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第2章 旅立ち
夜の不安 ①
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楽しい夕食の時間はあっという間に過ぎた。心のどこかで洞穴の家が心配だったけれど、ニゲルは沈みそうになる笑顔を何度も持ち上げて、あまり考えないようにした。そうしてヴェシカやラモ、マーロンとゲームをしたり、自慢の宝物を見せてもらったりして、夕食後も時間を忘れて喋り合ったのだった。
ようやくみんなに眠気がやってきた時にはすでに真夜中で、窓の外のくらやみにはいくつも小さな星が煌めいていて、大きなお月様が空に浮かんでいた。
そして、静かで安心できるおだやかな夜を、3人とも思いのほか満喫していた。みんなと別れた後、ニゲルとアーラ、マリウスは客人用の大きな部屋で、川の字になって寝そべっている。先程飛び込むようにして布団に入ったのだ。ウエンさんが言った通り、ふかふかで温かい毛布で、すぐにでも眠気がやってきそうに思われたけれど、実際は3人とも布団がいつもと違いすぎて、寝付きが悪い。興奮しているのかもしれないけれど、なかなか目をつぶれるほどの眠さがやってこなくて、おしゃべりに花が咲いている状態だ。
「ねぇ、にいちゃんは、ウエンさんとスマルさん、どう?」
「うーん。優しくて良い人だよね」
「アーラはここに来てもいい!」
ここでもおてんばなアーラは身を乗り出してニゲルを見た。
「ボクはにいちゃんにしたがうよ。まあ、この農場はご飯がすごく美味しいから、別の所って考えると、それはちょっと惜しいかな…」
そう言ったマリウスの顔を見てニゲルはクスクス笑った。うっとりとした表情で、今日食べた晩ご飯を思い浮かべている感じだ。よっぽど気に入っているのか、アーラ以上にここで暮らせる選択肢があることを喜んでいるよう。マーロンやラモとも、すっかり打ち解けていて、まるで本当の兄弟のようにも見えた。
その時、ノックの音が部屋に響いた。
コンコンコン。
3人とも、起きあがって部屋の扉の方を見る。
「はい」
ニゲルが答えると、ギイッと部屋の木戸が開いて、ウエンさんが現れた。
「もう寝ていたなら、すまないね」
続いてなんと、サフィラスもすうっと静かに部屋に入ってくる。
どうしたのだろうか。
「夜中になってすまないね。サフィラスと私、そしてみんなで話したいことがあるんだ」
ようやくみんなに眠気がやってきた時にはすでに真夜中で、窓の外のくらやみにはいくつも小さな星が煌めいていて、大きなお月様が空に浮かんでいた。
そして、静かで安心できるおだやかな夜を、3人とも思いのほか満喫していた。みんなと別れた後、ニゲルとアーラ、マリウスは客人用の大きな部屋で、川の字になって寝そべっている。先程飛び込むようにして布団に入ったのだ。ウエンさんが言った通り、ふかふかで温かい毛布で、すぐにでも眠気がやってきそうに思われたけれど、実際は3人とも布団がいつもと違いすぎて、寝付きが悪い。興奮しているのかもしれないけれど、なかなか目をつぶれるほどの眠さがやってこなくて、おしゃべりに花が咲いている状態だ。
「ねぇ、にいちゃんは、ウエンさんとスマルさん、どう?」
「うーん。優しくて良い人だよね」
「アーラはここに来てもいい!」
ここでもおてんばなアーラは身を乗り出してニゲルを見た。
「ボクはにいちゃんにしたがうよ。まあ、この農場はご飯がすごく美味しいから、別の所って考えると、それはちょっと惜しいかな…」
そう言ったマリウスの顔を見てニゲルはクスクス笑った。うっとりとした表情で、今日食べた晩ご飯を思い浮かべている感じだ。よっぽど気に入っているのか、アーラ以上にここで暮らせる選択肢があることを喜んでいるよう。マーロンやラモとも、すっかり打ち解けていて、まるで本当の兄弟のようにも見えた。
その時、ノックの音が部屋に響いた。
コンコンコン。
3人とも、起きあがって部屋の扉の方を見る。
「はい」
ニゲルが答えると、ギイッと部屋の木戸が開いて、ウエンさんが現れた。
「もう寝ていたなら、すまないね」
続いてなんと、サフィラスもすうっと静かに部屋に入ってくる。
どうしたのだろうか。
「夜中になってすまないね。サフィラスと私、そしてみんなで話したいことがあるんだ」
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