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私はHighになりたい

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 夏休みになった。テストに関しては、なんだ、その色々あったが、それでも夏休みになったのだ。

 ……夏休み、それは学生にとっての一大イベント。補講やら、部活やらで学校に行くものもいるが、私には関係のない。つまり、毎日お昼頃まで寝ていても、昼夜が逆転しても、家から、否、部屋から出なくてもいい期間が始まるのだ。ビバ!夏休み。約1ヶ月の素晴らしき日々を私はどう過ごそうか、やっぱり寝て過ごそうか。そんなことを考えれば、今からウキウキドッキドキだ。因みに、今日からお盆の少し前まで口うるさいオカンは家族旅行に行くためいない。なんでも、ヨーロッパでバカンスだとか。くっ、羨ましいことこの上ないが、そのおかげで、誰にも邪魔される事なくグータラできるので、最高である。キャッホーイ。






 クーラーがガンガンに効いて、少し肌寒い部屋の中。タオルケットに身を包みながらいつも通り、ごろりとベッドに転がりスマホをいじる。バカみたいな熱い中で働くものがいると言うのに、こんな部屋でゴロゴロしてていいのだろうか。という背徳感がたまらない。あぁ、本当に夏休みって素晴らしい!!



 先程から、バカみたいに翔真からラインが来るが、そんなものは無視。

起きたか?
ご飯は食べたか?
二度寝してないか?
お土産は何が欲しい
宿題はしっかりやれよ
おい!見てるのか??

 とストーカーのように来るが、無視だ、無視。通知をオフにして、ガン無視をする。

 誰にも邪魔されることなく、ゴロゴロとできる。なんて、素晴らしいことなのだろうか。あー、幸せ。


 気持ちの良いベットの上、程よい眠気に襲われかけたその瞬間、ブゥ~っとスマホが鳴りった。うぅ、眠いと言うのに一体誰だ。翔真からの通知はオフにしているし、母さんなら、直接私に用事を言うだろう。父さんはこの時間は連絡してこない。
 心当たりはない。果たして、いったい誰からだと、メッセージをひらけば、同志、立花くんからだった。


"夏休みになった事だし、この前言っていた映画見に行かない?"


 画面に表示されたメッセージ。あぁ、確かテスト前にそんな事を話していた気がする。あの事件のせいですっかり忘れていた。
 ぶっちゃけ言って、外は暑いし、夏休み中は家に引きこもっていたい………が、あのアニメのためなら私はなんでもできる。と言うか、以前から約束していた事だ。そんなの行くに決まっている!それに、少しだけ憧れていたんだよなぁ、同志と映画に行くの。映画を観た後に語り合うのを。


 そうと決まればすぐさま、立花くんに返信し、いつ見に行くか2人で話し合う。



 まだ、まだ、始まったばかりの夏休み。この夏はイベント事が沢山だ。目一杯たのしんで、目一杯だらけて、目一杯グータラするしかない。
 だって、この夏が終われば私が、ヤンデレになってしまうという恐ろしい未来に突入する。ヒロインが、翔真と出会って恋愛する可能性があるのだ。そうはなりたくないけれど、ゲーム通り私が刑務所送りなんて未来が来るかもしれないのだ。もしかしたらこれが人生最後の最高のひと時になりうるのかもしれない。だったら、好きなだけだらけて、人生を楽しむしかないだろう。



 そんな事を考えつつどこか肌寒い部屋の中、わたしはベッドに転がり今日二回目のお昼寝に入るのであった。
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