保健室 三年生

下野 みかも

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三年生 お土産

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 三日間。 先生が二年生の修学旅行に付き添いで行ってる、三日間。
 長かった。
 でも、退屈はしなかった。
 先生が貸してくれた、ふるえるタイプの、おもちゃのお陰で。
 そして、思い知った。
 これは絶対、借りちゃいけないやつ……。 少なくとも、受験が終わるまでは。


 一日目。 いつものように、先生の事、考えて。 先生に意地悪される、妄想して。 そろそろ使ってみようかな、って当ててみたら、すぐ、いってしまった……。 そして、結局、四回した。
 二日目。 ママが夜勤でいないから、ふるえるパワーを一番強くして(音うるさい)、しまくった。 お猿さんにこれ渡したら、まじで、ご飯食べずにし続けるだろうなって思った。 五回した。
 三日目。 先生は、もう旅行から帰ってきてる。 学校では会ってないから、今日まで使っていいと解釈。 ちくびなんかにも、当ててみたりして……。 てへ。 
 おもちゃの公式サイトを見たら、一八歳以上ですか?って聞かれたから、ドヤ顔で「はい」をクリック。 当てるだけじゃなくて、ちょっと中に入れてもよいという情報を得て、ちょっとだけ、いれる。 すぐ、いく。 五回した。


 そして、金曜日の夜。 ママにちゃんと断って、先生の家に、泊まりに行く。 服も下着もパジャマも、先生のマンションに置いてあるし、勉強道具はいつも、通学リュックに入ってる。 
 学校が終わったら、図書室で勉強して、先生と帰り、待ち合わせる。 水色の、フランス車で。
 学校から少し離れた郵便局の駐車場で、先生を待つ。 前は、先生達の駐車場で直接待ってたけど。 さすがに、誰が見てるか分からないし。


「お待たせ」
「ううん。 待ってないよ。 アプリで、勉強やってた」
「偉いわ。 乗って」
 助手席に、乗り込む。 乗ってすぐ、キスする。
「会いたかったよ。 先生。 大好き」
「私もよ」
 ちょっとだけ、唇をくっ付けてから。 先生のマンションに、向かう。
「お夕飯、なにかな」
「シチュー、作っておいたの。 白いシチュー。 好き?」
「大好き! 嬉しいな」


 シチューはほんとに、美味しかった。
 先生のご飯、いつも、美味しい。 シチューと、パンと、サラダ。 先生は、ワインも。 デザートには、ちっちゃい高級アイスが出てきた(うちでは、大晦日だけに食べていいやつ)。
 食べ終わって、猫脚のソファで、膝枕をしてもらう。
「お土産、買ってきたわ。 八つ橋、堅いもの。 あぶらとり紙。 リップクリーム。 それから、お守り」
「そんなに? 嬉しいなあ。 ぜーんぶ、嬉しい」 
 先生はかがんで、頬っぺたにちゅっとしてくれる。
「お守りは、縁結び。 夕陽と志望校、御縁がありますように。 私と、ずうっと一緒にいられますようにって」
「おりえちゃん。 ありがと……」
 

「ねえ、玉手箱、開けた?」
 くすくす笑いながら、先生が聞く。
「う…うん。 あの、すごく、何回も、使っちゃった」
 恥ずかしくて、もじもじ、答える。
「気持ち良かった?」
 もう。 分かってるくせに。 私はちょっと、むきになって答える。
「すっごい、良かった。 もう、借りない。 癖になっちゃいそうだから」
 唇、とんがってしまう。 
「ふふ。 可愛い。 正直ね」
 先生はまたかがんで、キスをくれる。 今度は、唇に。
「私もね。 三日間、寂しかった。 夕陽に会えなくて」
 私の顔を見つめながら、そう言ってくれる。 どきどきする。
「今日は、いっぱい、しましょうね。 あなたは三日間、楽しかったかもしれないけど。 私、ほんとのお預けだったんだから」
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