名の無い欲

光猫

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いつもは15分かかる所を7分程で着いた。コンビニ周辺を見渡すと、喫煙スペースでしゃがみこんでいる岬を見つけ、駆け寄った。息を整えながら岬に声をかけた。
「岬、先輩、、」
「あれ、雪君……」
「なんだか心がザワザワして、何かあったんじゃないかって、」
「ははっ、優しいね、雪君は、頬も鼻も真っ赤だ……」
岬は身につけていたマフラーを僕に巻いてくれた。微笑んでるのに今にも泣きそうな表情をしていて、僕は岬の手を掴んで家へと向かった。
「え、雪君どこ行くの?」
「僕の家です」
言葉は交わさなかったが、家に着くまで手はずっと離さなかった。

「お邪魔します、」
そう言って岬は申し訳なさそうに靴を脱ぎ、部屋に上がった。
暖房はつけっぱなしだったため、暖かい飲み物を入れて岬に差し出した。
「これ、飲んでください」
「ありがとう」
「あの、余計なお世話だと思うんですけど、心配で、何かあったんですか?」
少しの沈黙の後、独り言のように話し始めた。
「今日、今日ね、俺の番の命日なんだよ。毎年この日が来ると寂しくて死にそうなくらい。あぁ、もう俺の愛した人がこの世に居ないんだって、、」
「居ない世界に慣れたいけど忘れられないほど、自分が思っていたほど、彼のことを俺は愛してたんだって……」
岬は静かに泣いていた。それを僕は聞いてることしか出来なかった。それと同時に僕は岬を抱きしめた。
「ごめんね、独りだと、消えたくなっちゃうから、迷惑かけてるのに」
僕は何故か泣いていた。溢れる涙を押し殺すように、
「謝らないでください。迷惑なんかじゃないです。僕で良ければいつでも頼ってください」
「ごめんね、、ありがとう、」
時刻は深夜3時半、岬が少し落ち着いたのを見て僕は安堵した。そしてどっと疲れが押し寄せ、そのまま眠りについた。

アラームで目が覚める。スマホで時間を確認しようと手探りで動かすと髪の毛に触れた。見ると岬が僕に抱きつくように眠っていた。
「岬先輩、起きてください」
「んん、おはよう雪君」
「岬先輩今日大学は?」
「3限目から、」
「僕、2限目からなので先に家でますね、」
「いや、俺も一緒に出るよ。」
「分かりました」
僕は身支度を済まし岬と一緒に大学へと向かった。途中、岬は喫茶店で時間を潰すといい、喫茶店まで一緒に雑談しながら歩き、僕は1人で大学へ向かった。
後ろから僕を呼ぶ声が聞こえた。後ろを振り返ると寧々が手を振りながら駆け寄ってきた。
「おはよう!雪くん」
「おはよう珍しいね、朝から会うの」
「そうだね~!、、ん?雪くんってタバコ吸うの?」
「え?吸わないけど、、」
「なんか雪くん珍しくタバコの匂いする」
「もしかしたら、よく喫煙可のお店に行ったりするからかも」
「きっとそれだ!雪くん今日何限目まで?」
「えっと4限目までかな」
「僕も一緒だ!ねぇねぇ雪くん今日2人でご飯食べない?相談があるんだけど、、いいかな?」
「もちろんだよ、じゃあ終わったら連絡するね」
「やった!楽しみだな、雪くんとご飯~!」
ウキウキとしてる寧々が微笑ましく見えあまりにも嬉しそうだったので思わず笑ってしまった。
寧々とわかれ、講義のある部屋へ向かった。
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