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第一章〜幼年期編〜
試験の結果
しおりを挟む翌日、ベッドに横になっているとスーツに身を包んだルドルフと、その後ろで牛乳瓶の底みたいな眼鏡を掛けたシュリが病室へと入ってきた為、上体を起こし2人に視線を向ける。
「アンナ殿下、意識が回復なされたようで…御気分は如何でしょうか?」
「ごきげんよう、ルドルフ理事長。この様な格好で失礼致します。大分回復はしましたが念の為検査入院を…との事でして」
「いえ、お気遣いなく。御自愛下さい、…早速ですが試験中に採取したデータを提示し、その上で陛下がどの等級に所属して頂くかを御説明させて頂いてもよろしいでしょうか?」
昨日シュリから聞いていた通り、学園側では既に俺をどのランクの星騎士として所属させるかを定めていたようだ。あの戦いでそれを定めた、というのは少し気掛かりではあるが…今の自分が、どの程度の力を有しているのかデータを表示出来るというのであれば興味はある。
「えぇ、問題ありません」
「では、此方が殿下の最大パラメーターとなります」
アンナ・ノワール
攻撃力:G
防御力:A+
俊敏性:S+
魔力量:S+
魔力操作技術:S+
魔力の質:G
成長性:測定不能
「防御力以外は軒並みGかSですね、この+、は何なのでしょうか?」
ドラ○エや、ポ○モンのように数値化されるのではなく、Fから始まりSで頭打ちなのは前世で触れたウルガルド学園と同じだが、見た事のないG表記と+、Gは以前ユイ様と話した時に出てきたから何となく理解したが+は分からない為、素直に質問する事にすると、眼鏡をうざい位に指先で掛け直すシュリが手を上げる。
「はーい、それはシュリちゃんから説明しますね~?」
「よろしくお願い致します」
「簡単に言ってしまうと防御力を喩えに出すならA以上、S未満です~、瞬間的にはSに切迫するけど、常時Sかと言われるとそうでもない、ただ、アンナ様の場合魔力の質がGなので『破壊』という権能が並の魔法や物理攻撃を文字通り身体に届く前に破壊してしまうので、あまり意味ないかもです~」
「なるほど、漏れ出る魔力を断ち斬るだけの攻撃力や技能が無いと身体に届く事すらない、と?」
「そういう事です~」
何とも攻撃的な身の守り方ではあるが、その方が俺らしくもある、逆説的に言うならリンやシュリクラスの星騎士の実力者以外は、文字通り触れる事すら出来ないって事になるが。
だから、俺はそれ以外に気になった事を問う。
「なるほど、…ちなみにこの成長性というのはどういったものなのでしょうか?」
「これはですねぇ、文字通りアンナ様がこれからどれくらい成長出来るかというある程度の見通しですね~、アンナ様、アンナ様が初めて星武器を出した時にリンちゃんが神槍関係で言ってた事を覚えてますか~?」
「神槍…なるほど、進化ですね?」
一番最初に言われた事を思い出す、俺には火、雷、風、音…破壊の属性魔法と他にも“進化”に纏わる能力が宿っているだろう、という事を。
時間と空間の属性魔法は元々扱える素養があったのか、それとも神槍が齎す恩恵かはさておき。この場に於ける成長性が何なのかは理解した。
あの神槍の本来の持ち主の神話もある程度知っている身としては何故、“俺如き”があの槍を扱えているのかは分からない、という謎も浮上してきた訳だが。
そんな俺の懸念を知ってか知らずか、シュリは“進化”という言葉を使い話を締めくくる。
「その通り~、シュリちゃんを始め、ルドルフ理事長もえら~い科学者さんも、神槍が適合者にどれだけの成長を齎すのかは分かっていないのが現状だし、アンナ様のこの3ヶ月のデータをまとめても将来的にどれだけ成長…うぅん、進化するのかなんて分からないのが現状です~」
「ただ、少なくとも今の状態でも充分S級としての実力はある、と当学園では判断致しました。その上で殿下には、G級クラスとして学園に所属して頂きたく存じます」
「G級…ですか、それは全てのパラメーターを判断材料として考慮した結果…なのでしょうか?」
ウルガルド学園の理事長であるルドルフがG級と定めたのであれば、俺の星騎士としてのランクもその内Gクラスであると認定されるだろう。
色々と不安が無い訳ではないが、この辺りは退院して帰国してからユイ様やフリードリヒから話が上がるだろう。
「はい、最初はシュバルツ試験官や他の教師の皆様とも話し合いS級クラスに編入して頂こう、という話になったのですが殿下の規格外の攻撃力と魔力の質は紛れもなくS級を超えていますので、特別顧問の指導の元、神槍の力をコントロールする術を身に付けて貰う事になりました」
「特別顧問…ですか?その方はもしかして…」
「はーい、シュリちゃんで~す!」
「シュリが、ですか…」
「あんまり驚かないんですね~…?」
「そんな気はしていましたから、これからもよろしくお願いしますね、シュリ」
「ふふ、はーい。此方こそ~」
正直シュリが教師なら安心、というのはある。普段の言動からして忘れがちになるが、デバイスの扱いに精通しており、尚且つリンの次位に戦闘力が高く、何より教え上手なシュリなら問題なく学園生活を過ごせるだろう。
にこにこと笑みを浮かべるシュリにつられて笑みを浮かべながら、俺はそんな事を思っていた。
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