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第一章〜幼年期編〜
初めての星戦
しおりを挟む「………これが、私の星武器…?」
(ゲームの中でアンナが使っていたのは確か槍…だった筈だが…、それに夢の中では…)
︎︎ あの槍では無い事に…剰さえ夢に出てきた太刀でも無い事に思う所はあるが、やっと俺の武器が出せた。
︎︎ 双剣なのか銃なのか良く分からない武器だが、俺の感がこいつは剣であり銃である…そう言っている。
︎︎ 軽く振ると空を斬る音を立てる、重厚な造りだが不思議と差程重くは無い。
︎︎ 気になる点があるとすれば本来銃に存在する筈の弾倉が無い点だが…。
「………なるほど、それがアンナ様“個人”の星武器…ですか。」
「ッ!?」
「これを受けますか、アンナ様が乳児の頃からお仕えしていましたが…着実にご成長なされている様で嬉しゅうございます」
︎︎ 3m位は離れていた筈のリンが瞬きすらしていない一瞬の内に目の前に肉薄していた事に驚く暇すらなかった、流石は神速を誇る麒麟族とでもいうべきか、3m程度では余裕でリンの間合いらしい。
(いや、それだけじゃない…今のは無拍子だ。)
︎︎ 非常に柔らかい太刀筋で袈裟斬りに振るわれた斬撃を双剣を交差させ何とか受け切る。
︎︎ 予備動作である“起こり”を一切感じさせない太刀筋、受け止められたのは生前培った“感”の賜物だ。
︎︎ たまに忘れそうになるが、今の俺は8歳児の身体だ、タッパもなけりゃリーチもない、手に持った得物が銃でもあった事に感謝してもし切れねぇ。
︎︎ …問題は、リンの身のこなしと速さ、そして卓越した剣の腕だ、やっぱ只者じゃねぇ…。
「成長を確認出来て何よりです、…さ、降参し「まだ…だ…」…これ以上は怪我をさせない自信がありません」
︎︎ 上等…ッ!!
︎︎ 交差した双剣を前面に押し出し距離を取る、右の双剣を握る手を真上に撃つ事で弾丸を打ち出す。
︎︎ 途端、俺の中の魔力がかなり削られた感覚に苛まれるが…どうやら弾倉は俺自身であり、弾は魔力を消費する事で次の弾を打ち出せる仕組みのようだ。
「……何処を狙っているのですか?…早々に終わらせるとしましょう」
「2…、1……」
︎︎ 今だッ!!
「0!」
︎︎ パン
︎︎ パンパン
「ッ!?」
︎︎ リンが息を呑む気配を感じたが全神経を集中している今の俺には差程気になる情報ではない。
︎︎ 左右の双剣銃が乾いた音を連続で立てる、各々角度を変えてだが。
︎︎ 速さで勝てないなら俺は罠を張るだけだ、一発目は言わばビリヤードでいう的玉、狙いは2発目以降の銃弾で弾の弾道をずらしリンの動きを制す事。
︎︎ 俺の予想通り、弾丸はフィールド内を四方八方に飛び交う。
︎︎ “何故か、絶対とも思えるフィールドを弾丸が当たった箇所にヒビを入れながら”
(これで…!?)
︎︎ 然し、次の瞬間ぞわっと、全身が総毛立つのを覚える。
「───良くぞ此処迄…、私も本気を出すとしましょう…『星技・麒麟』」
「全身に雷を纏った…!?」
︎︎ それは目の前の女が莫大な魔力を雷に変換させ、その身に落雷を受ける事で全身に纏ったからである。
︎︎ 近くに居る俺が良く分かる。
︎︎ これは…勝てない。
︎︎ 周囲にあるもの全てを破壊してまわる台風か、雷そのものみてぇな力と存在感に圧倒される、一撃でも入れられたら終いだ。
︎︎ ───だからって、潔く負けてやるつもりは毛頭ないが…!
「…その意気や良し、行きます。アンナ様…!」
︎︎ 俺の戦意を汲んでか、リンは真っ直ぐに向かってくる。
「───五重奏の弾丸クインテット・バール!」
︎︎ パン
︎︎ 五度目の乾いた音を伴い弾丸を的確に狙い撃つ。さっきまでと同じ様に、各々の弾丸はフィールドにヒビを入れ跳弾し、リンの機動力を奪う形で彼方此方へ飛び交う。
︎︎ 最後の力を振り絞り放った弾丸は真っ直ぐに向かってくるリンの胴体を正確に狙い、残り四発も各々四肢を掠めたように見えたが…。
「───お見事、麒麟を発動していなければ避けられませんでした。」
︎︎ …背後からリンの声がしたのを確認すると同時に、俺の意識は奴の手で刈り取られた。
◆❖◇◇❖◆
︎︎ アンナ様の意識を刈り取りフィールドを解除すると背後から見知った二つの影が近付いてきた。
「お疲れー、リンちゃん大丈夫?かなりボロボロだけど」
「シュリにレイ…見ていたのには気付いていましたが…」
「お主が麒麟を出すのは久方振りではないか?…まぁ、あの弾丸を躱すにはそれしか無かったとわしは思うがのぅ」
︎︎ 確かに、と私は頷く。
︎︎ 弾丸を打ち出す銃は差程脅威ではない。
︎︎ 如何に威力があろうと真っ直ぐにしか飛ぶ事の無い弾…軌道さえ読めれば避ける事自体は可能だからである。
︎︎ アンナ様もそれは分かった上で全魔力を五発の弾丸に託し行動に移したのだろう。
︎︎ 私が今ボロボロなのは偏にアンナ様の戦闘技能が私の予想を大きく上回っていたから…これに尽きる。
「はい、…とても初めて星戦をしたとは思えない戦いぶりでした、並の星騎士なら圧倒出来る程の戦闘能力ですね」
「確かにねー、空を飛べるアタシとかセイちゃん以外は難しいんじゃない~?あれ見てよ、フィールドにヒビが入るなんてアタシ聞いた事ないもん、しかも何箇所も」
「…威力だけならS級すらを凌ぐ…そしてそれを活かす才能ですか…末恐ろしい方ですね」
︎︎ フィールドが外側からの脅威に絶対的な防衛能力があるのは先程授業で説明したが、内側からの脅威にも強い事は実戦の中で説明しようとした矢先、ヒビを入れられ私は内心驚愕していた。
︎︎ 光速に至る速度の斬撃の影響すらヒビ一つ入らないフィールドにヒビを入れる等、私が知る限り存在しないからである。
「お疲れ様でした、皆さん」
︎︎ ふと、ユイ様の声が聞こえ無作法であると知りながらも私は傅く。
「ユイ様、斯様な姿で申し訳ありません」
「いえ、構いません。少々想定外の事があったようでしたが、そのヒビはアンナの魔力の“質”に関係があるようですね」
「その様ですな、恐らくわしの結界ですら貫通するかと」
︎︎ 私よりも魔法方面の知識に富んだレイが進言する、彼女は世界でも有数な結界術と弓術の使い手だ、その彼女の結界すら凌駕する時点でアンナ様の攻撃力は未知数と言って良いだろう。
「それ程とは…将来有望ですね、…リン、レイそれからシュリ、引き続きアンナをお任せしても?」
「「御意」」
「了解でーす」
︎︎ 私とレイ、そしてシュリの声が重なる。
︎︎ふと、ユイ様が考え込む様に続ける。
「頼みます、…それから、3ヶ月後にウルガルド学園からルドルフ理事長が直々に来るようです」
「あの御仁が…ですか?」
「えぇ、恐らく…いえ、十中八九アンナの力が狙いでしょう」
︎︎ あの方が来る、それはアンナ様にどの様な影響を齎すのか…私はそれを知っているが故に、そしてユイ様の御心を慮るがあまり口を閉じるしかなかった。
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