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第一章〜幼年期編〜
星騎士の起源
しおりを挟む夕飯を食べ、食休みを挟んだ後、俺はリンとシュリに連れられてユリウスの爺さんが使っている執務室へと足を踏み入れる。
「ユイ様、おじい様、お父様…入ります」
「えぇ、入って。アンナ…退院おめでとう」
「……」
「うむ、先ずは退院おめでとう。おかえり、アンナ」
何かを深く考え込み、娘である俺に声を掛けずにいるフリードリヒを除き、ユリウスの爺さんもユイ様も笑顔で出迎えてくれた。
俺としてはフリードリヒにも笑顔で居て欲しいが…この場はなにも言えない為、2人にのみ礼を述べる。
「ありがとうございます、ユイ様、おじい様」
「さて、既にシュリから聞かされているとは思うが、御前は宣誓通りS級を超えG級という高みに登った。神槍に見初められたあの日、もしや、とは思ったが御前の成長速度は神槍の恩寵を受けているとはいえ儂等の想像を超えている」
「いえ、リンやシュリ、レイにハク…それからセイが私の要望に応えて私を鍛えてくれたお陰です」
これについては本当にそう思うからこそ、5人の指導が優れていたと口にする。
確かに、神槍の恩恵もあるのだろうが、優れた指導者と優れた環境があってこそ、この短期間で強くなれた…少なくとも俺はそう思い言葉にしたが…その答えにユリウスの爺さんは嬉しそうに笑みを浮かべている。
「ふふふ、そうか。…それ故に、今一度問う。G級星騎士として『星々の騎士団』として所属する覚悟を」
「…はい、私は王族である前に星騎士ですから。…ユイ様、『星々の騎士団』とは具体的にどういった組織なのでしょうか?」
覚悟は出来ている、そもそも前世から俺は覚悟と共に生きてきた。
それに、元々はユイ様に『星々の騎士団』の活動内容を聞く為に訪れたのだ、話の流れとしてはおかしくない質問をすると、ユイ様は穏やかに微笑みながら、逆に俺に問い掛けてきた。
「そうね、元々は私が貴女に騎士団の事を話したのだし、私から説明するのが一番よね。…じゃあ、先ずアンナに問いたいのだけど、アンナは何故、星騎士は星騎士と呼ばれるようになったか想像出来るかしら?」
「何故、星騎士は星騎士と呼ばれるようになったか…ですか?」
「えぇ、別に読み方としては聖騎士でも通用するわよね?同じせいきし、なのだから。だったら何故、態々星騎士と呼ばれるようになったのかしら?」
「…星騎士、星武器、星技…そのどれもに星の文字が入る事から、星が関係している事までは察する事は出来ますが…」
これまではそれが当たり前だと思っていた星騎士という存在。だが、確かにただ単に読み方としては星騎士よりも聖騎士と呼んでも変わりはない気もする。
だから、俺はこの場でより正解に近いであろう事を口にする。あくまで推測でしかないが。
「…そうね、…昔…気が遠くなる程の昔、始祖神と呼ばれる存在が原初の鎧というチカラを手にしました。そのチカラは強大で世界を創り直すチカラを持っていました」
「世界を…創り直す…?」
確かレイも、何時だったか始祖神という言葉を口にしていたが…世界を創り直す程のチカラを持つ存在だったのか。あまりの話のデカさに耳を疑ったが…ユイ様の眼を見る限り誇張でも何でもないのだろう。
「そう、何らかの理由で滅びの未来が定まった場合、その未来を回避する為に何度も何度も…救いという誓い…いえ、呪いを受け入れて」
「…その神は孤独だったのですか?」
「………孤独、だったのかもしれないわね、何せ世界を何度も巻き直す規格外の存在だもの、過去の自分ですらその度に巻き直していた可能性もあるわ」
「……救われませんね」
その神は愛情深い神だったのだろう、万人にとっての幸せを模索し、人間や異種族を信じ、多分何十、何百ときかない裏切りにあってでも星とそこに住む生き物を見守り続けた…自分という存在を救わなかった愚かな神。
「そうかもしれないわね、…話を戻すわね。そんな神だけど、滅びの未来なんて幾らでも存在するみたいね、種族間の戦争、天変地異…そして、外宇宙から来る存在」
「外宇宙…の、神…」
外宇宙の神、その言葉から察せられるのはこの世界の物理法則や概念を超越した神なのだろう。
「当時の一般的な剣や槍、亜種族の爪やドラゴンのブレスでは到底傷なんて付けられない存在だったのは確かだわ、何とか撃退は出来たけど、始祖神は激しく傷付き、傷を癒す為に大地と一体化になって眠る前に始祖神は考えたの───自分に比肩する、うぅん。それより劣っていても良いからより多くの戦士を育てようと」
「…それが、星騎士の起源…なのですね」
人間至上主義、という訳ではないが種族としての多さは他の種族よりも多いであろう人間、そんな人間が作り出した剣が役に立たず、亜種族の牙や爪も通らない。更にドラゴンのブレスも届かないなんて、ほぼ全ての種族が何も出来ないと言っているようなものだ。何度も世界を創り直す事が出来る神でも深い傷を負って尚、撃退するのがやっとだった。
俺の言葉に、首を縦に振るユイ様の表情は、当時を思い出すようにとても暗かった。
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