上 下
43 / 48
第一章〜幼年期編〜

想いと願い

しおりを挟む


 俺達にとっては大昔の、然しユイ様にとっては確かにその瞬間を生き抜いた過去を話すユイ様は暗い表情を浮かべながら話を続ける。

「そう、それが星騎士の始まり。そしてその星騎士が星武器という神秘を扱える理由」

「世界の歴史を何度も巻き戻しているのだから、現在実現が難しい機構の武器も展開が可能、という訳ですね…私の双剣銃のように」

 始祖神が本当に星の歴史を何度も繰り返してきた神なのであれば、今よりも技術が発達した世界も見てきたのであろう、それならば今よりも発達した銃火器が星武器として展開されるのも有り得る話だ。


「そういう事ね、…そして、此処からが『星々の騎士団』の活動内容になるわ」

「…ッ、矢張り私は納得出来ません!アンナは未だ8歳なのですよ?!そんな娘に危険に身を置けという親が何処に居るというのですか!!」

「落ち着け、フリードリヒ。…御前も分かっているのだろう?アンナがあの神槍に選ばれた時点で何時かはこうなると」

 色々と、点と点が線になっていくのを感じユイ様の言葉を待っていると、今まで何も語ろうとしなかったフリードリヒが話を遮り、ユリウスの爺さんがそれを咎めるが…正直、此処まで聞ければフリードリヒの真意は予想は付く。

 寧ろ、矢張り、この男は愛情深い父親だった。

「しかし…!「お父様」…アンナ…」

「私は大丈夫です、寧ろこの3ヶ月…私はお父様を誤解しておりました。私はお父様に愛されていないのでは…と」

「何を馬鹿な…私はどんなになってもアンナ、御前を愛している。優秀な星騎士の育成に力を入れていたのも全ては…「私の為、なのですよね?」…っ…」

「色々と分からない事だらけでしたが、ユイ様から星騎士の起源を聞いて、なんとなくですが得心を得ました。でもお父様、私は大丈夫です」

「アンナ…」

「お父様が私にS級以上の星騎士になって欲しくなかったのは偏に、私に重荷を背負わせない為と、危険な目にあって欲しくないから。G級ともなれば、また何時リンとの対戦の時の様な危険な目に合うか分からない…ですよね?」

「……」


 沈黙は肯定、と捉えて良いのだろう。
 S級以上の星騎士は皆、『星々の騎士団』に所属するという事はS級同士で競い合う事で技を磨き、力を付け、外宇宙の神がまた何時行動を再開しても良いように備える、という側面がある。

 現に、S級星騎士同士が競い合うリーグが存在するのが第一の理由だ。

 そして、セイやハクのようにS級星騎士が軍と警察という機関にトップとして所属しているという事は、恐らく高い確率で何らかの機関にS級星騎士が所属するのが多い傾向にあるのだろう。…多分、シュリも元々は何処かの研究者か教師だった可能性もある。

 何より、今までの話を聞くに、確信を持って言える事を口にする。


「内政として福祉関係が疎かになっていたのも、優秀な星騎士を一人でも多く育成する為…ですよね?恐らく私を戦いの場から遠ざける為に」

「…それについては儂からYES、と答えよう。実際此処数年を遡ってみると、儂が携わっていた頃よりもA級星騎士は倍近く排出されておる」


 フリードリヒの代わりに、ユリウスの爺さんがデバイスを取り出し、床に向け光を照射すると立体的な映像と共にグラフが表示される。

 それによると、確かにある時期からノワール国が排出するA級星騎士の数が増えていた。…丁度8年前、アンナが生まれた年だ。

 フリードリヒ…否、親父へと身体ごと振り向き腰を曲げ、頭を下げる。今まで、恵まれた環境で見守り、護ってきてくれた父親に感謝の言葉と───それ故に、もう充分だという事を告げる為に。


「お父様…私を護ろうと必死になって下さりありがとうございます、でも…私はこう思います、エミル達の様な小さな子達が笑顔で暮らせない国に、はたして価値はあるのか、と」

「ッ!」

「…確かに、何かを護る為には力が必要なのは認めます。でも、力を付ける為に他の何かを…それも力の弱い存在を犠牲にするのはユイ様を始め、先祖が護り育んできた生命を切り捨てるという事に違いないのではありませんか?」


 前世で極道の道を歩んだ俺だからこそ、力の重要性は嫌という程知っている。

 どんなに綺麗事を言おうと、力が無い奴は生き方も、死に方も選べずに死んで行くのは何度も見てきた。

 だからこそ、この娘思いの良い父親には、俺が歩んだような道は歩いて欲しくない。

「アンナ…」

「…だから、お父様。私なら大丈夫です、星騎士の育成よりも福祉に…力の強弱は関係なく、民が笑顔で居られる国を創る為に力を注いで下さい」

「…アンナは強くなったのね、これなら星々の騎士団としての任務を遠慮なく下せるわ」

 親父が俺を呼ぶ声を耳にしながら、嘗てのと今のアンナが望む国作りを口にする。間を開けてユイ様が俺に命じようとする任務の件をユリウスの爺さんが問う声が聞こえた。


「ユイ様、倅が話を遮ってしまい申し訳ありませぬ。…して、その任務とは?」

「今から言うわ。…アンナ・ノワール。貴女をG級星騎士として認め、貴女の中に宿る神槍を完全に使いこなせるようになるまで、ユリウス・ノワール、並びにフリードリヒ・ノワールの補佐と学園生活を両立する事を命じます」


 厳かな空気を纏い、俺に星騎士としての任務を下すユイ様の言葉の裏にあるものを、今の俺は読み切れずにいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!? 自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。 果たして雅は独りで生きていけるのか!? 実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。 ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

落ちこぼれの烙印を押された少年、唯一無二のスキルを開花させ世界に裁きの鉄槌を!

酒井 曳野
ファンタジー
この世界ニードにはスキルと呼ばれる物がある。 スキルは、生まれた時に全員が神から授けられ 個人差はあるが5〜8歳で開花する。 そのスキルによって今後の人生が決まる。 しかし、極めて稀にスキルが開花しない者がいる。 世界はその者たちを、ドロップアウト(落ちこぼれ)と呼んで差別し、見下した。 カイアスもスキルは開花しなかった。 しかし、それは気付いていないだけだった。 遅咲きで開花したスキルは唯一無二の特異であり最強のもの!! それを使い、自分を蔑んだ世界に裁きを降す!

処理中です...