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錦総合病院 精神科病棟
消灯 起床
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「お薬です。いつもの順番で並んでくださいね」
看護師がワゴンに錠剤とゼリーが混ざった紙コップを乗せて病室へ来た。
皆ノロノロとワゴンに群がる。
「琴乃さん、今日からお薬ですけど……入眠剤だけにしましょう。突然強い薬を飲まなくても…………ね?」
「はい。分かりました」
入眠剤………?ってことは睡眠薬とは違うのか。
今日のクリニックで貰った薬は多かったのか?
こんな時スマホさえあればすぐに検索出来るのに……!
「じゃあ、直ぐに横になってくださいね。
くれぐれもお薬飲んでから歩き回ったりしないようにね
」
「はい」
「電気消しまーす」
え………?
ああ。そういう事?
ちょっと明る過ぎない?
布団を頭の上まで上げる。
うーん、明るい!カラオケボックスの方が余程暗い!
そもそもあんな錠剤一つで本当に眠れるのか………。
そうだ。
明日は幸田と顔を合わせることになるよな?
麗の話じゃ、人事課に荷物を取りに会社に来て、その後は露木と別れたはずだ。
そのまま家に帰れるはずの幸田がどうしてここにいるのか。
会社で誰かに捕まった………?
自分でここに来るはずないよな……。
しかし、今はひとまず考えないようにしよう。とにかく外部と連絡が取れるようにしなきゃならないが面会は両親だけ。兄貴は地元にいないし………。
出田も難色を示していたように思えた。
「…………?………?」
意識がプツリプツリと切れる。
これ、薬の効果………?
「……………」
もう逆らえない。強制的なシャットダウンの波に思考も体も飲み込まれる。
目が覚めたのは朝だった。
朝。
今まで夜中何度も目を覚まして眠れなかったと言うのに。
横になったまま窓の外を見る。
起床は六時だったっけ。
六時にはまだ早いかな。
外より病室の方が明るい。
それにしても………。
こんなにスッキリ目覚めるのっていつぶりだろうか。
もしかして、もっと早く受診するべきだった……?
六時半に体操か…………。寒そうだな。
布団から頭を出し、逆方向に寝返りを打つ。
「…ひっ!!」
な、なんだっけ!
柚菜ちゃん!!?
ベッドに手を付き、私を真上から見下ろしていた。
「う………」
「……………………」
お互い目が合ったまま。
彼女もそらせようともせず、無言で私を見ている。
害はないってあれ程言われてたけれど。
ただ見てるだけだよね。
でも気味が悪いことには変わりはない。
…………参った……。
「おはようございます……」
何か言いたいのかな?
「………っ……す」
あ、ちょっとだけ!ちょっとだけ聞こえた!
もしかして起こそうとしてくれたのかな………?
壁にある掛け時計を見る。
カバーのガラスが外され、針が剥き出しの掛け時計。
時刻は五時。
………?
五時!?
起こすには早いよねっ!?
既に柚菜ちゃんは病室の出口に立ち出ていく気満々でスタンバイしている。
柚菜ちゃん分からん!
まぁ、何か挨拶っぽい小声が聞こえただけでも前進だ、きっと。患者同士でトラブルとかにはなりたくにしなぁ。
あぁ。忘れてた。幸田。
「はぁー……………」
あいつ邪魔だな!
というか、本当に分からん!何故ここにあいつがいるのか!
「体操ですよぉ!起きて下さい!
柚菜ちゃん早いね!さぁ小峠さんももう朝ですよ!」
私の向かい側は小峠って言うのか。
四十歳くらいかな………起きるのが精一杯みたい。
もう一つのベッドは空きだ。
「やっぱり今日はちょっと………」
「小峠さん、じゃあ体操だけ。体操だけでいいから」
「…………死にたい………う………うぅ……」
小峠さん、キツそうだな…。
どうなることやら……。
看護師がワゴンに錠剤とゼリーが混ざった紙コップを乗せて病室へ来た。
皆ノロノロとワゴンに群がる。
「琴乃さん、今日からお薬ですけど……入眠剤だけにしましょう。突然強い薬を飲まなくても…………ね?」
「はい。分かりました」
入眠剤………?ってことは睡眠薬とは違うのか。
今日のクリニックで貰った薬は多かったのか?
こんな時スマホさえあればすぐに検索出来るのに……!
「じゃあ、直ぐに横になってくださいね。
くれぐれもお薬飲んでから歩き回ったりしないようにね
」
「はい」
「電気消しまーす」
え………?
ああ。そういう事?
ちょっと明る過ぎない?
布団を頭の上まで上げる。
うーん、明るい!カラオケボックスの方が余程暗い!
そもそもあんな錠剤一つで本当に眠れるのか………。
そうだ。
明日は幸田と顔を合わせることになるよな?
麗の話じゃ、人事課に荷物を取りに会社に来て、その後は露木と別れたはずだ。
そのまま家に帰れるはずの幸田がどうしてここにいるのか。
会社で誰かに捕まった………?
自分でここに来るはずないよな……。
しかし、今はひとまず考えないようにしよう。とにかく外部と連絡が取れるようにしなきゃならないが面会は両親だけ。兄貴は地元にいないし………。
出田も難色を示していたように思えた。
「…………?………?」
意識がプツリプツリと切れる。
これ、薬の効果………?
「……………」
もう逆らえない。強制的なシャットダウンの波に思考も体も飲み込まれる。
目が覚めたのは朝だった。
朝。
今まで夜中何度も目を覚まして眠れなかったと言うのに。
横になったまま窓の外を見る。
起床は六時だったっけ。
六時にはまだ早いかな。
外より病室の方が明るい。
それにしても………。
こんなにスッキリ目覚めるのっていつぶりだろうか。
もしかして、もっと早く受診するべきだった……?
六時半に体操か…………。寒そうだな。
布団から頭を出し、逆方向に寝返りを打つ。
「…ひっ!!」
な、なんだっけ!
柚菜ちゃん!!?
ベッドに手を付き、私を真上から見下ろしていた。
「う………」
「……………………」
お互い目が合ったまま。
彼女もそらせようともせず、無言で私を見ている。
害はないってあれ程言われてたけれど。
ただ見てるだけだよね。
でも気味が悪いことには変わりはない。
…………参った……。
「おはようございます……」
何か言いたいのかな?
「………っ……す」
あ、ちょっとだけ!ちょっとだけ聞こえた!
もしかして起こそうとしてくれたのかな………?
壁にある掛け時計を見る。
カバーのガラスが外され、針が剥き出しの掛け時計。
時刻は五時。
………?
五時!?
起こすには早いよねっ!?
既に柚菜ちゃんは病室の出口に立ち出ていく気満々でスタンバイしている。
柚菜ちゃん分からん!
まぁ、何か挨拶っぽい小声が聞こえただけでも前進だ、きっと。患者同士でトラブルとかにはなりたくにしなぁ。
あぁ。忘れてた。幸田。
「はぁー……………」
あいつ邪魔だな!
というか、本当に分からん!何故ここにあいつがいるのか!
「体操ですよぉ!起きて下さい!
柚菜ちゃん早いね!さぁ小峠さんももう朝ですよ!」
私の向かい側は小峠って言うのか。
四十歳くらいかな………起きるのが精一杯みたい。
もう一つのベッドは空きだ。
「やっぱり今日はちょっと………」
「小峠さん、じゃあ体操だけ。体操だけでいいから」
「…………死にたい………う………うぅ……」
小峠さん、キツそうだな…。
どうなることやら……。
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