ダゥルパイア

ミライ

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馬鹿と天才と変態

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エンゼル
「ナレルさん!ナレルさん!」

部屋の掃除を済ませ
お嬢様の食事の準備を進める中

いつの間にか侵入して来た駄犬…ではなく
エンゼルが話しかけてくる

ナレル
「どうしました?最初の文は私の独り言から入るのはお約束だと言うのに」

エンゼル
「おやくそく?」

ナレル
「こちらの話ですので、お気になさらず」

包丁片手に
野菜を次々と切って行く最中

ナレルは横で自分の顔を見上げる
エンゼルに話す

ナレル
「何か御用ですか?お食事でしたら、
もうすぐできますので、大人しく待っていて下さい」

エンゼル
「ナレルさんは元人間なんですよね?」

ナレル
「そうですよ」

野菜を水を張った鍋に入れながら
IHコンロのスイッチを入れる

ナレル
「そこに手を置いてると危ないので
少し離れてください」

IHコンロに手を置いてるエンゼルを
優しく放して

切ったニンジンの一部を
エンゼルの口に運ぶ

ぽりぽりとニンジンを飲み込み
再びナレルに問いかける


エンゼル
「まだ人間だった時ってどんな人だったんですか?」


すると少し間が空き
ゆっくりと口を開く


ナレル
「私が人間だった頃は…いや、もうすでに”人間”とは
仲良くできませんでしたね」


エンゼル
「?」

いまいち言葉の意味を理解できない様子のエンゼルに対し
構わず話を続ける

ナレル
「私は人間の中でも、盗賊の子供だったんです」

エンゼル
「とーぞく?」

ナレル
「人間の中でも、人間の輪に入れず、好き勝手する集団ですよ」

煮える鍋に様々なスパイスと呼ばれる粉を入れながら
話を進める

ナレル
「まぁ、魔物以外にも、他の人間まで敵に回すんです
私がまだ、幼い時点で、両親も仲間も死んでしまいましたがね…」

とうもろこしの缶詰を開けながら
鍋とは別の切った野菜を混ぜる

ナレル
「私は逃げる事が出来ましたが、正直いつまで生きられるか
当初は怯えていました…」

鍋の様子をうかがいながら
時々、鍋の中をかき回す


漂う良い匂いに
エンゼルの鼻がクンクンと動く

ナレル
「何もかもに警戒し、生きようとする私を
拾って頂いたのが、お嬢様のご両親でした」

テーブルの椅子を持ち出して
隣で椅子の上に立ち
鍋の中を覗くエンゼル………


ナレル
「話、聞いてます?」


その声にビクッとしながら

エンゼル
「あ、はいっ!きいてましゅ!」

よだれを慌てて袖で拭く

やれやれと話を続けた


ナレル
「私はとても愚かでした、そんないやしい存在である
私に服を…食事を…そして、仕事を与えて頂きました
人間からは決して与えてもらえなかった」



”生きていて良い”

”存在しても良い”

”必要とされている”



ナレル
「私は生きる希望を感じ
そして、この方々の為に…生まれて間もない
お嬢様に、命に代えても恩を返すと誓ったのです」


エンゼル
「なるほどですね」

ナレル
「まぁ、人間の身の私はあっという間に成長し
吸血鬼であるお嬢様は、いつまで経っても幼く
お嬢様が言葉を発する時には
もう寿命が来ると思っていましたが…」

エンゼル
「来なかったんですか?」

ナレル
「人間の襲撃ですよ」

炊飯器の炊き立てのご飯を
しゃもじで混ぜる

ナレル
「正義と言う名で、人間から見たら異形の者、
聖なる加護や、神聖の武器は悪を浄化するなど…
正直、人間の方がよっぽど、醜い…」

エンゼル
「吸血鬼から見たら、人間はエサで、食べ物ですもんね」

ナレル
「ははは、そう考えるのは、よその種族のみですよ」

エンゼル
「そうなんですか?」

ナレル
「私は一度も血を吸われた事がありませんよ」


吸血鬼にとって、人間の血は娯楽だったり
若返りの秘薬など、その程度、
しかも、すべての人間の血にその効果があるわけでは無く
絶対に吸わなければ、死ぬと言う事もない…


ナレル
「偉大なるヴァンパイアの皆様が本気になれば
一晩で、人間なんて、絶滅しますよ」

エンゼル
「たしかに………完成ですか?」

ナレル
「もうひと煮込み致します」

エンゼル
「そうですか…」

ナレル
「ああ、味見をお願いできますか?
私は基本、舌が無いので、味見が出来ませんので」

エンゼル
「よろこんで!!!」


ナレル自家製スペルシャルカレーを味見しつつ
甘さと辛さのハーモニーに自然と尻尾も踊りだす


ナレル
「まぁ、その襲撃の中、私はお嬢様を抱きかかえ、
屋敷を離れましたが、傷が深く
物凄い未練を残し、死んだのを覚えています…」

エンゼル
「じゃあ、まだ、赤ちゃんだった、ご主人が
一人で生き抜いたんですか?」

ナレル
「それはそうなんでしょう、お嬢様は吸血鬼の中でも
それは、飛び抜けて強い魔力をお持ちだったそうですので
自覚は無いにしても、すべての人間を殺し、
この屋敷に戻って来られたのでしょう…」


しっかり、とろみが出てるのを確認し
テーブルの上にお皿を並べる

ナレル
「私が次に目を覚ました時
お嬢様の魔力を全身に感じながら
暗闇の中、お嬢様の後ろ姿が見えました」

ご飯を盛り付け
その上からカレーを注ぐ………

ナレル
「姿は変われど、一目でお嬢様だと、わかりました………」

エンゼル
「大盛でお願いします!」

ナレル
「はいはい、それにしても、愛くるしいお嬢様が
美しくカッコよくて、可愛らしい見事に
パーフェクトなお嬢様になったお姿………」

エンゼル
「緑茶ですか?ウーロン茶ですか?」

ナレル
「お嬢様はお食事時でもコーラを召し上がられる、気分によってはお茶ですが
基本はお嬢様がお座りになられてから、伺いましょう」

エンゼル
「はいっ!」

ナレル
「ああ、お一人でさみしかったに違いない、しかし、現代社会に
見事、馴染まれて、やはりお嬢様は天才なのです!」

エンゼル
「ナレルさんも、あの黒い板を使いこなしてます!」

ナレル
「もちろん、お嬢様が、私に伝授して下さったのです!」

丁寧に、教えて頂いてる最中も…あああ、可愛らしいお嬢様が
私なんかの為に、こうしてお教え頂けただけでも…

ナレル
「鼻血ものでしょう?ね?」

エンゼル
「ごめんなさい、その”同意だけは”求めないで下さい
噛みつきますよ?」

ナレル
「まったく、噛み癖はどうにかしてくださいね」

エンゼル
「あなたは油断すると、変態に成り下がりる可能性があるので
牙だけは、しっかりお手入れしてます」

そしてナレルに向かって
ニカっと歯を見せた

ナレル
「まったく、ありえませんよ!」


するとカレーの匂いに誘われて
主の吸血鬼が部屋から出てきた

セレス
「カレーか、ナレル、飲むヨーグルトくれ」

ナレル
かしこまりました」


セレスは席に着くと

セレス
「何の話をしていたんだ?」

エンゼル
「ナレルさんが変態になったら噛みますって話です!」

セレス
「許可する、いつでも噛んで良いぞ」

そこにナレルが戻ってき
セレスの前にコップを置いた

ナレル
「やめてください…案外、痛いんですよ?」


エンゼル
「痛いで済んじゃうんですから、もっと顎を鍛えないと」

セレス
「うんうん、頑張ってくれ」

エンゼル
「はいっ!!」

ナレル
「やめてくださいっ!!!」


ははははは!……

……………

………






……そして

セレスの空白の時間については

また後ほど、語る時が来るでしょう………







たぶん………
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