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鈴木の素性

トラブルメーカー

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 シェアハウスに帰るべきか、それとも鈴木の死因が分かるまで実家に戻るか……?

 しかし、麗と柚菜ちゃんは置いてはいけない。
 海堂さんはまだ取り調べ中だろうか?連絡がつかない。港の確認だけでこんな長時間拘束されないだろう。

 それにしても幸田は老夫婦の家で何をしているんだ?
 頼むから余計な面倒は起こさないでくれよ。

「ただいま」

 明日いよいよ社長令嬢の仮入社だ。周りはどんな反応をするんだろうか?

「おかえりハル。ちょっといい?」

「麗……まだ起きてたの? 明日………」

 言いかけて、聞きなれない物音に言葉が詰まる。

「…………?!」

 二階から子供の声がする。
 それも赤ん坊から幼児まで三人ほどだろうか、ドタバタと走り回っている。

「な、何?! 誰!? 誰の子?」

 戸惑う私に麗はキンキンに冷えたビール片手にキッチンへと引っ張りこむ。

「座って。話すから。
 はぁ…………参るわね……」

 小さなカウンターテーブルに折りたたみの細いスタンドチェア。
 並んで座る。

「ねぇ。錦総合病院に知ってる看護師いる? 山吹 百合子って人」

 あ………。

「カルテの盗みお願いした人だ……」

「聞いてないけど? 彼女と交換条件だったの?」

「いや、違う。
 彼女は子供を預かって欲しいって言ってきたのは事実だけど。
 キッパリ断った。
 それに彼女が付き合いを持ちたいのは私じゃなくて幸田だよ」

「幸田?」

「入院中、火遊びでもしたんでしょ。幸田の子じゃないけど、シングルマザーって言ってたよ」

 麗の目が据わる。
 おー怖ぁ。

「それで……断ったはずの百合子さんが、なんて言って来たの?」

「それが分からないのよ。買い物から帰ってきたら、既に彼女は子供を預けた後で。
 柚菜ちゃんが勝手にOKしちゃったのよ」

 とりあえず、柚菜ちゃんの部屋に行ってみるか。

「はぁ……こんな時に……子供の相手なんてできないよ。皆忙しいしさ」

「同感ね」

 階段を登り柚菜ちゃんの部屋をノックすると、勢いよく襖が開く。

「おかえりなさぁ~い。この人誰~!?」

「みぃちゃんのリボン取ったー!!」

「ほぇーん!ほぇーん!」

「取ってないもん!」

 嘘だろ。まじか………四人もいる。

 その戦争のど真ん中、寝そべり漫画を読むだけの柚菜ちゃんの姿があった。

「ゆ……柚菜ちゃん……」

「あ、春子さんおかえり~。
 そこのスティック取って貰えます?」

「スティック?」

「粉ミルクですよ」

「あー………あ、うん…」

 赤ん坊の鳴き声が耳につく!
 意味不明だがスティク一本、哺乳瓶に入れる手が震える。

「部屋で見ててもいいんだけどさぁ~、私の部屋仏具が多いし。春子さんの部屋、まだダンボールだけだったから。ごめんなさい」

「あ、まぁ。それはいいけど。子供の安全第一に……じゃなくて」

 麗が言いにくそうに割ってはいる。

「あのね、柚菜ちゃん。ハルとも話したんだけど、やっぱりうちで面倒見るなんておかしいと思うの。
 子供を預ける専門機関はあるものだし、もしも事故なんて起きたら責任取れないのよ?」

「買い物の間、見てるだけでいいって言うし大丈夫ですよ~。
 二時間って言ってたんで、もうそろそろ来ますよ百合子さん」

「そうだけど。
 次にもし頼まれたら、断って欲しいのよ」

「ん~でも結構……まぁその時考えますけど~」

 金か………?
 あの看護師………バイト代とでも称して金を渡したな?

「幸田は知ってるの?」

「知らな~い」

 恐らく知らないだろうな。

「ねぇ、柚菜ちゃん。幸田がお爺さんの家に今日遊びに行ってたみたいなんだけど……」

「…………知らない」

 柚菜ちゃんは慣れない手つきで赤ん坊を掴み上げると哺乳瓶を与え、私たちには背を向けてしまった。

 そっと麗が襖を閉める。

「その看護師と話をしないとダメね。
 うちは託児所じゃないのよ!?」

 確かに。

「それより麗、港の事なんだけど……」

「鈴木さんねぇ。
 ええ。でも死人に口なしよね。誰も知らないだろうし。
 味方でも敵でも気持ちのいいものではないわね!」

 あの老夫婦の家には何があるんだ……?

「もう寝るわ」

「わかった。私は百合子さんに会ってみる…」

「まともな人には思えないわね。二時間の買い物って言っても、この田舎で今、二十三時よ?
 それももう三十分オーバーしてるし」

「うん……」

 どういうつもりなんだろうな?
 あのカルテのことで変に脅されなければいいが。
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