ガンスネーク

こんろんかずお

文字の大きさ
上 下
3 / 12
俺達の聖戦チョコレートウォー

小雨の降る帰り道に

しおりを挟む
 あれは一月前のことだった。

 俺は学校の帰り道の途中にある公園で、ダンボールに入っている子猫を見つけたんだ。

 目はつぶらな瞳で真ん丸く、体は片手に余裕で乗るくらい小さくて、ニャーニャーと、か細い声で子猫は泣いていた。

 この日は小雨が降っていた関係か、ダンボールが濡れないよう雨傘で固定されており、ダンボールの外側にはガムテープで張られた白い紙に大きな文字で「拾ってください」と書かれていた。

「困ったな……」

 飼ってやりたくても、両親がアレルギー持ちで無理なんだよな。

 ……エサ代などをワリカンにしてもらって、蛇野の家で飼ってもらうか?  
 と思ったけど、アイツの家なんかでっかいヘビ飼っていたな。
 ヘビのエサになるだけの、この案は却下だ。
 
 とか子猫の頭を撫でながら、迷っていた所にパシャパシャと雨音をさせながら誰かが走ってきた。

 近くに来て分かったことだが、クラスメートの野原さんだった。
 
 彼女は何故か傘はさしていないので、大分服が濡れている。

「あ、あの……。その子猫、立花君が?」

 怪訝けげんそうな顔で彼女は俺を見る。
 
「あ、いや違うんだ、俺は今コイツを見つけちゃってさ。飼ってやりたいけど宛てが無いし、どうしたもんかと……」

 子猫はまるで俺のその言葉に呼応するようにミャーと一声鳴く。

「ゴメン勘違いしちゃって……。じゃ、悪いけどちょっと手伝って?」
「いいけど何するの?」

 彼女は無言で背中に抱えたリュックからシートを取り出し、地面に広げ、その上にリュックを置く。

 次に、リュックから皿と牛乳パックを取り出す。

 彼女の次の行動を察した俺は牛乳パックを空ける。
 彼女はシートの上に皿を置き、俺が注いでいる牛乳がこぼれないようにパックを固定させるため、そっと手を添える。
 
「ありがとうね、立花君。じゃこの皿、ネコちゃんのダンボールに入れてあげてね!」 

 彼女は俺に優しく笑い、お礼を言う。
 俺は彼女の屈託のない笑顔にドキッとした。

 そして、俺は彼女に言われるがまま、ダンボールの中に皿をそっと入れる。
 子猫はお腹が空いていたのか、無我夢中で牛乳を飲んでいる。

 俺がそうこうしているうちに、彼女はリュックから手際よく、子猫が入りそうなケージを取り出す。

 ド〇えもんのポッケか! このリュックは……。

「の、野原さん手際いいね?」

 俺は思ったことを思わず口に出してしまった。

「あ、あはは。こういうことは慣れてるから……」

 もしかして、例の『研究するか』での成果カナ……?
 それはいいとして……。

「あの、野原さんとネコちゃんが濡れたら可哀そうだし……、良かったら俺の傘貸すけど、どう?」

 それを聞いた野原さんは慌てて手をブンブン振る。

「あっ、ありがとう! あ、でも傘はあるから大丈夫だよ。家もここから近いし……」

 彼女はそう言うと、ダンボールに固定していた黄色いネコ柄の傘を手に取る。

 ああ……、そう言いことだったんだな……。

 彼女は、最初から子猫を何かしら救うつもりで、この算段にでたのだ。
 
 子猫が濡れないように、傘をさしてあげ、急いで家に帰り、子猫を救う準備をし、急いでここに戻ってきたわけだ。

 自分が濡れても子猫が濡れないようにする、その優しい思いやりの心に俺は感動したし、なんかいいなと思えた。

「牛乳も飲んだみたいだし。じゃ、私この子を連れて帰るね」
「あ、うん」

 彼女は、かがんで子猫をケージに入れようとした、その時!

ミャー!
シュッ!

「痛っ!」

 彼女はうめき声を上げる。
 ……そう子猫は警戒していたのだ。

「だ、大丈夫?」

 俺は慌てて、彼女の元に駆け寄る。

「う、うん。大丈夫………。申し訳ないけど立花君、手伝ってもらっていいかな?」
「あ、うんわかったよ」

 俺は子猫の頭を撫で警戒心をとき、軽く額をコツンと叩く。
 お前、野原さんの恩を仇で返しちゃダメだろう……。

 しばらくして、子猫が俺の手にじゃれて、警戒心をとき終えたのを確認し、子猫をつまみケージに入れる。

「えっ? 立花君すごーい、もしかして、この短期間で親と勘違いされているのかも……」
「へへ、それほどでも……」

 俺は何故か知らないけど、動物には懐かれやすく、見知らぬネコや犬によく絡まれる体質なのだ。

 俺は子猫の入ったケージを彼女に渡す。

 彼女は嬉しそうにそのケージを受け取ると素早くリュックにしまい込んだ。

「立花君、今日は色々ありがとう! またねー」

 彼女はそう言うと、嬉しそうに片手をブンブン振りながら家に帰って行った。

 そう、この時から俺は彼女のことが凄く気になりだしたんだ……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

この物語の意味を知るとき

益木 永
ライト文芸
高校一年の春、神代薫(こうしろかおる)は二年生の金住やすみ(かなずみやすみ)から突然、文芸部に入らないかと誘われる。 最終的に文芸部に入部した薫は、やすみからこの一年間の課題として、 『物語の意味』について自分なりの答えを出す事を提示させられた。 これは、ある男子高校生が最初の一年間の高校生活の中で自分なりの物語の意味を見つけていく青春ストーリー ※カクヨムで掲載したものをそのまま移植しています ※2021年8月31日に掲載終了したものを第2章以降を追加して改めて掲載しています。4月17日以降、毎日更新していきます。追記:5月4日更新の第33話をもって完結しました。

拝啓、終末の僕らへ

仁乃戀
ライト文芸
高校生活の始まり。 それは人生における大きな節目の1つである。 中学まで引っ込み思案で友達が少なかった友潟優。彼は入学式という最大の転機を前に、学内屈指の美少女である上坂明梨と与那嶺玲に出会う。 明らかに校内カーストトップに君臨するような美少女2人との出会いに戸惑いつつも、これから始まる充実した高校生活に胸を躍らせるがーー。  「……戻ってきた!?」 思い描いていた理想の日々はそこにはなかった。  「僕は……自分のことが嫌いだよ」  「君たちとは住む世界が違うんだ」 これは、変わる決意をした少年が出会いを経て、襲いかかる異変を乗り越えて日常を追い求める物語。   ※小説家になろうにも投稿しています。 ※第3回ライト文芸大賞にエントリーしています。

タナトスのボタン

早く4ね
ライト文芸
大学にも通わず市販薬を過剰摂取して自堕落な生活を送っていた主人公。ある日彼の元に1つのダンボールが届く。中を開けるとそれは次の日にはリセットされる日を過ごせるという胡散臭いボタンであったーー

先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件

桜 偉村
恋愛
 別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。  後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。  全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。  練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。  武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。  だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。  そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。  武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。  しかし、そこに香奈が現れる。  成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。 「これは警告だよ」 「勘違いしないんでしょ?」 「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」 「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」  甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……  オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕! ※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。 「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。 【今後の大まかな流れ】 第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。 第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません! 本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに! また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます! ※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。 少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです! ※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。 ※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

ダッシュの果て、君と歩める世界は

粟生深泥
ライト文芸
 町に伝わる“呪い”により祖父と父を亡くした宮入翔太は、高校二年生の春、「タイムマシンは信じるか」と問いかけてきた転入生の神崎香子と知り合う。その日の放課後、翔太の祖母から町に伝わる呪いのことを聞いた香子は、父と祖父の為に呪いの原因を探る翔太に協力することを約束する。週末、翔太の幼なじみの時乃を交えた三人は、雨の日に登ると呪いにかかるという深安山に向かい、翔太と時乃の話を聞きながら山頂で香子は試料を採取する。  それから一週間後、部活に入りたいと言い出した香子とともにオーパーツ研究会を訪れた翔太は、タイムトラベルについて調べている筑後と出会う。タイムトラベルに懐疑的な翔太だったが、筑後と意気投合した香子に巻き込まれるようにオーパーツ研究会に入部する。ゴールデンウィークに入ると、オーパーツ研究会の三人はタイムトラベルの逸話の残る坂巻山にフィールドワークに向かう。翔太にタイムトラベルの証拠を見せるために奥へと進もうとする筑後だったが、鉄砲水が迫っていると香子から告げられたことから引き返す。その後、香子の言葉通り鉄砲水が山中を襲う。何故分かったか問われた香子は「未来のお告げ」と笑った。  六月、時乃が一人で深安山に試料を採りに向かう途中で雨が降り始める。呪いを危惧した翔太が向かうと、時乃は既に呪いが発症していた。その直後にやってきた香子により時乃の呪いの症状は治まった。しかしその二週間後、香子に呪いが発症する。病院に運ばれた香子は、翔太に対し自分が未来の翔太から頼まれて時乃を助けに来たことを告げる。呪いは深安山に伝わる風土病であり、元の世界では呪いにより昏睡状態に陥った時乃を救うため、翔太と香子はタイムトラベルの手法を研究していた。時乃を救った代償のように呪いを発症した香子を救う手立てはなく、翌朝、昏睡状態になった香子を救うため、翔太は呪いとタイムトラベルの研究を進めることを誓う。  香子が昏睡状態に陥ってから二十年後、時乃や筑後とともに研究を進めてきた翔太は、時乃が深安山に試料を採りに行った日から未来を変えるためにタイムトラベルに挑む。タイムトラベルに成功した翔太だったが、到達したのは香子が倒れた日の夜だった。タイムリミットが迫る中、翔太は学校に向かい、筑後に協力してもらいながら特効薬を作り出す。間一髪、特効薬を香子に投与し、翌朝、香子は目を覚ます。お互いの為に自分の世界を越えてきた二人は、なんてことの無い明日を約束する。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...