保健室 三年生

三年生 いい知らせ

「こんにちは……」
「こんにちは。　久し振りですね」
　保健室では、久し振り。
　放課後。　まだ、残暑。　保健室の引き戸を開けると、ひやっとした風が、頬をくすぐる。
　一学期の終わりに、保健室の扉の鍵、掛け忘れちゃって。　ぎゅっとしてる所、見られて（見たのが友達で、助かった）。　
　だから、ここでは遠慮してるの。　もしかしたら、先生に相談したい事がある子、他にも来たいかもしれないし。


　去年の今頃だったら、他の子が先生と二人きりで相談するなんて、ほんと、嫌だった。　やきもちで、頭、おかしくなっちゃったかも。　
　今はもう、多分……平気。　
　先生は私のこと、大好きだもん。　私ももちろん、先生が大好き。　私としか、えっちな事、しないって言ってくれたから。


「あのね、模試の結果が出たから、見せたくて」
　いつもは、誰にも見せない。　どうせ、良くないから。　ママにも、見せてない。　
　自分でちらっと見て、でも捨てるのもなんだから、本棚の奥にファイルに入れて、ただ立ててある。
「まぁ。　見せてくれるの？　こちらへいらっしゃい」
「えと……入り口、鍵、かけてもいい？　恥ずかしいから」
　ふふっと笑って、先生は、鍵をかけてくれる。
「恥ずかしい？　いやらしい事、したいの？」
「違うよ！　模試の結果見せるのが、恥ずかしいの。　それに、ここでえっちな事してるのバレたら、先生はクビになっちゃうでしょ」
「そうしたら、ずっと家にいるからいいわ。　あなたの帰り、待ってるから」
　も、もう。　私のこと、喜ばせる。　どぎまぎして、何て答えたらいいか、分からなくなる。
「あの……これ。　今日、返ってきたやつ」
　先生に、結果の紙を手渡す。　努めて、ふつうに。
「まあ。　……本当に、すごいわ」
　行きたい大学、近くの国立大の、B判定。　初めての、いい結果。
「えへへ……。　すごいでしょ。　偏差値も、この数字、初めて。　今までで一番良かったんだよ」
　私も顔を近づけて、指で、結果を教える。　ここの、判定のところでしょ。　こっちが、各科目の点数。
「すごいじゃない。　夏休み、頑張ってたもの。　一生懸命、頑張ったものね」
　先生、ぎゅっとしてくれる。　私も、ぎゅっとする。　
　鍵、閉まってるし、カーテンも。　ついたて、両側にある真ん中のベッドで、抱き合う。
「先生。　ごほうび、キスしよ」
「ここでしても、いいかしら」
「鍵、閉めたし……。　えと、今日だけ」
　そこまで聞くと、先生は私を押し倒す。　頭を撫でて、私の髪を耳に掛ける。　耳たぶを、かるく噛む。　どきどきする。
「学校では、しないって決めちゃったのよね。　夕陽が」
　そう。　だって、先生が怒られたら、悲しいもん。
　でも、どうしても、褒めて欲しかったの。　だって、先生と一緒に頑張ったから。　勉強、たくさん教えてもらって。
「今日だけ。　これからは、先生のお家で二人きりの時に、いっぱいもらうんだ」
「今日だけなんて……無理よ。　これからも、ここで、しましょ。　二人きり、私の家でももちろんするし、ここでも、しましょうよ」
「したいけど、だめでしょ。　バレて先生が学校クビになったら、私も学校辞めちゃうよ」
　そんなのだめよ、と言いながら、先生は私の頬っぺたに、頬擦りをする。　いつも、私が頭を擦り付けるみたいに。
　とっても、とっても、愛おしい。
「先生。　大好き。　かわいい。　先生と一緒だから、がんばれたの。　ありがとう」
「そんな事、言ってくれるの。　本当に、いい子。　あなたが、頑張ったのよ」
　そこまで聞いて、もうたまらなくて。　
　私から、口付ける。　舌を、差し込む。　押し倒されてる、私から。
「んっ。　ん……」
　先生は喉から小さく声を出して、私に教える。　たぶん、キスが気持ちいいって。　私も同じように気持ちいいって伝えたくて、喉を鳴らして、返事をした。