座敷童、嫁に行く。

法花鳥屋銭丸

文字の大きさ
上 下
39 / 71
春風小路二番町胡桃堂こぼれ話

※ふたりが迎えた記念の夜に。

しおりを挟む


 くるみに酔う。
 組み敷いた小柄な体に、肌のかおりに、髪の柔らかさに、可愛い妻のすべてに酔う。

 暖かくてなめらかな肌に指をすべらせて細い体の線をなぞり、両手で腰から上へとなであげる。一度くるみの中へ入ってしまったら際限なくむさぼってしまうことはわかっていたから、たりはことさら丁寧に妻へ触れる。

「くるみ……」
「あ……っ、ふ、う、んんっ」

 愛らしい唇からもれる切れ切れの吐息は甘くはかない。まだ胸にも触れていないのに、胸の先はつんと尖って、触れてくれと言っているようだ。そこを避けながら、たりは両手で柔らかな膨らみを包み込む。

「柔らかくて、暖かくて、愛らしくて、なのにとっても色っぽい。くるみはほんとに、いい女だねえ……」

 ふっくらした胸をやわやわと包みながら、肌と愛らしく赤い場所の境を親指でくすぐる。あ、あ、とくるみの嬌声が高くなった。細い体がくねる。

「くるみ、くるみ、可愛いくるみ。まだ、肝心なとこには触っちゃいないのに、そんなに気持ちいいのかい?」

 くるみは高い声を出したことが恥ずかしいのだろう。声を抑えるためか指を吸って、うん、と上気した顔で小さく頷いた。細い脚がたりの脚をすべる。すき、すき、と言われているかのようだ。

 どんなに大変な日々の中でも、かわらぬ信頼と愛情をまっすぐ示してくれる愛しい娘は、祝言をあげて一年が経ってもなお初々しい。そのくるみが、閨では熱と欲の浮かんだまなざしをこちらに向け、自分から脚をからめてくるのだからたまらない。
 たりは華奢な体を手のひらで撫で、その可愛い耳に舌を這わせる。

「ああ、そんなにとろけた顔をして。男を煽ってねだるなんて、罪作りなことをして。悪いコだね、くるみ。とっても可愛い、悪いコだ……」
「ん……ぅ」
「悪いコにはお仕置きだよ」

 耳にささやいて、ぴん、と両の胸の先を弾く。

「ああっ!」

 白い肢体が跳ねた。たりはそのまま、ぷっくり腫れたふたつの先を指先でくすぐり、弾き、摘まみ、こね回す。

「狂わす男は金輪際、俺だけにしておくれ。ね? お前さんが褥の上でも、どれだけいい女か……。知っているのは俺だけだよ、約束だ」
「あ、ああ、んっ、うう、あ、あ、ひぅっ」
「俺はね、もう、死ぬまでお前さん一筋だよ。くるみよりいい女なんて、この世にひとりも居やしない。くるみ、くるみ、お前さんが大好きだ」
「あ、う、うう、んっ、あ、ああっ」

 細い腕が首に絡められる。いとしい、いとしい、というように、小さな手がうなじや背中を滑る。可愛い愛撫に煽られて、たりのものはいよいよ痛いくらいに張り詰めている。衝動に任せて口づければ、小さな舌が応じようといじらしく動いた。しかしその舌は、たりに胸を責められる快楽に、すぐにつたなくなってしまう。
 くちづけで、啼いて快楽をやり過ごすこともできなくなったか、くるみはさらに男へせわしなく脚を絡ませた。気持ちいい、もっと、そう細い脚が伝えてくる。

「んんッ!!」

 両の胸の先をきゅっと摘まむと、くぐもった嬌声があがった。

「触らなくてもよくわかる。くるみは本当によく濡れるねえ。あまぁい蜜のにおいがするよ。男を狂わす女のにおいだ」
「ああ……」

 くちづけから解放されたくるみは、大きくあえいでため息をついた。その体をなで下ろし、右の太ももをくすぐる。

「さあどうかな、確かめさせておくれ。脚をあげてごらん」

 くるみは羞恥と欲に顔を染め、ゆっくり片脚を開き、秘所へたりの指を受け入れる。

「内ももまでたっぷり濡れて……可愛いねえ。ここはあかんぼみたいにつるつるなのに、あかんぼどころか、むっちりした女の肉付きだ……」
「あ、ん……」

 内ももを、下腹部を、可愛い割れ目の始まりを指でなぞれば、くるみの息がどんどんうわずり、物欲しげに唇が震える。赤い可愛い唇も、小さな体も、褥の上で夫に愛され、妖艶にほころんでいく。

 くち、くち、くち。

「あっ、ああんっ、あ、ああっ」

 濡れた秘所へ指を滑らす。女の香りが強くなる。柔らかくあたたかく濡れた場所。入れば、ふわふわと柔らかく絡みついてくる極楽だ。貫いたときの快楽を思うあまり、たりのものから先走りのしずくが一筋、落ちる。
 くるみはもう、焦らされてせつないのだろう。腰を浮かせて、たりの指を中へ導こうとする。

「ああ、だめだよ、そう動いたら傷つけちまう。……さ、ほら、入れるよ」
「あっ、ああああっ!」

 熱く濡れたそこへゆっくりと指を沈める。くるみはたりにぎゅっと抱きつき、のどをそらして甘く啼いた。


 ◇


 思い返すのは、お山でのことだ。

 贈られた丸い実になぞらえて呼び名を付けた。不便がないよう、それだけだった。手のひらにのるほどの小さな実は小柄な娘にぴったりだ、なんて自画自賛はしたものの、たいして深く考えたわけではない。
 けれどくるみは、その名を味わうように音の出ない唇を動かし、とても喜んでくれていた。
 宝物を贈られたかのように。

 くるみは与えることしか知らないようだった。
 これっぽっちもたりを疑わない無垢な目をして、にこにこと楽しげにたりの世話を焼いた。
 可愛い、可愛い、健気なくるみ。
 寂しがり屋な座敷童。
 ずっとひとのそばにいて、ひとをこっそり助けて、ただただ、見返りを求めることなく時を過ごしてきたのだろう。
 くるみは与えられることに慣れていない。褒められること、感謝されることにも。
 たりは、そんなくるみが愛しくて、いじらしくてたまらない。

「あっ、あああっ、あ、あああっ」

 くるみの感じる浅いところをじっくり責め、ほぐれたあたりで奧をくすぐる。濡れた淫靡な音とくるみの甘い啼き声が部屋に響く。

「そんなに絡みついてきたら、指が動かせないよ、くるみ」
「あん、あ、あああ、あんっ」
「感じる、素直な、いい体だ。一年経ってもかわらない……。それどころか、どんどん奥で達しやすくなってきたねえ」
「あ、あああっ、くう、う、ああ、あっ」
「可愛い、可愛い、大事なくるみ。愛しい俺の御新造さん。たくさん声を聞かせておくれ、お前さんの可愛い声を……」
「あ、あああっ、あっ、あ、あ、あああああッ!」

 蜜が散るほど責め立てれば、くるみは快楽に悶え、啼き、身をよじり、たりの指をぎゅうと締めつけて果てた。たりの首を抱いていた腕が床に落ちる。

「くるみ、くるみ、お前さんが欲しい。お前さんの極楽に寄せておくれ。とろとろで、あまぁい蜜をたっぷりあふれさせた、お前さんの中に入らせておくれ」

 ぴくん、ぴくんと果てた名残に体を震わす妻の脚を大きく開いて、たりはおのれのものを熱く濡れた場所に押しつける。ああ、とくるみの唇から、快楽にうっとりとろけた声がもれた。

「あ……あ、あ、あああっ」
「ああ、熱い……溶けちまいそうだ……」

 ぐちゅり、ぐちゅり、濡れた音を立てながら中をかき回し、たりは少しずつおのれを妻の中へと沈めていく。自分自身をこすりつけ証を刻むように、じっくり中をこね回す。
 可愛い妻は快楽にすすり啼きながら、自分からも夫を受け入れ腰を揺らす。

「自分から腰を揺らして……。俺の大事な奥さんは、なんて、はしたなくて、可愛いんだろうね。くるみ、そんなに俺が欲しいのかい」
「あ、ああん……あ、あああっ」
「そんなこと、されちまったらっ、ああ、くるみ、朝になってもお前さんを離せない、よッ。せっかく、明日、夫婦で休みを、もらった、のに。お前さんを褥から、出してやれなく、なる」

 くるみのそこがきゅっと締まり、ひときわ高い声があがる。

「ああ、今、ここ・・で返事をしたのかい。一日中、こうやって、繋がっていたいかい、くるみ……ッ」

 くるみは羞恥に顔を両手で覆ってしまった。たりはぐっと体重をかけて腰を落とし、愛しい妻と深く繋がる。

「くるみ、だめだよ、いけないよ。可愛い顔を隠しちゃあ……」

 小さな体をしっかり抱き込み、かすれた声でささやいて、たりは一番奧をこじった。くるみは顔から手を離し、強い快楽に布団かわをぎゅうとつかむ。
 じっくり快楽を与えられた中はとろけきっている。

「ひぃんっ、あ、あ、あ、あ……」

 絡みつくくるみの中をゆっくり引き抜き、深く穿つ。

「あああああッ!」
「ああ、凄い、うねって、熱くて、くるみ、くるみ、極楽だ!」

 愛しいくるみの名を呼びながら、たりは激しく妻の中を責め立てる。濡れた音はひときわ淫靡だ。

「あん、あ、あああ、あんっ」
「好きだ、好きだよ、くるみ。いつも、いつまでも、一緒にいておくれ」
「あ、あああっ、あっ、ああ、あああああッ!」
「お前さんが、俺の、命だよ。ああ、くるみ、くるみ、可愛い……!」
「あっ、あっ、あっ、あああッ! あう、ううっ」

 信頼のまなざしをたりにくれる愛しい妻。健気で可愛い頑張り屋、寂しがり屋の座敷童。この一年、どれだけくるみの存在を、ありがたく、愛おしいと思ったことか。
 与えられることに慣れていないくるみに、たりはおのれのすべてを与えてやりたいと願う。自分など薄っぺらい男だが、くるみへの愛しさだけは、次々あふれて止まらないのだ。

 くるみの細い脚がたりの腰へ絡みつく。熱い中がうねる。達しそうなのはたりも同じだ、しっかりくるみの体をかかえて深く穿ち、開いたくるみの口に吸いつく。膨れ上がったたりのものを、離すまいと言うかのようにくるみの中がぎゅうっと強く締めつけた。

「……ッ、う、うッ!」
「……!!」

 声にならない叫びをあげて達したくるみの中に、たりは、この一年、収まるどころかつのってゆく妻への思いを、ありったけ注ぎ込んだ―――。


 ◇


 翌朝、ふたりは知らせを見つけることになる。
 布団の上に散ったその赤い印は、ひとならぬものでありながら、くるみがひとと同じように子を孕むことができるようになったのだという、紛れもない証であった。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

だいたい全部、聖女のせい。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」 異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。 いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。 すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。 これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

シンメトリーの翼 〜天帝異聞奇譚〜

長月京子
恋愛
学院には立ち入りを禁じられた場所があり、鬼が棲んでいるという噂がある。 朱里(あかり)はクラスメートと共に、禁じられた場所へ向かった。 禁じられた場所へ向かう途中、朱里は端正な容姿の男と出会う。 ――君が望むのなら、私は全身全霊をかけて護る。 不思議な言葉を残して立ち去った男。 その日を境に、朱里の周りで、説明のつかない不思議な出来事が起こり始める。 ※本文中のルビは読み方ではなく、意味合いの場合があります。

交換された花嫁

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」 お姉さんなんだから…お姉さんなんだから… 我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。 「お姉様の婚約者頂戴」 妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。 「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」 流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。 結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。 そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

処理中です...