ヒロインは他に任せて

オウラ

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エスト公国にて

むかしむかしの、その昔

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 昔々、ずっと昔、世界を作った神様は、3つの魔法石を地上に置き忘れ天へと帰ってしまいました。

 残された3つの魔法石は、その秘めたる魔力より、大地を育みました。こうして、魔法石の魔力によって育まれた大地、そしてそこに生まれた生命達は、魔力の源、魔素をその身に宿すようになりました。
 一方、魔法石はというと、全ての力を使い切り、大地へと帰っていったのです。


 それから気が長くなるような年月が過ぎ、生と死が繰り返された大地には多くの魔素が溢れるようになりました。溢れた魔素は、結晶となり今日の私たちの生活を助ける魔法石として、重宝されるようになりました。そんな、魔素が結晶化した魔法石の中でも、数百年に1度誕生するのが、巨大な力を宿した魔法石。
 かつて、神様が落としたとも言われる3つ魔法石と瓜二つの魔法石は、とある周期によって、地上に姿を表すのでした。そうまるで、長い年月をかけ再生したかのように。


 普段私たちが日常生活で使う魔法石とは、比べものにならないほどに、純粋で強力な魔力を秘めた魔法石。それは、どんな願いも叶えてくれる魔法の石。人々はいつの日からか、その強大な力を持つ魔法石を宝玉と呼ぶようになりました。時に脅威を、時に信仰を、時に絶望を、時に希望を人々に与える宝玉を誰もが望みました………………













 それから時は流れ、今から数千年前。とある国の王様が、何の因果かこの3つの宝玉を手に入れました。
 王は、とても優秀で誰からも慕われる賢王でした。国民の皆は、誰しも思いました。
「あぁ、あの王様ならば、きっと国のために魔法石を使ってくれる」と
 しかしそれは、大きな間違いでした。宝玉を手に入れたその瞬間、その魔力に魅入られた王様は、暴君へと変わり果ててしまいました。そう、宝玉の持つ巨大な魔力が、彼の精神を蝕んでいったのです。

 他国から奴隷を買っては繰り返される殺戮。

「殺せ、殺せ!!殺すのだ!!」

 王はその手を真っ赤に染めて、何人も何十人も殺しました。

「足りぬ、足りぬ。我が乾き」

 気がつけば、いつしかその手は国民たちにも向けられ、何千もの命が王の手によって消え去っていきました。

 初めは王に抗おうとした国民たちも、宝玉の前では無力。消えゆく隣人を尻目に、明日は自分かもしれない恐怖に怯えながら、彼らは日々生きていました。

 全てのものが絶望し、明日への希望が消え去ったそんな中、1人の青年が立ち上りました。王様の3番目の息子である彼は純粋な心を持った青年。日々繰り返される王様の父親の殺戮に心を痛めていました。このままではいけないと、彼は立ち上がったのです。
 王家に伝わる秘宝の剣、その剣を手にした彼は、王座に座る父親に立ち向かいその剣をむけました。
 自分に歯向かう者は、全て葬ってきた王様も、流石にこの時ばかりは動揺しました。まさか、自分の息子に刃を向けられるとは………

「父上!私は貴方を許す事が出来ません!」

 動揺する王様の隙をつき、青年は剣を王の心臓に突き立てたのです。
 そして最期の瞬間、自分に刃を突き刺す悲しい表情をした息子の姿を見た王様は悟りました。

「あぁ、なんてことを。すまなかった。」

 宝玉の巨大な力によって、その精神を蝕まれた王様は、最後の最後に気高い心を取り戻したのです。そして、その罪の重さ感じながら、その生涯に幕を閉じたのです。







 その後、父を打ち、国を救った青年は新たな国の王になりました。そして、こんな悲惨な事が2度と起きないように、宝玉を個人的に使用する事を禁止し、聖剣を生み出したのです。
 聖剣は、青年と同じように宝玉を正し純粋な心を持ち、宝玉を正しく扱える、世の中の人々の幸せを願えるそんな存在のみが扱える魔法の剣。
 聖剣を扱えるもの………勇者のだけに、宝玉を託す。そんな取り決めを青年は決めたのです。
 そして、今日に至るまで、聖剣に選ばれた歴代のの勇者たちは、宝玉を正しく使い、世の中を平和へと導いてきました。

今なおその伝説の聖剣は城下の広場にて、宝玉の魔力より世界を救ってくれる勇者を待っているのです。
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