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仲間
友
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「外はどうなってる?現場とか」
「安心して。まだたった三日よ?
何も報告受けてないわ」
「慎也からは!?」
「昨日店に来てったわよ。『いつも通りだから安心して』って」
「そう………なんだ」
いつも………通り………。
そう。そうだよ。
私がいなくても秋沢も山口もいるんだぞ………?
三日空けたくらいで……………でもこの気持ちは何……?決してどうにかなってて欲しいなんて思ってない。誓う。だが、それは私に価値がないんじゃないかと言う事に繋げてしまう。
いいや。麗の言う通りたった三日。
流石に何も起きないだろう。
「椿芽君に聞く限りではね。
同じ現場の人と来てったわ。栗本って人。知ってる?」
「うん。私の同期だよ。慎也とは仲が良いみたい」
「そう。それが………彼の方から別の伝言があるけど………」
「え……?」
栗本から……?
なんだ…?
「なんて言ってた?」
「『ペットと飼い主を隣人に譲ることになった』って………………椿芽君のいない所で話されたけど」
「え……!?」
「ねぇ、何の事?あんた子犬でも拾ったの?」
「……………うそ……馬鹿な………嘘でしょ!!?」
そんな……………!?
それこそたった三日だぞ!?
「椿芽君には言うなって言われて……だから私が来たのよ」
雨宮は最初からそれが狙いだったのか……!?嵌められたのは私じゃない。秋沢か?
『隣人』って事は、冬野のA棟か中立組のD棟なはず。目の前にある佐伯のいるB棟では栗本は報告してこないだろう。
「慎也は本当に『何も無い』って?」
「………ええ。相変わらずヘラヘラしてたわね。
その同期君の方が深刻そうにしてたから………必ず伝える約束をしたのよ。そもそも何事もない訳が無いと思って」
慎也め、要らん気遣いだ。
むしろ隠されたことに傷付くくらいだ。
「慎也は出たらひっぱたく!」
「それで?ペットって、何の話?」
「麗、『ペット』は現場の仕事だよ。猫型ペットロボットの製造。それも、あれはうちの課長の現場で生産することが条件だったの」
「譲ったって事は…………無くなったって事?」
「それなら『居なくなった』とか『消えた』って言うし、飼い主ってのは課長の秋沢さんのことだから…………少なくとも、技術組じゃないとこに横取りされたんだ…………課長ごと……………」
課長ごと…………………?
ならうちの現場は今誰が課長をやってるんだ?
「大丈夫なの?顔が青いけど……?」
「いや………。
栗本は変な気を使わないし、現実主義だから………はっきり言いに来たんだろうね。
ありがたいけど………でも、取られた後では………」
嫌な予感がする。
藤野宮 凛の話がここに来て重みを増す。
とんでもない事をしてくれてるものだ。
ここで麗に凛の話をしてもいいが、今私が幸田と接触していることを言うのは気が向かない。余計な心配を増やすだけだ。
やっぱり駄目だ。
悠長に二週間なんていられるものか!
だが………。
「麗、お願いがあるんだけど」
「何?」
「菊池さんが持ってきた、あの二百万の家なんだけどさ………調べて欲しいことがあるの」
一つは今は誰の名義なのか。
二つ目は柚菜ちゃんと親戚の今の関係。
「いいけど。まさか…………」
「条件が揃えば。私が住む!」
麗がついに頭を両手で抱え込む。
「あんたね!家なんて、そんな簡単じゃないのよ!?」
「分かってるよ!表向きは私が買うわけじゃないから」
交渉事、見つけた!
「そしたら麗も一緒に住もうよ!」
「あのねぇ、買って終わり!じゃないのよ?他にもいろいろかかり続けるの。
もしあんた結婚なんてする事になったら、私に押し付けて行かれても困るわよ!一軒家なのよ?」
麗はカンカンだ。
交渉……できるか?私に。
「ねぇ麗。ここに入院してる子で助けたい子が居るの」
「えぇ?
…………………あのね、今はそんな場合じゃないでしょ?」
とりあえず話を聞いて欲しい。
「ここに今、幸田も入院してるの。
藤野宮家に集まった夜。幸田の他に招かれざる客がいたみたいよ?」
「幸田が……!?頭が痛いわ。
それで?招かれざる客って誰なの?」
幸田は簡単に話さないだろう。
だが、私たちの知らない情報を持ってるのは確かだ。
「そこを利用したいの………」
「それは…………どう言う意味?」
「私は早くここを出たい。
出来るなら、同じ病室のその子も連れて。
その為には、幸田の力は必須なの」
麗が私を見つめたまま口を紡ぐ。
大丈夫。分かってる。
仁恵にした事も含めて、私はあいつを許す気は無い。
「その助けたい子って誰なの?」
麗は感情的にワッと怒って聞く耳を持ってくれない程、単細胞では無い。何だかんだで、賢いのだ。
「まず、一番最初に菊池さんにコンタクトをとって欲しいの」
私は全てを麗に任せることになる。
そしてその後は幸田頼みになるが………。
頼む。頭ごなしに拒否しないでくれ。
「安心して。まだたった三日よ?
何も報告受けてないわ」
「慎也からは!?」
「昨日店に来てったわよ。『いつも通りだから安心して』って」
「そう………なんだ」
いつも………通り………。
そう。そうだよ。
私がいなくても秋沢も山口もいるんだぞ………?
三日空けたくらいで……………でもこの気持ちは何……?決してどうにかなってて欲しいなんて思ってない。誓う。だが、それは私に価値がないんじゃないかと言う事に繋げてしまう。
いいや。麗の言う通りたった三日。
流石に何も起きないだろう。
「椿芽君に聞く限りではね。
同じ現場の人と来てったわ。栗本って人。知ってる?」
「うん。私の同期だよ。慎也とは仲が良いみたい」
「そう。それが………彼の方から別の伝言があるけど………」
「え……?」
栗本から……?
なんだ…?
「なんて言ってた?」
「『ペットと飼い主を隣人に譲ることになった』って………………椿芽君のいない所で話されたけど」
「え……!?」
「ねぇ、何の事?あんた子犬でも拾ったの?」
「……………うそ……馬鹿な………嘘でしょ!!?」
そんな……………!?
それこそたった三日だぞ!?
「椿芽君には言うなって言われて……だから私が来たのよ」
雨宮は最初からそれが狙いだったのか……!?嵌められたのは私じゃない。秋沢か?
『隣人』って事は、冬野のA棟か中立組のD棟なはず。目の前にある佐伯のいるB棟では栗本は報告してこないだろう。
「慎也は本当に『何も無い』って?」
「………ええ。相変わらずヘラヘラしてたわね。
その同期君の方が深刻そうにしてたから………必ず伝える約束をしたのよ。そもそも何事もない訳が無いと思って」
慎也め、要らん気遣いだ。
むしろ隠されたことに傷付くくらいだ。
「慎也は出たらひっぱたく!」
「それで?ペットって、何の話?」
「麗、『ペット』は現場の仕事だよ。猫型ペットロボットの製造。それも、あれはうちの課長の現場で生産することが条件だったの」
「譲ったって事は…………無くなったって事?」
「それなら『居なくなった』とか『消えた』って言うし、飼い主ってのは課長の秋沢さんのことだから…………少なくとも、技術組じゃないとこに横取りされたんだ…………課長ごと……………」
課長ごと…………………?
ならうちの現場は今誰が課長をやってるんだ?
「大丈夫なの?顔が青いけど……?」
「いや………。
栗本は変な気を使わないし、現実主義だから………はっきり言いに来たんだろうね。
ありがたいけど………でも、取られた後では………」
嫌な予感がする。
藤野宮 凛の話がここに来て重みを増す。
とんでもない事をしてくれてるものだ。
ここで麗に凛の話をしてもいいが、今私が幸田と接触していることを言うのは気が向かない。余計な心配を増やすだけだ。
やっぱり駄目だ。
悠長に二週間なんていられるものか!
だが………。
「麗、お願いがあるんだけど」
「何?」
「菊池さんが持ってきた、あの二百万の家なんだけどさ………調べて欲しいことがあるの」
一つは今は誰の名義なのか。
二つ目は柚菜ちゃんと親戚の今の関係。
「いいけど。まさか…………」
「条件が揃えば。私が住む!」
麗がついに頭を両手で抱え込む。
「あんたね!家なんて、そんな簡単じゃないのよ!?」
「分かってるよ!表向きは私が買うわけじゃないから」
交渉事、見つけた!
「そしたら麗も一緒に住もうよ!」
「あのねぇ、買って終わり!じゃないのよ?他にもいろいろかかり続けるの。
もしあんた結婚なんてする事になったら、私に押し付けて行かれても困るわよ!一軒家なのよ?」
麗はカンカンだ。
交渉……できるか?私に。
「ねぇ麗。ここに入院してる子で助けたい子が居るの」
「えぇ?
…………………あのね、今はそんな場合じゃないでしょ?」
とりあえず話を聞いて欲しい。
「ここに今、幸田も入院してるの。
藤野宮家に集まった夜。幸田の他に招かれざる客がいたみたいよ?」
「幸田が……!?頭が痛いわ。
それで?招かれざる客って誰なの?」
幸田は簡単に話さないだろう。
だが、私たちの知らない情報を持ってるのは確かだ。
「そこを利用したいの………」
「それは…………どう言う意味?」
「私は早くここを出たい。
出来るなら、同じ病室のその子も連れて。
その為には、幸田の力は必須なの」
麗が私を見つめたまま口を紡ぐ。
大丈夫。分かってる。
仁恵にした事も含めて、私はあいつを許す気は無い。
「その助けたい子って誰なの?」
麗は感情的にワッと怒って聞く耳を持ってくれない程、単細胞では無い。何だかんだで、賢いのだ。
「まず、一番最初に菊池さんにコンタクトをとって欲しいの」
私は全てを麗に任せることになる。
そしてその後は幸田頼みになるが………。
頼む。頭ごなしに拒否しないでくれ。
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