの時の痛みはやばかったというのに、それ以上の痛みに襲われたら立ってられないどころの騒ぎではない。これは、本当にこの戦闘にケリをつけなくては、確実に負けてしまう。
さてはて、どうするべきか。土人形と植物の奥の奥に見える双子を垣間見れば、いかにも余裕といった表情をしている。余裕そうなその表情がなんともムカつく。
取り敢えず、この土人形と、植物をなんとかする為には、操っているあの2人をどうにかする必要がある。そして、やるなら一気に、2人同時にけりをつけなければ、意味がない。
だが、どうやって、2人同時に倒せばいいのだろうか。私、1人であの2人を一気に倒すのはたぶん無理、困難、というか無謀。じゃあ2人なら?いや、いや、それでも、たとえこの中で一番気の合うアネルと力を合わせても、上手くいくとは限らない。
それなら、全員では?と言ってもそれはそれで難しい。そもそも現時点で、この状態なのだ。それに、全員で動くのはリスクが高すぎるし、逆に動きづらい。やっぱりやるなら、リスクの低く、動きやすい1人でだろう。一気に決めれて、かつ確実な方法。それを、私は取らなくてはならない。だが、果たして、そんな方法はあるのだろうか?
「はっ!リュミールの勇者御一行の力はその程度か。この俺様の出る幕でもなかったな!流石俺様!この手を下さずとも任務をこなす。まさに天才だ」
………襲いかかってくる植物の隙間からチラリと見えた馬鹿皇子ことドゥム。なんとも苛立たせるセリフである。あー、今すぐ彼奴をぎゃふんと言わせたい。
……………あ!そうだ。あいつを、ドゥムを襲えば、あの双子をどうにかしなくても、この状態をなんとかできるのではないだろうか。双子は心の底からドゥムを崇拝している。その忠義は海よりも深く、山よりも高い。上手くドゥムを人質に取れれば、戦闘に勝つとまではいかなくても、この負けそうな状況を脱却できるだろう。
幸いなことに、ドゥムは隙だらけ。護衛である双子は、私たちを襲うことに集中している。ドゥム自身もまさか俺様が襲われることはないだろうとたかをくくっている。やるなら今しかない。
「アネル、ここは任せた。殿下達をちゃんと守ってね」
そう言って、思い切り前に踏み出す。若干死亡フラグが立った気もするが、大丈夫。だって、とっくの昔に死亡フラグが立っているから(泣)
「はぁ!?どういう事!?ちょっと、ルーナ!?」
1人で前へと飛び出せば、先程よりも多くの土人形と植物が次々とこちらの方に襲いかかってきた。
「そんな1人で、鉄砲玉の如く飛び出しても無駄ですよー。僕らのことは絶対に倒せませんから。さぁ、さぁ彼奴を襲えー」
死角になるような場所を選んで、彼らに近づいているつもりだったが、流石にそれは無理だったか。
目の前の土人形やらをなぎ倒しながら、前へ前へと進む。
幸運なことに、後衛組の誰かが、支援してくれたおかげで、随分進みやすい。
さぁ、双子までの距離あと5メートル。
「そんなに、接近戦をお望みなら、2対1で、こてんぱんにしてやりますよ」
「さぁ、死を望むほどの苦しみも味あわせてあげますからね?」
彼ら短剣を構え、接近戦をする気満々の彼ら。さぁ、今にも戦うぞ!とやる気満々の彼ら。しかし、彼らには用はない。その距離わずか数センチと言ったところだが、見事に、華麗にを素通りする。
「「え!?」」
さぁ、ドゥムとの距離は残りわずか。あと二、三歩で、届く。
果たして一体何が起きたのか。状況判断に遅れたドゥムと双子。一瞬、反応が遅れる。これは最大にして、最高のチャンス。
私はそのまま思い切り、剣を振りかざし、ドゥムの首元ぎりぎりに、振り下ろした。
「はっ!見ろよ彼奴らの顔。この俺様の華麗すぎる姿に見とれてやがる」
「流石ですー。ドゥム様」
「ドゥム様の魅力の前では、ネイブールもリュミエールも関係ないのですねー」
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と、いつまでも笑っているわけにはいかない。目の前の奴らが敵である事は変わり用のない事実。そして、今さっき私達の乗って居た馬車を攻撃してきた張本人だ。……薄々予想はできていた。ぶっちゃけ襲ってくるのはこいつらしか、居ないよなーとは、思っていたが、それでもまさか殿下にも危険が及ぶタイミングで襲ってくるとは思いもしなかったのだ。
殿下と彼らは協力関係にある。だから、殿下に危害をもたらす事はない。なんて、思っていた。が、どうやらそれは飛んだ勘違い。よくよく考えたら、あり得ないことだ。いくら協力関係にあるからといっても、建前上は敵同士。攻撃してくるに決まっている。むしろ、殿下だけ攻撃しなかったとすれば、それはそれで怪しい事になる。
それにあの殿下の事だ。
「俺を襲うな……」
なんて、そんな間抜けな事は、きっと言わない。むしろ、手加減なく、容赦なくしろと彼らに言っていそう。そう言う人なのだ、殿下は。
「というか、ドゥム様。みてくださいよ。ドゥム様の素晴らしい攻撃魔法で、すでに1人重症ですよ。あの、血だらけな姿。笑えますね~」
「わぁ、これは楽勝に勝てますよ。勇者さま御一行。我らに敗れたり!という未来しかあり得ませんね。これもそれも、ドゥム様の素晴らしい攻撃のおかげですよ。」
「まぁ、この俺様にかかれば、このくらいなんて事はない。なんせ俺様だからな!!」
自画自讃するドゥムの姿はまさにおバカ系俺様キャラのテンプレとも言える。
ドゥムを中心に、ワイワイとはしゃぐ三馬鹿。まだ、何も始まってすらいないというのに、すでに彼らは勝ちを確信しているよう。対して、私達といえば、いきなり現れた敵への警戒心が半端ない。すでに臨戦状態。いつ戦いの火蓋が降ろされても、問題ないという緊張感に包まれている。もちろん、私も彼らからの攻撃が来てもいいようと、聖剣に手をかけ、彼らの攻撃に備える。あと、血だらけの重傷で悪かったな!!!
ゲームでは、この一番初めの戦闘も死亡ルートの1つになっていた。まだ、始まって間もないというのに、負けると容赦なくゲームオーバー。待っているのは、帝国の捕虜にされたのちの死。まさか序盤でいとも簡単にゲームオーバーになるなんて!!!こんちきしょう!!とSNSで、呟かれるほどに、余裕をかましていると、簡単に負けてしまうこの戦闘。油断は厳禁、絶対に負ける事は許されない。……いや、そもそも、ゲームとは違い本当の、本物の戦闘なのだ。初めから本気でやらねば、殺られる。
はっきりいって、彼らはバカだが驚くほど強いのだ。人数ではこちらが優勢だが、それを覆すほどに強いのだ。主にあの双子が、尋常じゃないほどにヤバイ。
「間抜けな、あいつら如き僕達だけで大丈夫ですから、ドゥム様はそこでかっこよく高みの見物でもしていて下さい。」
「シュランム・ラプゥぺ」
双子が呪文を唱えれば、地面から大量のゴーレムが次々と生み出れ出てくる。
「さぁ、勇者御一行!ドゥム様の為、ネイブールの為に死んで下さいね」
双子の片割れ、そう言ってドロイドがにこりと笑ったかと思えば、生み出されたゴーレムが私達の方へと襲ってきた。
聖剣を振るい、襲いかかってくるゴーレムを次々となぎ倒す。幸いにも、ゴーレム自体はそこまで強くなく、簡単に倒すことができた。だが、なにぶん数が多い。倒しても倒しても、次から次へと生み出される。他のみんなを見てみても、どうやらゴーレムを破壊するのに苦戦しているようだ。切っても切っても、それでもなお生み出されるゴーレム。これではらちがあかない。しかも、ゴーレムの泥のせいで、だんだんと聖剣の切れ味が悪くなってきた気がする。
「あー、もう。これじゃあいつまで経ってもらちがあかない!ねぇ、馬鹿ルーナ、聖剣の力でどうにかならないの?……っと!!」
「そんなことができたら、今頃やってるよ!!……っく。もう、なんでこんなに次から次へとうじゃうじゃ出てくんな!!」
ズバッズバッと泥が切れていく感覚。倒しても倒してもなお、復活するゴーレム。あぁ、これが、永遠に続くのかと思うと気が遠くなる。
「あはははは、そのままやられて下さいね?」
「プランツェナ!!」
再び、双子が呪文を唱えた次の瞬間、地面が割れ大中様々な植物が生えきた。と思えば、その植物達も、ゴーレム同様私達めがけて襲いかかってくる。
ゴーレムの所為で、切れ味の悪くなった剣。それを使い植物とゴーレムを切り倒すのははっきりいって困難。すでに作業は、切るというか叩く感じになってきた気がする。
「きゃぁっ!!」
気が遠くなってきた頃、後ろの方から聞こえてきたセシルちゃんの叫び声。
主に私とアネルは前衛、あとの4人は後援から魔法で私達を支援するという形で戦っていた為、今一瞬後ろで、セシルちゃんに何があったのか全くわからなかった。一体何事かと思い振り返ると、そこにいたのはエロ同人誌のように植物が絡みつき、身動きの取れないセシルちゃん。
な、なんだ、この光景。エロ同人誌か!?前世、お兄ちゃんが読んでたエロ同人誌なのか!?いつの間に、乙女ゲームからエロ同人誌になったんだ!
いやはや、絡みつく植物がいい仕事している。こう、胸とか、お尻とかの形を浮かび上がらせているのが、素晴らしい。私が仮に男だったら、この光景はたまらないだろう。事実、周りの男共は一瞬思考が停止している。いやぁ、気持ちは分からなくもないが、今は戦闘中、集中しようぜ………とやばいやばい。そんな事を言っている私も戦闘に、戦闘に集中しなくては。セシルちゃんの救出は、後援組に任せるとよう。多分ディルクあたりがセシルちゃんを助けて……的なイベントになっててくれることを期待しておこう。それに、そろそろこの戦闘にキリをつけるべき頃合いだろう。体力的にも、…………身体的にも限界がきているのだから。
じわじわと身体中に広がる痛み。どうやら、先ほど馬車に落ちた際、自分にかけた魔法が溶けかかっているみたいだ。今はまだいいが、このままでは、動けなくなるのも時間の問題。私がかけたこの魔法。しばらくの間、ある程度の痛覚を麻痺させてくれるというなんとも便利な魔法だが、便利な反面、欠点がある。この魔法が解けた瞬間、麻痺していた時の痛みが一気に襲ってくるのだ。その痛み、本来の痛みの約数倍。
……ただでさえ、あの時の痛みはやばかったというのに、それ以上の痛みに襲われたら立ってられないどころの騒ぎではない。これは、本当にこの戦闘にケリをつけなくては、確実に負けてしまう。
さてはて、どうするべきか。土人形と植物の奥の奥に見える双子を垣間見れば、いかにも余裕といった表情をしている。余裕そうなその表情がなんともムカつく。
取り敢えず、この土人形と、植物をなんとかする為には、操っているあの2人をどうにかする必要がある。そして、やるなら一気に、2人同時にけりをつけなければ、意味がない。
だが、どうやって、2人同時に倒せばいいのだろうか。私、1人であの2人を一気に倒すのはたぶん無理、困難、というか無謀。じゃあ2人なら?いや、いや、それでも、たとえこの中で一番気の合うアネルと力を合わせても、上手くいくとは限らない。
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「はっ!リュミールの勇者御一行の力はその程度か。この俺様の出る幕でもなかったな!流石俺様!この手を下さずとも任務をこなす。まさに天才だ」
………襲いかかってくる植物の隙間からチラリと見えた馬鹿皇子ことドゥム。なんとも苛立たせるセリフである。あー、今すぐ彼奴をぎゃふんと言わせたい。
……………あ!そうだ。あいつを、ドゥムを襲えば、あの双子をどうにかしなくても、この状態をなんとかできるのではないだろうか。双子は心の底からドゥムを崇拝している。その忠義は海よりも深く、山よりも高い。上手くドゥムを人質に取れれば、戦闘に勝つとまではいかなくても、この負けそうな状況を脱却できるだろう。
幸いなことに、ドゥムは隙だらけ。護衛である双子は、私たちを襲うことに集中している。ドゥム自身もまさか俺様が襲われることはないだろうとたかをくくっている。やるなら今しかない。
「アネル、ここは任せた。殿下達をちゃんと守ってね」
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1人で前へと飛び出せば、先程よりも多くの土人形と植物が次々とこちらの方に襲いかかってきた。
「そんな1人で、鉄砲玉の如く飛び出しても無駄ですよー。僕らのことは絶対に倒せませんから。さぁ、さぁ彼奴を襲えー」
死角になるような場所を選んで、彼らに近づいているつもりだったが、流石にそれは無理だったか。
目の前の土人形やらをなぎ倒しながら、前へ前へと進む。
幸運なことに、後衛組の誰かが、支援してくれたおかげで、随分進みやすい。
さぁ、双子までの距離あと5メートル。
「そんなに、接近戦をお望みなら、2対1で、こてんぱんにしてやりますよ」
「さぁ、死を望むほどの苦しみも味あわせてあげますからね?」
彼ら短剣を構え、接近戦をする気満々の彼ら。さぁ、今にも戦うぞ!とやる気満々の彼ら。しかし、彼らには用はない。その距離わずか数センチと言ったところだが、見事に、華麗にを素通りする。
「「え!?」」
さぁ、ドゥムとの距離は残りわずか。あと二、三歩で、届く。
果たして一体何が起きたのか。状況判断に遅れたドゥムと双子。一瞬、反応が遅れる。これは最大にして、最高のチャンス。
私はそのまま思い切り、剣を振りかざし、ドゥムの首元ぎりぎりに、振り下ろした。
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