3 / 4
9月11日(日)
しおりを挟む
本日、雨。味気のない灰白の天井含め私の視界に映るもの全てが無慈悲に思える。
今日の天気なんて、もはや気にしても仕方がない。私は約束を破った。昨日から頭を駆けるのはそのことばかり。……夜空くん、今頃怒ってるかな——。
二度目の賭けには勝てなかった。二度目こそ、私は私の身体を信じていたのだけれど、やっぱりこの世界ってそう甘くはない。こうなるとむしろ、最初から負けで良かったのに……いや、今一度目を勝ちだと思ってしまっている時点で、ある意味私はあの日夜空くんと遭遇した瞬間に負けていたんだ。
一昨年の夏に癌が発覚して、私は着々と準備を始めた。この世界に未練を残さないように。人生に勝ち負けがあるとすれば、それは生きた長さじゃない。死ぬ直前に「あー愉しかった」と思えるかどうかだ。当然、早死にするつもりでいた訳でもないし、だからこそ私は変わらず勉強も続けた。なんなら、病室に居る今だって手元には参考書がある。今時癌は治らない病気じゃないし、その通り去年の春には手術治療も成功した。不自然な肺の痛みで気付いた肝臓癌は、私が山育ちだから早期発見できたのかもしれない。
でも、こうなってはやはり油断しなくて良かったと思う。
『癌は転移する』
この残酷な事象がゼロではないことを、頭の片隅に置いたまま私は過ごし、今年の春、それは肺で見つかった。
覚悟しているつもりではいたのに、私はその時初めて涙を流した。私はわがままなんだ。友達とは全力で楽しみたい。だって、私が死ぬ時私は悲しくないんだもん。悲しんでくれるのは友達だけ。でも、逆に男友達は一切作らないようにしていた。もし、もし好きな人でもできようものなら……私はきっと、この世界に未練を残す。もっとその人と一緒に過ごしたいと思ってしまう。そんな身勝手な性格だから今ベッドに寝てるのかもね。
どちらにせよ、もう彼と逢うことはないだろう。この肺の腫瘍が消えたとて、昨日の約束は私から破ったんだ。来年はもう何処で何してるのかも分からないし、万が一逢えたとしても、一生転移の可能性がある私なんか——
コンコンッ
「美月ちゃん?」
病室のドアから、高一以来お世話になっている看護師さんが顔を覗かせる。
「はーい」
「あ、起きてた。ご家族の方が来られてるけど、今大丈夫?」
そういえば、大学入試の過去問をお母さんに頼んでいたんだ。私はコクっと頷く。
「......もうすぐ面会時間終わるから、あまり長くならないようにね」
ニコッとしてドアを閉める看護師さんに対して、私は小さな『?』を頭に浮かべながらまた頭を動かした。
「美月ー、赤本持ってきたぞー」
窓の外の冴えない夕方の景色を眺めていた私は、続いて左側から聞こえてきたその違和感を違和感として気付けないまま、ドアの方を向く。
「お父さんが持って……えっ!?」
「よっ、美月」
「夜空……くん!?」
遅れて、不可思議だった看護師さんの言動が結びついた。
大きい紙袋を持って入ってきたのは、お母さんでもお父さんでもない。正真正銘、本物の桜井夜空くんだった。
あまりの衝撃に、私は自分のパジャマ姿に恥ずかしさを覚える余裕すらなく、口をあんぐりと開けるばかり。
「な、なんで!?」
「フフッ。秘密」
「ぇえ!?」
「ハハハ!にしても、田舎も案外良いとこあるな。人が優しい」
私はまだ、これが現実なのか判断できないでいる。もしかして私、今夢を見てる?それとも実はもう……いや流石にまだ死ぬ程重症化はしてなかったはずだけど——。
でも、この際なんでもいい。何故だか分からないけど、また夜空くんと会えた。初めて陽の下で相対することへの羞恥が無くもないけど、今はそんなの気にしてられない。
「正直、昨日来なかったからさ、美月はもう彼氏作ったんだと思ったよ」
夜空くんは、サイドテーブルに荷物を置きベッドに腰掛け窓の外を見上げる。
「彼氏……作るわけ、ないじゃん」
「逆の立場だったら、どう思う?」
「んー……夜空くん彼女できたかーって思う」
「いや無茶苦茶じゃねーかよ」
明るい窓辺で笑うその表情は、私にはあまりにも眩しい。眩しすぎて、ついつい私も笑ってしまう。
「ネタバラシは……来年の月夜にしようか」
「それ、私の現状知ってて言ってる?」
「当たり前よ。だから今死ねない理由を作ろうとしてんの」
「……もしかして夜空くんSですか?」
「ハハハ!否定はしない」
そう言うと、夜空くんは立ち上がり、紙袋から別の小さな紙袋を取り出した。見た瞬間にそれは赤本じゃないことは分かる。日常の味から、思い出の味に変わりつつあるものだ。
「美月も食うか?」
「ホントSだね。食べれないの分かってるでしょ?」
「ふっふっ。じゃあこれも来年にお預けだな」
「......やっぱり一口ちょうだい」
「えー?仕方ねえ一口だけだぞ?」
「……ちょっとそれバンズだけじゃん!」
久しぶりに、心の底から笑っている気がする。過去に二度しか会ったことのない夜空くんが、今自然に接してくれる唯一の相手になるなんて。関係が浅いからそうなのか、敢えて自然体を装っているのか、これが素なのか、流石にそこまではまだ分からない。でも、浅いままでいたからこそ、私は今笑えているんだと思う。もしそうじゃなければ、きっと苦しんでいる。まだ死にたくないって——。
それから十分程度、私たちは他愛もない話をした。夜空くんが、バーガーとポテトを食べ終わるまでの間。私は美味しそうにそれを見つめることしかできないけど、それでよかった。面会時間ギリギリで訪れた夜空くんが、少しの長居を許されたのはそれのおかげだから。
「さて」
食べ終わると、夜空くんは紙ナプキンを一枚だけ手に取り、ゆっくりと立ち上がる。
「ちょっと真面目な話になるんだけどさ」
そう言いながら、紙袋からペンを取り出し、一瞬何かをメモしたように見えた。
「正直なところ、俺には分からないんだ」
再び夜空くんの視線が私に移る。
鼻から吸う空気と共に肩が上がり、唇にわずかな力を込め、口角を引き上げる。その表情は、苦悩に満ちていて、でもそれを私に見せまいと堪えている様だ。
「……なにが?」
「今更だけどさ、あの場所以外で……現実でこうやって会うことが果たして良かったのかどうか」
ベッド横の丸椅子に腰掛けると、初めて見る真剣な表情で、私の手を取る。
「あの場所での、一時の特別な思い出にしておく方が美月にとっては良かったのかなー、とか……色々考えたんだ。ここに来る直前まで。でも結局、今日は勝てなかった。そんな理屈云々よりも、俺は自分の我儘を通しちまった。あれで最後にはしたくなかった」
「…………」
「だから、今度こそ俺はまた来年、あの日あの時間あの場所で美月を待つ。……その時に教えてくれ」
温かい両手が、私の手からゆっくりと離れていく。不意に流れそうになった涙を必死に堪えて、私は小さく頷いた。
「あ、でも。もし……その間に辛いこととかあったら、いつでも言えよ。間違っても、黙って死ぬとか無しだから」
私は、今できる精一杯の笑顔で応えた。
「……ふふっ。じゃあ『これから逝きまーす』って連絡するね」
「ハハハッ!それ聞いて安心した」
今度はバッと立ち上がり「また、来年」と拳を突き出す彼に合わせて、私も拳を預ける。
次にその拳が離れたとき、彼は一昨年のように颯爽と姿を消した。
静寂に包まれた個室は、数十分前と何も変わらない退屈な空間へと戻った。
今目の前で起こっていたことは、本当に現実だったのか?でも、それの答えはこの手の中にある。この、丁寧に折り畳まれた一枚に——。
今日の天気なんて、もはや気にしても仕方がない。私は約束を破った。昨日から頭を駆けるのはそのことばかり。……夜空くん、今頃怒ってるかな——。
二度目の賭けには勝てなかった。二度目こそ、私は私の身体を信じていたのだけれど、やっぱりこの世界ってそう甘くはない。こうなるとむしろ、最初から負けで良かったのに……いや、今一度目を勝ちだと思ってしまっている時点で、ある意味私はあの日夜空くんと遭遇した瞬間に負けていたんだ。
一昨年の夏に癌が発覚して、私は着々と準備を始めた。この世界に未練を残さないように。人生に勝ち負けがあるとすれば、それは生きた長さじゃない。死ぬ直前に「あー愉しかった」と思えるかどうかだ。当然、早死にするつもりでいた訳でもないし、だからこそ私は変わらず勉強も続けた。なんなら、病室に居る今だって手元には参考書がある。今時癌は治らない病気じゃないし、その通り去年の春には手術治療も成功した。不自然な肺の痛みで気付いた肝臓癌は、私が山育ちだから早期発見できたのかもしれない。
でも、こうなってはやはり油断しなくて良かったと思う。
『癌は転移する』
この残酷な事象がゼロではないことを、頭の片隅に置いたまま私は過ごし、今年の春、それは肺で見つかった。
覚悟しているつもりではいたのに、私はその時初めて涙を流した。私はわがままなんだ。友達とは全力で楽しみたい。だって、私が死ぬ時私は悲しくないんだもん。悲しんでくれるのは友達だけ。でも、逆に男友達は一切作らないようにしていた。もし、もし好きな人でもできようものなら……私はきっと、この世界に未練を残す。もっとその人と一緒に過ごしたいと思ってしまう。そんな身勝手な性格だから今ベッドに寝てるのかもね。
どちらにせよ、もう彼と逢うことはないだろう。この肺の腫瘍が消えたとて、昨日の約束は私から破ったんだ。来年はもう何処で何してるのかも分からないし、万が一逢えたとしても、一生転移の可能性がある私なんか——
コンコンッ
「美月ちゃん?」
病室のドアから、高一以来お世話になっている看護師さんが顔を覗かせる。
「はーい」
「あ、起きてた。ご家族の方が来られてるけど、今大丈夫?」
そういえば、大学入試の過去問をお母さんに頼んでいたんだ。私はコクっと頷く。
「......もうすぐ面会時間終わるから、あまり長くならないようにね」
ニコッとしてドアを閉める看護師さんに対して、私は小さな『?』を頭に浮かべながらまた頭を動かした。
「美月ー、赤本持ってきたぞー」
窓の外の冴えない夕方の景色を眺めていた私は、続いて左側から聞こえてきたその違和感を違和感として気付けないまま、ドアの方を向く。
「お父さんが持って……えっ!?」
「よっ、美月」
「夜空……くん!?」
遅れて、不可思議だった看護師さんの言動が結びついた。
大きい紙袋を持って入ってきたのは、お母さんでもお父さんでもない。正真正銘、本物の桜井夜空くんだった。
あまりの衝撃に、私は自分のパジャマ姿に恥ずかしさを覚える余裕すらなく、口をあんぐりと開けるばかり。
「な、なんで!?」
「フフッ。秘密」
「ぇえ!?」
「ハハハ!にしても、田舎も案外良いとこあるな。人が優しい」
私はまだ、これが現実なのか判断できないでいる。もしかして私、今夢を見てる?それとも実はもう……いや流石にまだ死ぬ程重症化はしてなかったはずだけど——。
でも、この際なんでもいい。何故だか分からないけど、また夜空くんと会えた。初めて陽の下で相対することへの羞恥が無くもないけど、今はそんなの気にしてられない。
「正直、昨日来なかったからさ、美月はもう彼氏作ったんだと思ったよ」
夜空くんは、サイドテーブルに荷物を置きベッドに腰掛け窓の外を見上げる。
「彼氏……作るわけ、ないじゃん」
「逆の立場だったら、どう思う?」
「んー……夜空くん彼女できたかーって思う」
「いや無茶苦茶じゃねーかよ」
明るい窓辺で笑うその表情は、私にはあまりにも眩しい。眩しすぎて、ついつい私も笑ってしまう。
「ネタバラシは……来年の月夜にしようか」
「それ、私の現状知ってて言ってる?」
「当たり前よ。だから今死ねない理由を作ろうとしてんの」
「……もしかして夜空くんSですか?」
「ハハハ!否定はしない」
そう言うと、夜空くんは立ち上がり、紙袋から別の小さな紙袋を取り出した。見た瞬間にそれは赤本じゃないことは分かる。日常の味から、思い出の味に変わりつつあるものだ。
「美月も食うか?」
「ホントSだね。食べれないの分かってるでしょ?」
「ふっふっ。じゃあこれも来年にお預けだな」
「......やっぱり一口ちょうだい」
「えー?仕方ねえ一口だけだぞ?」
「……ちょっとそれバンズだけじゃん!」
久しぶりに、心の底から笑っている気がする。過去に二度しか会ったことのない夜空くんが、今自然に接してくれる唯一の相手になるなんて。関係が浅いからそうなのか、敢えて自然体を装っているのか、これが素なのか、流石にそこまではまだ分からない。でも、浅いままでいたからこそ、私は今笑えているんだと思う。もしそうじゃなければ、きっと苦しんでいる。まだ死にたくないって——。
それから十分程度、私たちは他愛もない話をした。夜空くんが、バーガーとポテトを食べ終わるまでの間。私は美味しそうにそれを見つめることしかできないけど、それでよかった。面会時間ギリギリで訪れた夜空くんが、少しの長居を許されたのはそれのおかげだから。
「さて」
食べ終わると、夜空くんは紙ナプキンを一枚だけ手に取り、ゆっくりと立ち上がる。
「ちょっと真面目な話になるんだけどさ」
そう言いながら、紙袋からペンを取り出し、一瞬何かをメモしたように見えた。
「正直なところ、俺には分からないんだ」
再び夜空くんの視線が私に移る。
鼻から吸う空気と共に肩が上がり、唇にわずかな力を込め、口角を引き上げる。その表情は、苦悩に満ちていて、でもそれを私に見せまいと堪えている様だ。
「……なにが?」
「今更だけどさ、あの場所以外で……現実でこうやって会うことが果たして良かったのかどうか」
ベッド横の丸椅子に腰掛けると、初めて見る真剣な表情で、私の手を取る。
「あの場所での、一時の特別な思い出にしておく方が美月にとっては良かったのかなー、とか……色々考えたんだ。ここに来る直前まで。でも結局、今日は勝てなかった。そんな理屈云々よりも、俺は自分の我儘を通しちまった。あれで最後にはしたくなかった」
「…………」
「だから、今度こそ俺はまた来年、あの日あの時間あの場所で美月を待つ。……その時に教えてくれ」
温かい両手が、私の手からゆっくりと離れていく。不意に流れそうになった涙を必死に堪えて、私は小さく頷いた。
「あ、でも。もし……その間に辛いこととかあったら、いつでも言えよ。間違っても、黙って死ぬとか無しだから」
私は、今できる精一杯の笑顔で応えた。
「……ふふっ。じゃあ『これから逝きまーす』って連絡するね」
「ハハハッ!それ聞いて安心した」
今度はバッと立ち上がり「また、来年」と拳を突き出す彼に合わせて、私も拳を預ける。
次にその拳が離れたとき、彼は一昨年のように颯爽と姿を消した。
静寂に包まれた個室は、数十分前と何も変わらない退屈な空間へと戻った。
今目の前で起こっていたことは、本当に現実だったのか?でも、それの答えはこの手の中にある。この、丁寧に折り畳まれた一枚に——。
1
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
冬の水葬
束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。
凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。
高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。
美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた――
けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。
ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
8年間未来人石原くん。
七部(ななべ)
青春
しがない中学2年生の石原 謙太郎(いしはら けんたろう)に、一通の手紙が机の上に届く。
「苗村と付き合ってくれ!頼む、今しかないんだ!」
と。8年後の未来の、22歳の自分が、今の、14歳の自分宛に。苗村 鈴(なえむら すず)
これは、石原の8年間の恋愛のキャンバスのごく一部分の物語。
Cutie Skip ★
月琴そう🌱*
青春
少年期の友情が破綻してしまった小学生も最後の年。瑞月と恵風はそれぞれに原因を察しながら、自分たちの元を離れた結日を呼び戻すことをしなかった。それまでの男、男、女の三人から男女一対一となり、思春期の繊細な障害を乗り越えて、ふたりは腹心の友という間柄になる。それは一方的に離れて行った結日を、再び振り向かせるほどだった。
自分が置き去りにした後悔を掘り起こし、結日は瑞月とよりを戻そうと企むが、想いが強いあまりそれは少し怪しげな方向へ。
高校生になり、瑞月は恵風に友情とは別の想いを打ち明けるが、それに対して慎重な恵風。学校生活での様々な出会いや出来事が、煮え切らない恵風の気付きとなり瑞月の想いが実る。
学校では瑞月と恵風の微笑ましい関係に嫉妬を膨らます、瑞月のクラスメイトの虹生と旺汰。虹生と旺汰は結日の想いを知り、”自分たちのやり方”で協力を図る。
どんな荒波が自分にぶち当たろうとも、瑞月はへこたれやしない。恵風のそばを離れない。離れてはいけないのだ。なぜなら恵風は人間以外をも恋に落とす強力なフェロモンの持ち主であると、自身が身を持って気付いてしまったからである。恵風の幸せ、そして自分のためにもその引力には誰も巻き込んではいけない。
一方、恵風の片割れである結日にも、得体の知れないものが備わっているようだ。瑞月との友情を二度と手放そうとしないその執念は、周りが翻弄するほどだ。一度は手放したがそれは幼い頃から育てもの。自分たちの友情を将来の義兄弟関係と位置付け遠慮を知らない。
こどもの頃の風景を練り込んだ、幼なじみの男女、同性の友情と恋愛の風景。
表紙:むにさん
彗星と遭う
皆川大輔
青春
【✨青春カテゴリ最高4位✨】
中学野球世界大会で〝世界一〟という称号を手にした。
その時、投手だった空野彗は中学生ながら152キロを記録し、怪物と呼ばれた。
その時、捕手だった武山一星は全試合でマスクを被ってリードを、打っては四番とマルチの才能を発揮し、天才と呼ばれた。
突出した実力を持っていながら世界一という実績をも手に入れた二人は、瞬く間にお茶の間を賑わせる存在となった。
もちろん、新しいスターを常に欲している強豪校がその卵たる二人を放っておく訳もなく。
二人の元には、多数の高校からオファーが届いた――しかし二人が選んだのは、地元埼玉の県立高校、彩星高校だった。
部員数は70名弱だが、その実は三年連続一回戦負けの弱小校一歩手前な崖っぷち中堅高校。
怪物は、ある困難を乗り越えるためにその高校へ。
天才は、ある理由で野球を諦めるためにその高校へ入学した。
各々の別の意思を持って選んだ高校で、本来会うはずのなかった運命が交差する。
衝突もしながら協力もし、共に高校野球の頂へ挑む二人。
圧倒的な実績と衝撃的な結果で、二人は〝彗星バッテリー〟と呼ばれるようになり、高校野球だけではなく野球界を賑わせることとなる。
彗星――怪しげな尾と共に現れるそれは、ある人には願いを叶える吉兆となり、ある人には夢を奪う凶兆となる。
この物語は、そんな彗星と呼ばれた二人の少年と、人を惑わす光と遭ってしまった人達の物語。
☆
第一部表紙絵制作者様→紫苑*Shion様《https://pixiv.net/users/43889070》
第二部表紙絵制作者様→和輝こころ様《https://twitter.com/honeybanana1》
第三部表紙絵制作者様→NYAZU様《https://skima.jp/profile?id=156412》
登場人物集です→https://jiechuandazhu.webnode.jp/%e5%bd%97%e6%98%9f%e3%81%a8%e9%81%ad%e3%81%86%e3%80%90%e7%99%bb%e5%a0%b4%e4%ba%ba%e7%89%a9%e3%80%91/
サッカーに注げた僕らの青春
千音 兎輝
青春
中学一年の終わりにサッカー部に入部した伊織 輝は恵まれたセンス(?)でいきなりレギュラー入り。しかしこのサッカー部は変態や奇人ばかり。本当に都大会まで行けるのか!?
乙男女じぇねれーしょん
ムラハチ
青春
見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。
小説家になろうは現在休止中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる