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春風小路二番町胡桃堂こぼれ話
※ふたりが迎えた記念の夜に。
しおりを挟むくるみに酔う。
組み敷いた小柄な体に、肌のかおりに、髪の柔らかさに、可愛い妻のすべてに酔う。
暖かくてなめらかな肌に指をすべらせて細い体の線をなぞり、両手で腰から上へとなであげる。一度くるみの中へ入ってしまったら際限なくむさぼってしまうことはわかっていたから、足はことさら丁寧に妻へ触れる。
「くるみ……」
「あ……っ、ふ、う、んんっ」
愛らしい唇からもれる切れ切れの吐息は甘くはかない。まだ胸にも触れていないのに、胸の先はつんと尖って、触れてくれと言っているようだ。そこを避けながら、足は両手で柔らかな膨らみを包み込む。
「柔らかくて、暖かくて、愛らしくて、なのにとっても色っぽい。くるみはほんとに、いい女だねえ……」
ふっくらした胸をやわやわと包みながら、肌と愛らしく赤い場所の境を親指でくすぐる。あ、あ、とくるみの嬌声が高くなった。細い体がくねる。
「くるみ、くるみ、可愛いくるみ。まだ、肝心なとこには触っちゃいないのに、そんなに気持ちいいのかい?」
くるみは高い声を出したことが恥ずかしいのだろう。声を抑えるためか指を吸って、うん、と上気した顔で小さく頷いた。細い脚が足の脚をすべる。すき、すき、と言われているかのようだ。
どんなに大変な日々の中でも、かわらぬ信頼と愛情をまっすぐ示してくれる愛しい娘は、祝言をあげて一年が経ってもなお初々しい。そのくるみが、閨では熱と欲の浮かんだまなざしをこちらに向け、自分から脚をからめてくるのだからたまらない。
足は華奢な体を手のひらで撫で、その可愛い耳に舌を這わせる。
「ああ、そんなにとろけた顔をして。男を煽ってねだるなんて、罪作りなことをして。悪いコだね、くるみ。とっても可愛い、悪いコだ……」
「ん……ぅ」
「悪いコにはお仕置きだよ」
耳にささやいて、ぴん、と両の胸の先を弾く。
「ああっ!」
白い肢体が跳ねた。足はそのまま、ぷっくり腫れたふたつの先を指先でくすぐり、弾き、摘まみ、こね回す。
「狂わす男は金輪際、俺だけにしておくれ。ね? お前さんが褥の上でも、どれだけいい女か……。知っているのは俺だけだよ、約束だ」
「あ、ああ、んっ、うう、あ、あ、ひぅっ」
「俺はね、もう、死ぬまでお前さん一筋だよ。くるみよりいい女なんて、この世にひとりも居やしない。くるみ、くるみ、お前さんが大好きだ」
「あ、う、うう、んっ、あ、ああっ」
細い腕が首に絡められる。いとしい、いとしい、というように、小さな手がうなじや背中を滑る。可愛い愛撫に煽られて、足のものはいよいよ痛いくらいに張り詰めている。衝動に任せて口づければ、小さな舌が応じようといじらしく動いた。しかしその舌は、足に胸を責められる快楽に、すぐにつたなくなってしまう。
くちづけで、啼いて快楽をやり過ごすこともできなくなったか、くるみはさらに男へせわしなく脚を絡ませた。気持ちいい、もっと、そう細い脚が伝えてくる。
「んんッ!!」
両の胸の先をきゅっと摘まむと、くぐもった嬌声があがった。
「触らなくてもよくわかる。くるみは本当によく濡れるねえ。あまぁい蜜のにおいがするよ。男を狂わす女のにおいだ」
「ああ……」
くちづけから解放されたくるみは、大きくあえいでため息をついた。その体をなで下ろし、右の太ももをくすぐる。
「さあどうかな、確かめさせておくれ。脚をあげてごらん」
くるみは羞恥と欲に顔を染め、ゆっくり片脚を開き、秘所へ足の指を受け入れる。
「内ももまでたっぷり濡れて……可愛いねえ。ここはあかんぼみたいにつるつるなのに、あかんぼどころか、むっちりした女の肉付きだ……」
「あ、ん……」
内ももを、下腹部を、可愛い割れ目の始まりを指でなぞれば、くるみの息がどんどんうわずり、物欲しげに唇が震える。赤い可愛い唇も、小さな体も、褥の上で夫に愛され、妖艶にほころんでいく。
くち、くち、くち。
「あっ、ああんっ、あ、ああっ」
濡れた秘所へ指を滑らす。女の香りが強くなる。柔らかくあたたかく濡れた場所。入れば、ふわふわと柔らかく絡みついてくる極楽だ。貫いたときの快楽を思うあまり、足のものから先走りのしずくが一筋、落ちる。
くるみはもう、焦らされてせつないのだろう。腰を浮かせて、足の指を中へ導こうとする。
「ああ、だめだよ、そう動いたら傷つけちまう。……さ、ほら、入れるよ」
「あっ、ああああっ!」
熱く濡れたそこへゆっくりと指を沈める。くるみは足にぎゅっと抱きつき、のどをそらして甘く啼いた。
◇
思い返すのは、お山でのことだ。
贈られた丸い実になぞらえて呼び名を付けた。不便がないよう、それだけだった。手のひらにのるほどの小さな実は小柄な娘にぴったりだ、なんて自画自賛はしたものの、たいして深く考えたわけではない。
けれどくるみは、その名を味わうように音の出ない唇を動かし、とても喜んでくれていた。
宝物を贈られたかのように。
くるみは与えることしか知らないようだった。
これっぽっちも足を疑わない無垢な目をして、にこにこと楽しげに足の世話を焼いた。
可愛い、可愛い、健気なくるみ。
寂しがり屋な座敷童。
ずっとひとのそばにいて、ひとをこっそり助けて、ただただ、見返りを求めることなく時を過ごしてきたのだろう。
くるみは与えられることに慣れていない。褒められること、感謝されることにも。
足は、そんなくるみが愛しくて、いじらしくてたまらない。
「あっ、あああっ、あ、あああっ」
くるみの感じる浅いところをじっくり責め、ほぐれたあたりで奧をくすぐる。濡れた淫靡な音とくるみの甘い啼き声が部屋に響く。
「そんなに絡みついてきたら、指が動かせないよ、くるみ」
「あん、あ、あああ、あんっ」
「感じる、素直な、いい体だ。一年経ってもかわらない……。それどころか、どんどん奥で達しやすくなってきたねえ」
「あ、あああっ、くう、う、ああ、あっ」
「可愛い、可愛い、大事なくるみ。愛しい俺の御新造さん。たくさん声を聞かせておくれ、お前さんの可愛い声を……」
「あ、あああっ、あっ、あ、あ、あああああッ!」
蜜が散るほど責め立てれば、くるみは快楽に悶え、啼き、身をよじり、足の指をぎゅうと締めつけて果てた。足の首を抱いていた腕が床に落ちる。
「くるみ、くるみ、お前さんが欲しい。お前さんの極楽に寄せておくれ。とろとろで、あまぁい蜜をたっぷりあふれさせた、お前さんの中に入らせておくれ」
ぴくん、ぴくんと果てた名残に体を震わす妻の脚を大きく開いて、足はおのれのものを熱く濡れた場所に押しつける。ああ、とくるみの唇から、快楽にうっとりとろけた声がもれた。
「あ……あ、あ、あああっ」
「ああ、熱い……溶けちまいそうだ……」
ぐちゅり、ぐちゅり、濡れた音を立てながら中をかき回し、足は少しずつおのれを妻の中へと沈めていく。自分自身をこすりつけ証を刻むように、じっくり中をこね回す。
可愛い妻は快楽にすすり啼きながら、自分からも夫を受け入れ腰を揺らす。
「自分から腰を揺らして……。俺の大事な奥さんは、なんて、はしたなくて、可愛いんだろうね。くるみ、そんなに俺が欲しいのかい」
「あ、ああん……あ、あああっ」
「そんなこと、されちまったらっ、ああ、くるみ、朝になってもお前さんを離せない、よッ。せっかく、明日、夫婦で休みを、もらった、のに。お前さんを褥から、出してやれなく、なる」
くるみのそこがきゅっと締まり、ひときわ高い声があがる。
「ああ、今、ここで返事をしたのかい。一日中、こうやって、繋がっていたいかい、くるみ……ッ」
くるみは羞恥に顔を両手で覆ってしまった。足はぐっと体重をかけて腰を落とし、愛しい妻と深く繋がる。
「くるみ、だめだよ、いけないよ。可愛い顔を隠しちゃあ……」
小さな体をしっかり抱き込み、かすれた声でささやいて、足は一番奧をこじった。くるみは顔から手を離し、強い快楽に布団かわをぎゅうとつかむ。
じっくり快楽を与えられた中はとろけきっている。
「ひぃんっ、あ、あ、あ、あ……」
絡みつくくるみの中をゆっくり引き抜き、深く穿つ。
「あああああッ!」
「ああ、凄い、うねって、熱くて、くるみ、くるみ、極楽だ!」
愛しいくるみの名を呼びながら、足は激しく妻の中を責め立てる。濡れた音はひときわ淫靡だ。
「あん、あ、あああ、あんっ」
「好きだ、好きだよ、くるみ。いつも、いつまでも、一緒にいておくれ」
「あ、あああっ、あっ、ああ、あああああッ!」
「お前さんが、俺の、命だよ。ああ、くるみ、くるみ、可愛い……!」
「あっ、あっ、あっ、あああッ! あう、ううっ」
信頼のまなざしを足にくれる愛しい妻。健気で可愛い頑張り屋、寂しがり屋の座敷童。この一年、どれだけくるみの存在を、ありがたく、愛おしいと思ったことか。
与えられることに慣れていないくるみに、足はおのれのすべてを与えてやりたいと願う。自分など薄っぺらい男だが、くるみへの愛しさだけは、次々あふれて止まらないのだ。
くるみの細い脚が足の腰へ絡みつく。熱い中がうねる。達しそうなのは足も同じだ、しっかりくるみの体をかかえて深く穿ち、開いたくるみの口に吸いつく。膨れ上がった足のものを、離すまいと言うかのようにくるみの中がぎゅうっと強く締めつけた。
「……ッ、う、うッ!」
「……!!」
声にならない叫びをあげて達したくるみの中に、足は、この一年、収まるどころかつのってゆく妻への思いを、ありったけ注ぎ込んだ―――。
◇
翌朝、ふたりは知らせを見つけることになる。
布団の上に散ったその赤い印は、ひとならぬものでありながら、くるみがひとと同じように子を孕むことができるようになったのだという、紛れもない証であった。
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