この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku

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81ミュラー子爵家炎上

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王位継承権をかけた王子同士の激しい戦いは諸侯も加わり、もはや内乱にまで発展していった。王国全土に広がるさまはまるで野火のようであった
貴族同士が互いの領地の奪い合いが次々起こり、もはや目も当てられぬ状態の国に、アドラスの父ヘンリー・ミュラー子爵は明日は我が身かと、領地の防衛力を少しでも高めようと考え騎士や兵の増員を実行したが、それは周りの他領地も同じで何やら団栗の背比べの感もぬぐえなかった。そんなときだ、となりの領地のグレーソン男爵が、領兵を率いてミュラー領に突然攻めこんできたのは・・・・・。
屋敷の周りはすべてグレーソン男爵の兵に囲まれ、もはやこれまでとヘンリーは覚悟をきめた。
だが妻子達だけは逃がしてやりたかった。
やっと9歳を迎えたばかりの嫡男のアドラス、庶子とはいえ次男のルシアンはまだ6歳、そしてこの世の何よりも愛する妻エリザべス、
「許してくれお前たち、せめてお前たちだけでも逃がしてやりたかったが、この屋敷の周りはアリの出る隙間もない、私にもっと力があったら、ああ屋敷に火をかけられたな」

ヘンリーは焦げくさいくすぶる白い煙にごほっと咳をした。

「せめて使用人たちだけは屋敷から逃がすことをグレーソンに許されて良かった。もはやこの屋敷に残っているのは私とお前たちだけだ。この屋敷に残った騎士たちはすべてグレーソンの騎士たちに打たれた。アドラス、ルシアン、エリザベス共に天国で暮らそうな、」

「あなた、わたくしはあなたの妻に慣れて幸せでしたわ~~~~~」

「父上、まだ死ぬのは早いですよ」

「アドラス、そうだな、さいごまで」

「だって隠していたけど僕テレポートテーションの使い手だもの」アドラスはこんな時ににやりと不敵に笑ったのだ。

「へっ!?テレポートテーション?」

「何を言ってるのアドラス?」

「うふふ、ほらみて!」
そういうなりアドラスの姿が一瞬にして消え、5メートルも後ろに瞬間的に表れたのだ、そして次の一瞬には廊下の右はしにおかれている大きな騎士の像の横に現れたのだ。

「はぁぁぁぁ~~~~~~~~~!?」
驚きのあまり全員目をこれ以上ないほど見開き大口上げて驚きの声を上げた。

「ほーらね、どう?僕こんな日が来るかもと思って脱出用に誰にも言わず黙っていたんだ。それにほらぁ、像の後ろに隠していたこの収納バッグには母様の宝石類とか執務室の隠し金庫にはいっていた現金とか宝石類、それに厨房の食料とか水の入った水筒、剣もあるよ、毛布もテントも着替えも入っているからね、この空間収納バッグには!こっちは僕のバッグ、それとこれはルシアンと母上様のバッグ、どれも見かけは少しぼろく感じるかもしれないけど空間収納バッグなんだ。なかに水筒や着替えパン肉と財布いれといたからねふふ、いつかこんな日が来るかもしれないと思って準備しといたんだ」
<この用心深さは災害大国元日本人ゆえだけどね!>

「ああ、あどらす~」

「でかしたアドラス!」

「さあみんな僕の周りに集まって、テレポートするよ」

ばっ!
ヘンリー、エリザベス、ルシアンはバッとアドラスの側に駆け寄った。
屋敷が炎に包まれかけている中、アドラスはいいがたい脊梁を覚えた。
一瞬廊下をかけ走って、母上に叱られる子供のころの自分の姿と笑い声が聞こえて、胸が詰まり涙が込み上げたが、つぎの瞬間にはきっとまなじりを上げて「テレポート!!」と一声大きく発した。
その瞬間、全員の姿が炎と煙に包まれだした廊下から消えたのだった。
そしてこの日を最後に先祖代々守ってきたミュラー領から領主一家の姿は永遠に消えたのである。

領民は領主一家は、炎上する屋敷とともに焼死したと思い、貴族にしては気さくでやさしく領地経営をしっかりやるいい領主様だったとその死を深く悼んだのであった。





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