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春風小路二番町胡桃堂こぼれ話
※御新造と湯 其の五
しおりを挟む桃色に染まり汗と蜜に濡れた体が、障子の淡い光で浮かび上がる。
くるみは足の浴衣の上へ突っ伏し、荒い息をついている。肺腑から全て残さず吐くような、深く荒い息づかいだ。白い内ももも震えている。小さな肩が上下して、先ほど果てた快楽の強さを示していた。
「あぁ……ん。う、ん」
足の指はまだ、熱い蜜壺の中である。濡れそぼったそこは赤く充血し、男の指をひくり、ひくりと締めあげる。まるで、おのれを高みに押し上げたものの形を確かめるように絡みつく。
「くるみはほんとに、可愛いねえ。ここがちゅうちゅう吸いついて、俺の指を大好きだって言ってるよ」
「あん、あ、あう、ううっ」
「ああ、そんなに締め付けたら抜けないよ」
「ひ、う、うううっ、あああっ」
濡れた音を立てながら指を引き抜く。うつ伏せに崩れ落ちたまま、滑らかな肌の背中を反らしてくるみは啼いた。こぷりこぷりと蜜が溢れ柔らかな太ももを濡らす。敷いた浴衣は大きな染みができている。
洗いたての長い髪は乱れ、白い肌にはりつきずいぶんと艶めかしい。普段は真面目で健気、恥ずかしがり屋のくるみだが、こうして睦み合うたびに、いとしい妻はこれほどまでに妖艶であったのかと足は驚く。おのれの腕の中で花開く妻が、いとしくて仕方ない。
足は前へ屈み、くるみの髪へ手を伸ばした。
「どこもかしこもきれいで可愛い。くるみはほんとにいい女だよ。ああ、この髪も、黒々として、美しいったらない」
長い髪を、乱れぬように指で丁寧にくしけずる。
あらかた乾いているけれど、頭は汗で湿っているから、また洗った方がいいだろう。絡まないようによけ、肩口から前へ流してやる。
「あぁ……」
もう、何をされても気持ちいいのだろう。くるみはうっとりとろけた声を出した。
本当に、くるみは可愛い。
奉公人がお店で働く真っ昼間、はじめは声を抑えようとしていたのに、途中から小さな花の唇は悩ましく開かれて、甘い声を聞かせてくれる。
感じやすい素直な体は、快楽に慣れるどころか弱くなっていくようだ。それでいて、前よりもっと足を欲しがるのだから……。
「嬉しいったらないよ」
足はひとりごち、くるみを体で覆い包み込む。はやる気持ちを抑えながら細い腰を引き寄せ、熱くとろけたその場所へ、おのれ自身を当てる。
「……ッ」
くるみの声にならない吐息とともに、濡れそぼった女の場所が男を受け入れようと吸いついてくる。入り口に当てるだけでも、いつもよりそこが熱いのがわかる。
あがってからしばらく経つのだ、風呂のせいではないだろう。可愛い尻の割れ目を広げられ、前も後ろもとっくりと眺められ、よほど恥ずかしかったとみえる。
ふわふわと柔らかく、熱く絡みついてくる、くるみのそこは極楽だ。いつも以上に熱いそこを一気に貫きむさぼれば、どれほど気持ちいいだろう。
くちゅり、くちゅり。
堪え性もなく先走りをにじませている先を、熱い筋へ押しつけなぞる。
「うううっ、うん、んっ、ふ、あ、あ、ああっ!」
組み敷いた小さな体がくねる。物欲しげに自分から動く柳腰を抱え、おのれをそこへ押しつけて、足はくるみを後ろから貫いていく。
「くるみ、くるみ。花よりきれいな可愛いくるみ。お前さんのあかぁい極楽に寄せておくれ」
「あ、あ、あ……」
いつもなら入り口すぐ、ざらざらとしたくるみの感じる場所を、たんまり可愛がってから奥まで貫くのだが、今日の恥じらい乱れる妻の姿は、ことのほか足を煽った。
辛抱ができない。
妻の艶姿にはち切れんばかり、固く熱いそれでくるみの中を貫いていく。ふわふわと柔らかくほぐれてとろけ、絡みつく熱い肉をかき分けながら、一番奥まで繋がろうと体重をかける。
「お前さんの中、いつもより熱い……。恥ずかしい所を見られて、すっかり気持ちよくなっちまったんだね? 可愛い、可愛いねえ」
「ああ……あ、あ、あう、う」
貫いた先、一番奥は、ねだるように足のものに吸いつく。足はくるみの小さな体を抱きしめて、大きくゆっくり腰を動かし、奥をじっくりこね回す。
くるみはすすり泣きながら身をよじろうとするが、抱え込んだ足の腕はそれを許さない。そのまま両の胸へ触れ、やわやわと揉みしだき、くるみの耳元にささやく。
「お前さんのここは、浴衣にこすれるだけで、ひとりでに気持ちよくなるくらい……感じやすいようだねえ」
「あ、あ、ああっ、あん、あう、うううっ」
「感じやすい、素直な体はいいものだけど。自分だけで気持ちよくなるなんて、いけない体だねえ、くるみ」
「ひぃんっ!」
胸の先を指で捻ると、くるみの体はきゅうっと足のものを締め付けた。危うく果てそうになる。くるみの極楽はうごめいて、足に絡みついて離さない。
「どんどん可愛く、きれいになって。どんどん色っぽくなって。くるみ、ああ、たまらない」
「ああっ! あ、あう、ああっ、あんっ!」
「お前さんの夫は、お前さんが好きで、好きで、おかしくなっちまった哀れな男だよ。お前さんに触れずにいられない」
「あう、ああっ、あっ、あっ、ああっ! あ、あんっ!」
「後生だから、ねえ、哀れな男を許しておくれ」
一番奥を固く張り詰めた足自身にこね回され、胸の先を指で弄ばれて、足の腕の中でくるみは悶えた。敷いた浴衣をにぎりしめ、たまらないとばかりに何度も首を横に振る。
たまらないのはこちらの方だ、もっとじっくり中を可愛がりたかったのに、足にはもうその余裕がない。妻をすすり泣かせながらぎりぎりまで引き抜くと、一気に奥まで深く貫く。
「あああああっ!!」
腕の中から、悲鳴に似た快楽の声があがった。
いとしい妻の小柄な体へのしかかり、抱え込み、突き上げる。それは獣の交尾そっくりだった。我を忘れ、愛するくるみをただただ求めて責め立てる。互いが繋がるその場所は、激しく淫靡な音をたて蜜を散らす。
「好きだ、好きだよ、可愛いくるみ。お前さんが、好きで、仕方ないっ」
「あああ、ああっ、あっ、あん、あ、あ、あっ」
「くるみ、くるみ! 可愛いくるみ! 大事な、大事な、いとしい、くるみ」
「あんっ、あっ、あああっ!」
「いつも、いつまでも、一緒だよ!」
「あっ、あん、あ、ああ、ああっ、ああああああっ!!」
「ッ!!」
くるみの中がひときわうねり強く締まる。激しく責め立てられた恋女房はうなじまで赤く染め、甘い声をあげて達する。その最奥で足も果てた。精をねだり吸いついてくるそこへ、こみあげるままに、何度も熱を注ぎ込む。
「くるみ……」
足は絶頂におののくいとしい妻をひしと抱きしめ、その耳元に、愛の言葉をささやいた。
◇
その日、胡桃堂の御新造の髪はなかなか乾かず、夕飯の支度にも姿を見せなかった。おのれの手料理を夫に食べてもらい、喜ばれるのが大好きな御新造には珍しい。
皆でとる夕食にも出てくることなく、部屋まで旦那が食事を運び、夫婦で仲良く食べていたようだ。
「まあ、うちのお店は、ご夫婦の仲睦まじさも看板のようなものだから」
大体の所を察した奉公人たちは、番頭の言葉に苦笑しながら同意した。彼らの生ぬるいまなざしもどこ吹く風、旦那は終始ご機嫌であった。あとなんだかつやつやしていた。
翌朝顔を出した御新造といえば、前日の余韻を引きずり、それはもうぽわぽわと幸せそうで色っぽく、「これはいけない」「目の毒」「お店に置けない」と、すぐに部屋へと戻されて、散々、福鼠にからかわれたという。
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