お願いだから、話してよ

馬場 蓮実

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1 初めての恋

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 でも、半年、1年と経過していく毎にいよいよ君はおかしくなっていた。

 不安気というか、何かに怯えるような……体が萎縮して弱々しくて、見ていられなかったよ……。
 少しでもいいから、僕に心の内を聞かせて欲しかった。

 きっと、優しくて真面目な君だからこそ言えなかったのだろうけれど。A型長女の君は、周りから見れば典型的な優しいお姉さんタイプだった。だからこそ、悩みは誰にも言えなかったんだね。きっと、全部自分独りで抱え込んでいたんだね。


 君が自殺するまでの半年は、ほぼ何も分かっていない。この半年が、君が自殺した理由の一番の手掛かりな気はする。

 分かっていることは、君が一年半住んだアパートから引っ越したということ。あと、退学はしていないということ。

 引っ越したのは間違いない。ある日突然もぬけの殻になっていたから。退学も、恐らくしていないはず。君が消えてから、2回だけ大学に向かう姿を見たから。

 まあ、その後僕は不審者に間違えられて大学付近に近寄れなくなってしまったけど。僕がなんと思われようがそれは構わない。



 重要なのは、何故君が自殺してしまったのか。何故そこまで追い詰められていたのか。
 君を心から愛している僕が解明しないと……。ヒントはきっと、引っ越した先のアパートにあるはずだ。


 
 この情報社会という時代は本当に便利なご時世だと思う。
 手掛かりがゼロから始めても、案外分かることはある。君はSNS関連を全て削除してしまっているけど、君の旧友は結構書き込んでくれていたよ。

 写真も何枚かあった。女子は鍵のアカウントが多くて騙し通るのに少し手間取ったけど、この写真に映る間取り、コメント内容、地元テレビのニュースで一瞬僅かに映った外観、その他諸々から、君が住んでいたであろうアパートは特定できた。

 そして更に、不動産屋で確認してみたら一部屋だけ家賃が不自然に安いものだから、つまり君が居た部屋まで分かったってことだ。


 当然一度入ったくらいじゃ何も解らないだろうから、僕は君が自殺したこの部屋を契約したよ。空いていて助かった。
 事故物件とはいえ安さに目がくらんで他人に契約されてしまってはどうにもならないからね。



 生で間取りを見て驚いたけど、この部屋には随分立派なロフトが付いている。首吊り自殺と聞いていたから、これで合点がいった。
 階段をよく見ても、特に違和感はない。だけど、ロフトの柵に一箇所だけ僅かな凹みがあった。

 恐らく君は、ここに紐をつけて、首を吊ったのだろう。

 当然君の遺品は無い。賃貸として出されていた以上、ここに君の物は無いしダイニングメッセージなんかも当然見られない。
 でも、君がこの部屋で自殺したことは間違いないんだ。丁度これから夏休みに入る。
 夏休みの約2ヶ月、ここで生活していれば、何か解るかもしれない。
 

 2週間が経った頃、僕は少し頭痛に悩まされる日々が続いた。

 僕は偏頭痛持ちでも無いし、頭痛なんて熱を出した時くらいしか起こらない。だからこれは、珍しいっちゃ珍しい。

 でも、それ以上不思議な現象は特に無かった。
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